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白の向こう側にある世界  作者: 吉田 みゆな
5/13

気配の実

俺達はメレブーから貰った気配の実とやらが本物かどうかわからないがこの実の効果を信じてみるしかない。

だがこれは本物なのだろうか?毒ではないのだろうかと自問自答をしていると

「あんま味がしねえな」

と誠が1つ食べていた。


俺は驚いて口をあんぐりと開けていると

「なんだ、お前も気になっていたのか、ほらよっと」

と気配の実を俺の口に放り込んできた。


なんの疑いもせずに食べた事と、急に放り込んできた驚きで俺は気配の実とやらを飲み込んでしまった。


吐こうと指を突っ込むがなかなか吐けない。


「なにやってんだお前」

誠は呆けた顔でこっちを見ている。


「げほっ、お前なにしやがる!」

誠を殴りたかったが、こいつの悪気のない顔を見たら殴れなかった。


とりあえず体にはなにも変化はないし本物だと信じてみることにした。

メレブーはこの実の効果は数時間と言っていたから、あまり無駄な時間を使うわけにはいかないと思い、俺達は再度森に入ることにした。



森の中へ入ると数時間前とは違い、視線を感じる事はなかった。これが気配の実の効果なのだろうか?


さっきとは違い、鰐を見た小川まで約1/3の時間で到着した。

その頃には俺達は、気配の実の効果のおかげか、多少ばかりの余裕すら生まれていた。


「なあ、そろそろ腹減らね?」

誠はお腹を押さえながら言ってきた。


言われるまで気づかなかったが、確かにお腹はすいていた。だがどうしよう?何も食べるものがないと思っていたら、赤黒い不気味なキノコが生えていた。


「これは、さすがにやべえんじゃねえの……」

珍しく誠がまともな感情をもっている。


俺達はさすがにこれは食べられないと判断し、他に食べられる物はないかと探す事にした。


サバイバルなどが好きな奴からしたらこの森は食糧庫なのだろう。だが俺達一般の高校生のように知識のない者はこの森が食糧庫では到底なく、俺達が動物達の食糧になってしまう。


「どうすりゃいいんだよ……」

途方にくれた俺達は座りこんでしまった。


そんなときアウトドア好きな実那子のお父さんが無駄に俺に語っていた

「もしも無人島とか、誰もいなくて何を食べたらいいのかすら分からなくなってしまったら、パッチテストをしたらいいんだよ」

という言葉を思い出していた。


「パッチテストか……」

気づいたら俺はそう呟いていた。


「パッチテスト?なんだそれは?」

誠は俺に聞いてきた。


俺はまだやり方がそれで正しいのか分からなかったが、生きる為には試さなくてはと思い、誠にパッチテストのやり方を説明することにした。


「パッチテストとは、それが食べられるかどうかを判断する方法らしいんだ。

やり方は、その食べられるか気になっている物の欠片を腕に擦り付けて5分ほど待つんだ。そうすれば食べられる物はなんともないが食べられない物は腕に刺激がくるんだ」

俺はうろ覚えだが実那子のお父さんが話していた事を誠に説明した。


言い終わった瞬間誠はその辺の草で試していた。


俺はパッチテストをするために食糧をまた探しだした。

そうすると紫色をした木の実があった。

すぐさま誠を呼び、木の実を見せると誠は木の実をもぎ取り割って中身を確認していた。


木の実の中身は外側の紫色とはかけ離れたような真っ赤な色をしていた。元の世界にいたときなら手をつけることはないような色だが今は違った。

それすら美味しそうに見える。


俺達は木の実の中身の部分を腕に擦り付けて、パッチテストを行った。


5分どころか10分たっても腕に違和感はない。


「やったじゃねえか圭太!これで食い物にありつけるぜ」

誠は心底嬉しそうだった。そりゃそうか、誠はさっき試していた草の時に刺激があったらしく悶えていたからな。


俺達はその木の実で食事をとることにした。


味はドラゴンフルーツとマンゴーが足して2で割ったような味をしていた。


誠はこの味が気に入ったようでバクバクと何個も食べている。俺はもともと、マンゴーがあまり好きじゃなかったからこの実を美味しいとはあまり言えないがこの先もあるという事も頭によぎり、無理やり胃のなかに放り込む事にした。


木の実を食べ終わった俺達は先に進む事にした。


立ち上がって何気なくお尻をパンパンと手ではたき、周囲を見渡した。


周囲は木が沢山生えている。俺たちは気配の実のおかげで楽に森の中を進んでいるけど、この実の効果がもし切れたらと思うと先を急がなければならない。


早くこの森を抜けられるよう祈りながら足を進めた。

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