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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
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執念のメイド長

 暖かな午後の日差しとさわやかな風を受け、わたしたちは小一時間ほど、気分よく飛んだ。急がなくても明後日のうちには着きそうだ。

「ねえ、プチドラ、そろそろ休憩しない?」

「そうだね。丁度、頃合かな」

 わたしたちが地上を見回し、降りられそうなところを捜していると……

 ……ズドーン!……

 突然、隻眼の黒龍の周囲ですさまじい炸裂音を伴い、爆発が起こった。


 マリアは指を組んで目を閉じ、

「メイド長です。箒に乗って空を飛び、わたしたちを追いかけてきたようです」

 相手との距離、相手の位置、魔力の波動等を魔法で測定したらしい。マリアがいてくれると結構便利だ。

 マリアによると、メイド長は性格に(非常に)問題があるが、その点を除くと、本当は優秀な魔法使いだそうだ。さっき炎に包まれた時は、魔法の力で身を守ったのだろう。城内の消火が済むと、マリアに逃げられたら一大事というわけで、あわてて追いかけてきたようだ。

 ……ズドーン!……

「きゃっ!」

 再び炸裂音が響き渡り、エレンが悲鳴を上げた。

「マリア、この爆発はなんなの!?」

「メイド長の魔法です。魔法の矢といいますか、まあ、そのようなものです」

 魔法の矢というよりも、空対空ミサイルみたいだけど……

「追いつかれてはまずいわ。プチドラ!」

 隻眼の黒龍は、急遽、スピードを上げた。でも、あまりに急だったので、わたしは危うく振り落とされそうになった。

 もし隻眼の黒龍が本気を出したなら、メイド長に追いつかれることはないだろう。でも、わたしたち3人を乗せている以上、速度には自ずから限度がある。このままスピードを抑えて飛べば、追いつかれるのは時間の問題だろう。

 

「落ちろ!」

 わたしは後ろを向いてエルブンボウを構え、矢を放った。準備してきたのは正解だったけど、距離は遠いし目標は動くし無理な姿勢だし、いくら命中精度が通常のエルブンボウの3倍とはいえ、メイド長にはかすりもしない。

「困ったわ。どうしようかしら」

 すると、マリアが矢筒から矢を1本引き抜き、

「1本、お借りしますわ。そしてこれを……」

 と、何やら呪文のように口をモゴモゴと動かした。

「これを使ってみてください。魔法の力を込めました」

 わたしは渡された矢をつがえ、弦を引き絞った。弦を放すと、矢は一直線にメイド長めがけて飛んだ。メイド長がひょいと身をかわし矢をよけようとした、その瞬間、矢に込められた魔法のエネルギーが解放され、大爆発。メイド長をはるか後方に吹き飛ばしてしまった。

 マリアはそのことを魔法で感知したのか、にっこりと微笑んだ。

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