新たな仲間
その日の夜、本営ではメアリー等々も交え、宴会が催された。メアリーは降伏しただけでなく、今後わたしに忠誠を誓うことを約束した。妹を助けてくれた御礼だという。エルフとは義理堅い種族らしい。いざとなれば、マリアも何かと便利に使えそうだから、戦力としては、相当に強化されたことになる。
宴もたけなわにさしかかり、ドーンが調子に乗って(何を思ったか)つまらない漫談を始めた時、
「カトリーナ様、お伺いしたいことがありまして、ウェルシー派遣軍のことですが……」
メアリーは小声でわたしに話しかけた。メアリーは降伏しているが、ウェルシー派遣軍の将兵はまだそのことを知らない。
「どうしよう。今すぐ攻撃すれば撃滅できそうだけど……」
メアリーに今までの味方を攻撃させて忠誠心を試すのはよくあるパターンだけど、そこまでする必要はないと思う。あるいは、(味方となったメアリーが司令官だから)ウェルシー派遣軍をそのままこちらの戦力として活用することも……、ただ、その場合、とんでもなく維持費がかかりそうだ。
しかし、メアリーの提案は、それよりもはるかに合理的かつ建設的だった。
「マーチャント商会の兵士たちは、基本的には金で雇われた連中ですから、信用するに足りません。ただし、ほんの少しですが、武術だけでなく人格的にも優れた人もいます。少し時間をいただければ、ウェルシー派遣軍の中から、カトリーナ様の剣となり盾となる勇士を募ってきますが、いかがいたしましょうか」
「当分の間は給料を出せないわよ」
「ええ、でも大丈夫と思います。わたしが説得すれば味方になってくれるでしょう」
翌朝、メアリーはウェルシー派遣軍の本営に戻っていった。「どれくらい兵員が集まるかな」と考えていると、傍らでドーンが「ぶぅ~」と不機嫌な顔をしているのが目に留まった。
「どうしたの、ドーン。ご機嫌斜め?」
「いえ、そうじゃないんです。ただ、なんというか、その……」
言いにくそうにしているが、理由は明らかだ。新参者が自分よりはるかに武術に優れ、しかも魔法まで使えるのだから、ドーンにとって面白いはずがない。
「カトリーナ様、あのメアリーという娘が連れてくる兵隊をどのように処遇するおつもりで?」
「どうしようかな……」
わたしはそう言いながら、ドーンを招き寄せた。そして、物陰にドーンを連れ込み、
「流血で結ばれた絆ほど固いものはないわ。あなたには、これからも犬のように働いてもらうからね」
ドーンは「おお」と感激し、平伏した。単純な男だ。単純なだけに使いやすい。
「ドーン、メアリーが戻ってきたら、猟犬隊に重大な使命を与えることになるわ。楽しみに待ってなさい」
夕方、メアリーは100人ほどの精鋭を引き連れて帰ってきた。いかにも百戦錬磨の猛者といった面構えだ。その精鋭は、とりあえずメアリーに預けることにしよう。
同時に、マーチャント商会ウェルシー派遣軍は(軍としても)正式に降伏した。わが方の勝利だ。でも、それはそれとして……、さあ、これからがドーンたちの出番だ。




