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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
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脱出

 道草を食っている間にメイド長が正気に返ったようだ。おそらく、気がついた時には何が起こったか分からず、キョトンとしていたことだろう。ハーレムなんか見学せず、すぐに城を発っていれば、こんなに早くばれることはなかった。「余計なことをしなければよかった」と、あらためて後悔しても、もう遅い。

「エレン、お城の外までの道は分かる?」

「うん。ここからなら、すぐだよ」

「それじゃ、プチドラ、とりあえず、Fire!」

「は~い」

 プチドラは大きく息を吸い込み、口から炎をふき出した。炎はメイド長を包み込み、のみならず床の絨毯や壁に掛けられたランタンも燃え上がらせ、廊下は激しい炎に包まれた。

「みんな、こっち」

 エレンがわたしたちを手招きした。わたしたちはエレンに続き、ハーレムを横切った。メイドたちは突然の火災に驚き脅え、われ先にと逃げ出した。しかしハーレムの住民たちは、それもどこ吹く風といったふうで、ひたすら食べ続けるばかりだ。

 わたしたちは反対側の扉から廊下に出て、長い廊下を抜け、跳ね橋を渡り、城外に出た。しばらくの間、城内では消火活動で手が一杯だろう。すぐに追われることはあるまい。


「プチドラ、お願い」

「うん」

 プチドラの体は象のように大きく膨らみ、巨大なコウモリの翼が左右に広がった。左目が爛々と輝く。こうして、あっという間に隻眼の黒龍モードに。

「あら、カトリーナさんのペット、本物のドラゴンだったのね」

 と、エレン。プチドラの本来の姿を見るのは初めてのはずなのに、驚いているように見えない。このプチドラこそ、あなたが教えてくれた伝説の「隻眼の黒龍」なのだ。今は説明している暇がないけど。

 エレン、マリア、わたしの三人は、隻眼の黒龍の背中に乗った。やっぱり三人だと少し窮屈。だけど贅沢は言ってられない。

「飛ぶよ」

「いいわ。さっさと帰りましょ」

 隻眼の黒龍は翼を大きく羽ばたかせ、大空に舞った。眼下に見えるお城が、庭園が、湖が、どんどんとミニチュアのように小さくなっていく。

「日差しはこんなに暖かなものだったんですね」

 マリアは大きく腕を広げ、感慨深げに言った。何年も塔の中に閉じ込められていただけに、感激もひとしおのようだ。でも、しっかりと隻眼の黒龍につかまっていないと危ない危ない。



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