表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
19/66

ハーレムの真実

 気になっていたのはハーレムの住人のこと。このお城に来て、まだ一度も見ていない。さぞかし絶世の美女がそろっているのだろう。

「エレン、このお城って、マーチャント商会会長のハーレムでしょ」

「そうだけど……」

「ついでだから、ハーレムを見学していきたいわ」

「そう? 見ていて、あまり気持ちのいいものではないけど、いい?」

「いいわ。是非、見てみたい」

 こう言われると、見ていかなければ、なんとなく損をした気分になる。見ていて気持ちのよくないものって、どういう意味だろう。

「後悔するかもしれないけど……」

 エレンは念を押すように言って、歩き出した。何度か、扉に付けられたスリットにエレンのカードを差し込んでロックを解除しながら、しばらく進むと、

「ここから先がハーレムよ。会長の妻たちの部屋」

 エレンは大きな扉の前で足を止めた。そして、

「考え直すなら最後のチャンスだけど、本当に、いいの? 絶対に??」

 わたしは黙ってうなずいた。ここまで来た以上、何が出ようと(メデューサだったらヤバイけど、プチドラがなんとかしてくれるだろう)、見ていかなければ後悔するに違いない。


 ところが……

「ぎゃっ!」

 思わずわたしは鳥のような悲鳴を上げた。扉の向こうには、巨大な肉塊がいくつも転がっていた。一応、手や足や目や鼻や口がついているが、とにかく肉塊としか言いようがなかった。その肉塊のすぐそばで、オレンジ色のメイド服を着た小柄な娘たちが、シロアリの女王アリの世話をする働きアリのように、忙しく働いていた。

「あの、エレン、これは……」

「やっぱりびっくりした? 会長は太った人が好みなの。それも、常軌を逸したほどに」

 マーチャント商会会長は変態的な趣味の持ち主らしい。ハーレムの妻たちの体重は平均300キログラム、この部屋に全員を集め、一日中運動させずに食べさせてばかりだそうだ。

「もういいわ。行きましょう……」

 やめておけばよかったと、かなり後悔。こんな時だけはマリアがうらやましいような気がする。とにかく用は済んだから、さっさと帰ろう。今から戻れば、タイムリミットには余裕で間に合うだろう。


 その時、

「誰だ、おまえは! それにマリア、どうしておまえがここにいる!?」

 背後からヒステリックな声が聞こえた。予想がつくが、振り向くと、果して、アイボリーのメイド服を着た御婦人が乗馬用の鞭を持ち、肩を怒らせて迫ってきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ