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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第3章 銀色の囚人
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積込作業

 夕方、わたしとエレンが倉庫に来たときには、既にメイドが50人ほど集まっていた。薄暗い倉庫には、宝石、貴金属、工芸品、骨董品その他諸々の財宝が山積みにされ、きらびやな輝きを放っている。出入口近くに並んでいるのは運搬用の荷車だ。

 この作業は数年来の恒例行事となっていて、マーチャント商会が世界中からかき集めた品々のうち、特に高級で珍しいものが贈られるそうだ。それだけマーチャント商会会長が塔の中の囚われ人にご執心ということだろう。しかし、会長の想いもむなしく、いつも受け取りを拒否されているらしい。多少は学習能力があってもよさそうなものだが、会長は、いくら贈り物を突き返されても諦めることなく、手を変え品を変え、世界中からさまざまな宝物を仕入れ、贈り物を続けているという。

 わたしはエレンに借りたオレンジのメイド服を着ていたので、怪しまれることなく倉庫に入ることができた。エレンはわたしの耳元でそっとささやく。

「カトリーナさん、早くどこかに隠れないと……」

「そうだね。それじゃ、エレン、また明日」

 倉庫内には、大小さまざまの木箱、樽、袋その他諸々が無秩序に置かれていて、隠れる場所には不自由しない。わたしは隙を見て、物陰にこっそりと身を隠した。メイドは気の合う者同士でぺちゃくちゃとおしゃべりをしていて、まったく気付かない。

「うまくいったね、マスター」

 わたしの足元でプチドラが姿を現した。プチドラは魔法で姿を消し、わたしにピッタリとついてきていた。


 しばらくすると、

「皆さん、お静かに! 作業に入りますよ」

 アイボリーのメイド服を着た女性が乗馬用の鞭を持って現れた。年齢的には……正確に年齢を言うとそろそろ気を悪くしそうな年代だ。その女性はキャリアウーマンという言葉がピッタリで、オレンジのメイドたちにてきぱきと指示を出し、迅速に作業を進めている。

「あの人がメイド長ね」

 エレンの話では、アイボリーのメイド服を着用しているメイド長だけが、メイドのうちでただ一人、塔に入るために必要なシルバーのカードを持っているという。贈り物を送り届ける際には、メイド長が責任者として、メイドたちを引率して贈り物を運んでいくらしい。

 しばらくすると財宝の積み込みが終わった。メイド長は、ひととおり積荷をチェックし、メイドたちをまとめて倉庫を出た。出入口が閉じられ鍵がかけられると、中は真っ暗、外からは光が入ってこないようだ。ということは、中から光が漏れる心配もない。プチドラは、魔法の光球で倉庫内を照らした。わたしは、山のように積み上げられた積荷を前にしながら、

「プチドラ、これなんかよさそうね」

 贈り物の中に、ひときわ目を引く壺があった。巨大な純金製の壺で、底面が広く安定している。多少窮屈だが、隠れるにはおあつらえ向きだ。

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