姉妹の再会
メアリーは副官を伴い、案内役のドーンとともに、颯爽とこちらの本営にやって来た。独特のとがった耳、銀色の髪、透き通るような白い肌……でも、駆け足で来たのだろうか、頬がほんのりと赤い。隻眼の黒龍が戻ってきたのを見て、マリア救出作戦が成功したことを察知したのだろう。ただ、会見用スペースに通したときには、この前と同じように落ち着いた調子だった。
「では、回答をお聞かせください」
「いいわ。でも、その前に、あなたに会わせたい『ひと』がいるの」
わたしが手をパンパンとたたくと、エレンがゆっくりとマリアの手を引き、会見の場に姿を見せた。メアリーは立ち上がり、
「マリア!」
メアリーは、さっと風のようにマリアのもとに駆け寄り、マリアを強く抱きしめた。
「ああ、姉さま、姉さまなのね!」
感動の再会にくどくどとした説明は要らないだろう。メアリーとマリアはうれしさのあまり、目に涙を浮かべながら、お互い、強く抱き合うのだった。
「なっ……なんだ!? これは、一体!!!」
副官は驚いて飛び上がった。明らかに狼狽が表情に顕れていた。
メアリーは、一旦マリアを放し、帯剣の柄に手をかけた。そして、わたしを一瞥したあと、キッと副官をにらみつけた。メアリーの考えていることは、だいたい想像がつく。わたしは、一応、教育的配慮のつもりで、エレンとマリアをこの場から去らせた。
「やっ……やめろっ! こんなことをして……」
副官はブルブルと震えながら、数歩、後ずさった。自らの運命を悟ったのだろう。
「ドーン、こいつを逃がすな!」
わたしが命令を下すと、ドーンと猟犬隊は、すぐに副官を取り囲んだ。もはや副官に逃げ道はない。副官は「ひぃ!」と悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
メアリーは剣を抜き、ひざまずく副官の目の前に立った。
「お助けを……」
メアリーは、命乞いをする副官を鬼のような形相でにらみつけ、
「絶対に許さない!」
メアリーは、恨みを込めた一刀でスパッと副官の首を斬りおとし、転がった首を何度も足で踏みつけた。この二人の間に何があったのだろう。気になるけど、きかないほうがよさそうだ。
やがて、気がすんだのか、メアリーは剣についた血を拭き取り、剣を鞘に収めた。そして、わたしの前で肩ひざをつき、
「このたびは妹を助けていただき、なんともお礼の申し上げようがありません。妹が無事にあなた様のところにいる以上、わたしには戦う理由はありません」
メアリーは降服を願い出た。それを許可したことは言うまでもない。




