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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
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囚われ人の部屋

 翌朝、わたしは壺の中で、かん高い女性の声に目を覚まさせられた。メイド長の声だ。

「こら、そこ! もっと力を入れて!」

 気がつかないうちに、メイド長の指揮で移送が始まっていたようだ。見上げると、天井に描かれたモザイク模様が後方に流れてゆく。今どこにいるのか知らないが、ともあれ、囚われ人の部屋に向かっているようだ。

「うまくいったね」

 プチドラが小声で言った。心なしか声が弾んでいる。メアリーの妹、マリアとも面識があるのだろう。どんな人(精確にはエルフ)なのだろうか。やっぱりマリアもエマに似てるのだろうか。なんだか気になる。


 やがて、

「はい、そこでストップ。停めて」

 またまたメイド長の声だ。到着したのだろうか。しばらくそのままじっとしていると、ウィーンという機械音とともに、上方に持ち上げられていくような感じがした。目的地が塔の最上階ということから考えると、魔法の原理で動くエレベーターのようなものに乗せられているのだろう。

 エレベーターが停止すると、荷車は再び動き出し、そして程なくして停車した。

「はい、OK。ご苦労さま、あなたたちは帰っていいわ」

 メイド長の声が聞こえた。これでメイドたちの任務は終了らしい。メイドたちのしゃべり声や足音が、だんだんと遠くに離れていく。

 やがて、メイドたちいなくなり物音がしなくなると、

「マリアさん、会長からいつもの貢ぎ物よ。ここに置いておくわ。本当に、あんたのおかげで毎月毎月、こんなバカな作業をしなければならないのよ。いい加減に会長の言うことをきいたらどう? だいたいね、このお城にVIP待遇で置いてやろうというのよ。こんな安楽な生活はないよ。一体、何が不満なのさ」

 メイド長の声が延々と、しかも時折激しい調子で続く。わたしたちが慎重に壺から顔を出すと、乗馬用の鞭を振り回しながらドアに向かって怒鳴っているアイボリーのメイド服が見えた。そのドアの向こうにマリアが囚われているのだろう。


 わたしとプチドラは顔を見合わせ、うなずき合った。メイド長がヒステリー気味にわめいている今がチャンス。プチドラがメイド長の背後に忍び寄り、軽く電撃をくらわせると、メイド長は気絶して倒れた。

 プチドラは、ドアをドンドンと音を立てて叩き、叫ぶ。

「マリア、ぼくだよ! 助けにきたんだ!!」

 わたしは壺から出た。そして、メイド長のポケットからシルバーのカードを取り出し、ドアに付いているスリットに差し込んだ。ところが、なんの反応もない。ドアはピクリとも動かなかった。ドアを無理矢理こじ開けることはできそうにない。シルバーのカードでも開かないとすれば(シルバーのカードの効力はエレベーターを起動させる程度かもしれない)、お手上げだ。せっかくここまで来たのに、だめか……


 わたしが唇を噛んだその時、静かにドアが開いた。

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