塔に侵入する方法
わたしたちはお城の中を何時間もさまよった。しかし、行けども行けども同じような光景が続いているだけだった。誰かを脅迫して道をきこうにも、この時は巡り合わせが悪かったのか、誰にも出会わない。
「ちょっと休憩しましょう」
わたしは通路に座り込んだ。
「まいったね」
プチドラもぐったりとして、わたしのひざの上に頭を乗せた。そういえば、晩御飯もまだだ。わたしのおなかもプチドラのおなかも、仲良く悲鳴を上げている。
その時、ポンポンと、誰かがわたしの肩をたたいた。
「カトリーナさんなのね。よかった、見つかって」
そろそろ飽きがきたかもしれないけど毎度のパターン、振り向くと、そこにいたのは、わたしたちを捜しに来てくれたエレンだった。
「ありがとう。おかげで飢え死にせずに済んだわ」
わたしとプチドラは、エレンの案内で、彼女の部屋に戻った。ありがたいことに、ディナーの残り物をもらってきてくれたので、わたしたちはエレンとともに遅い夕食をとることができた。残り物とはいえ、なめてはいけない。高級な素材を一流のシェフが料理し、栄養価が高く、とってもおいしい。
「ご隠居様のところでも神出鬼没だったけど、カトリーナさん、今まで、どこに行ってたの?」
「よく分からないのよ。分かっていれば迷子になることとはないし……」
「そうだね。わたしも時々迷子になるよ」
このお城の通路は迷路のように複雑怪奇とのことで、エレンでも時々道に迷うそうだ。
「でも、困ったな。塔に侵入する方法を考えないといけないんだけど……」
「塔に入ってどうするの?」
「塔の最上階にいるという女の人に会わなければならないの。何か、いい方法はないかしら」
「う~ん、一番うまくいきそうなのは、贈り物に紛れこむことかな」
塔の最上階の囚われ人には、毎月一回、マーチャント商会会長から大量の贈り物が届くという。贈り物で気を惹こうという魂胆だろうか。贈り物を何台もの荷車に載せ、塔の中のその人の部屋の前まで送り届けるのもメイドの仕事ということで、贈り物の中にこっそり忍び込めば、うまい具合に塔の最上階まで行けるかもしれないとのこと。なお、その囚われ人は、今まで一度も贈り物を受け取ったことがなく、運んだ数日後には、今度は反対に贈り物の回収作業が行われるそうだ。
「で、その日って、いつ?」
「明日の午後に贈り物が届くから、夕方から荷車に積み込んで、届けるのは明後日になるかな」
今日は3日目だから、明後日は5日目だ。よかった、まだ間に合う。天はわたしたちを見捨てていない。