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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
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会長の人となり

 マリアは塔の中であれば自由に行き来できたそうだ。プラチナのカードは、マリアのために1枚だけ作られ、塔の中だけはどこでも通行可という設定がなされていた。マリアの部屋はプラチナのカードでなければ開かないようになっていて、マーチャント商会会長自身もマリアが望まなければ部屋に入ることはできないという。

「マリア、マーチャント商会の会長に会ったことはある?」

「ええ、何度か。なんだか分からない人でしたが、表面上は優しい人でした」

 ということで、やっぱり正体不明。これまでのマーチャント商会会長の(わたしが抱いていた)イメージは、中年で肥満で強欲で好色で煩悩の固まりみたいな感じだったけど、マリアによればそうでもなく、

「紳士的な人でしたよ。声から推測すると年も若いと思います」

 マーチャント商会会長は、けっして暴力を振るうことなく、いつもプレゼントを贈って、財力で自分の力を誇示しようとしていたという。ただし、マリアは宝石にも財宝にもまったく興味がなく、姉の無事を祈りながら毎日を送っていたそうだ。


 そのうちわたしたちは、床に開けられた大きな穴の前に着いた。

「ここです。ここでエレベーターに乗るのですが……」

 マリアは辺りを探りながら、

「ありました。このスリットにカードを差し込み、このレバーを……」

 マリアは、柱に備え付けられた装置のスリットにプラチナのカードを差し入れ、レバーを引いた。すると、ウィーンという機械音とともに、下方から床がせり上がって来て、やがて穴を完全にふさいだ。

「さあ、行きましょう」

 真っ先にマリアがエレベーターに飛び乗った。やはり姉のメアリーに会いたくてたまらないのか、どうしても足早に進んでいく。わたしとプチドラが乗ると、床はゆっくりと下方に動き出した。

「あの、姉はどうしているのでしょう……」

 マリアは心配そうにわたしの顔を見つめた。

「とっても元気だから、安心していいわ」

 元気には違いない。猟犬隊や騎士団を簡単に蹴散らしたのだから。


 やがて、エレベーターは地下1階に着いた。塔へはやはり地下通路から出入りするらしい。わたしたちがエレベーターを降りると、そこには、(エレンのカードで行ける範囲で、塔に一番近いところで待つという)事前の打ち合わせ通りに、エレンがわたしのエルブンボウと矢筒を持って待っていた。

「よかった。どうなることか、心配だったの」

 いきなりエレンがわたしに抱きつき、泣き出した。相変わらず感情の起伏が激しい子だこと。

「目的は達成したわ。あとは帰るだけなんだけど……」

 わたしはエレンをなだめながら、何か引っかかるものを感じていた。ひとつ気になることがあった。

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