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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第1章 銀色の使者
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マーチャント商会

「カトリーナ様、実は、困ったことがありまして……」

「困ったこと? あなたはいつも困ってるんじゃない?」

 ポット大臣が大量の帳簿や書類をもって、わたしの前に現れた。混沌の勢力との戦いの間に積み上がった借金が山のようにあるので、なんとかしなければまずいという。

「これって、例のマーチャント商会から?」

「宝石産出地帯を担保にした借金です。早く払わないと、利息が更なる利息を生み、どうにもならなくなってしまいます」

「心配しなくていいわ。わたしにいい考えがあるの」

「はい?」

「他にもっと大事なことがあるでしょう。国内の行政機構の再構築や騎士団の再建が急務よ。大臣にはそっちをお願いするわ。この問題はわたしがなんとかするから」

 わたしは帳簿や書類を取り上げ、執務室の入り口を指差した。大臣は不安と不満の入り交じった顔で、何度も「この問題の処理を誤らないように」と言いながら、執務室から追い出された。

 ちなみに、わたしには、借金を返済する気はまったくない。伯爵個人が負った借金ということにしておこう。文句を言われたら、「伯爵を追ってあの世まで取立てにいけばいい」と、言い返してやろう。


 それからしばらくして、国境を警備していた猟犬隊が、大慌てで館にやってきた。金貨の山を旗印にした軍隊が国境付近に集結し、その指揮官がわたしへの面会を求めているという。

「ひぃー!」

 ポット大臣が頭に手を当てて悲鳴を上げた。

「どうしたの?」

 大臣によれば、金貨の山はマーチャント商会のシンボルとのことだ。マーチャント商会は、帝国最大の総合商社で、独自の強力な武装組織(常備軍)を持ち、その力は、数十もの諸侯を合わせたもの(帝国全体の5分の1以上)に匹敵するという。さらに、有事の際には豊富な資金力を活用し、その何倍もの規模の傭兵を動員することができた。

「まずいですよ。きっと、債務を強制的に徴収しにきたんですよ」

 大臣は顔面蒼白だった。

「マーチャント商会ごとき、我々が軽く粉砕してご覧に入れます。出撃の許可を!」

 大臣とは反対に、ドーンをはじめとする猟犬隊は元気一杯。日頃の訓練の成果を見せたいようだ。

「とりあえず、会って話をきいてみましょう」

 最終的な戦いは避けられないだろうけど、一応、話だけはきいておこう。

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