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白の向こう側にある世界  作者: 吉田 みゆな
16/18

あと5分

翌朝、目が覚めたときには外はすでに明るくなっていた。


「……ん」

体を起こすと、隣のベッドでは誠がまだ寝ている。


 「おい、起きろ」

軽く足でベッドを蹴る。


「んあー……あと5分……」

こいつはどこでも変わらないな。


「ここ異世界だぞ」

「だからこそ寝るんだろ……」


意味がわからん。


もう一度蹴ると、誠はやっと目を開けた。

「……ああ、そうだったな」


「思い出すの遅すぎるだろ」


軽くやり取りをしながら身支度を整え、部屋を出る。

階段を降りると、昨日と同じようにギルドはすでに賑わっていた。


酒の匂い、笑い声、怒鳴り声。


「なんかもう慣れてきたな」

誠は周囲を見ながら言う。


「昨日一日で慣れるなよ」

俺は呆れながらカウンターへ向かう。


受付のお姉さんは俺たちに気づくと軽く手を振った。

「おはようございます。お二人とも」


「おはようございます」

俺は軽く頭を下げる。


「今日は依頼を受けに来たのですが」

そう言うと、お姉さんは頷いて後ろの掲示板を指さした。


「現在、お二人に受けていただける依頼はこちらになります」


俺たちは掲示板の前に移動する。


貼られている紙にはいくつか内容が書かれていた。


・薬草採取(南の丘)

・荷運び(市場まで)

・清掃(下水区域)


「やっぱりこの辺りか」

俺は小さく呟く。


「荷運びでいいんじゃね?」

誠は即決だった。


「理由は?」

「楽そうだから」


雑すぎるだろ。


「薬草の方が安全そうじゃないか?」

俺は言う。


「森じゃねえのかそれ」

誠は少し顔をしかめた。


たしかに森はあまりいい思い出がない。


「……じゃあ荷運びでいいか」

俺も折れた。


受付に戻り、お姉さんに伝える。

「荷運びの依頼をお願いします」


「かしこまりました」

お姉さんは手際よく紙を確認する。


「市場まで木箱を運ぶ簡単なお仕事です。報酬は二人で800コルになります」


「おっ、思ったよりいいな」

誠が嬉しそうに言う。


「簡単な分、数をこなす方が多いお仕事ですので」

お姉さんは補足してくれる。


「では、こちらが依頼書になります」

紙を受け取り、俺たちは指定された場所へ向かうことにした。



ギルドを出てしばらく歩くと、大きな倉庫のような建物が見えてきた。


「ここか」

誠が言う。


中に入ると、がっしりした体格の男がいた。

「おう、依頼のやつか?」


「ああ」

誠が答える。


男は俺たちをじろっと見てから、

「そっちの軽そうな箱を市場まで運んでくれ」

と指をさした。


軽そうな、と言っていたが実際持ってみるとそこそこ重い。


「うおっ、意外とくるな」

誠が箱を持ち上げながら言う。


「軽そうって言ってただろ」

俺も同じように箱を持つ。


「俺基準だったんだろうな」

誠は苦笑いしている。


二人で箱を抱え、指定された市場へ向かう。


街の中は昨日よりも人が多く、活気があった。


「おーい、新顔だな」

「どこのパーティだ?」


そんな声が聞こえるが、俺たちは無視して進む。


「有名人だな俺たち」

誠は笑っている。


「お前の星5のせいだろ」

俺は小声で言う。


正直あまり目立ちたくない。


市場に着き、指定された場所に箱を置くと、依頼はあっさり終わった。


「こんなもんか」

誠は肩を回す。


「まあ、最初はこんなもんだろ」

俺も息を整える。


倉庫に戻り、依頼完了の報告をすると、男は無言で紙に印を押した。


「ほらよ」

そう言って渡されたのは受領証だ。


それを持ってギルドに戻る。



「お疲れ様でした」

受付のお姉さんに紙を渡すと、報酬を受け取ることができた。


「800コルです」

手渡された袋を誠が覗き込む。


「ちゃんと金だな」

「当たり前だろ」


思わず突っ込む。


「これで飯も食えるし宿もどうにかなるな」

誠は満足そうだった。


たしかに少し安心した。


そのときだった。


――ズキッ


頭の奥に、鋭い痛みが走った。


「っ……!」

思わず頭を押さえる。


「おい圭太、どうした?」

誠が顔を覗き込む。


「いや……ちょっと頭が」

言いながらも、視界が一瞬揺れた。


白い。


ほんの一瞬、周囲が白に染まった気がした。


『……けい……た……』


かすかな声。


「……っ!」


気づいたときには元に戻っていた。


「おい、大丈夫か?」

誠の声が現実に引き戻す。


「ああ……大丈夫だ」

俺は無理やり笑った。


「顔色悪いぞ」

「ちょっと疲れただけだ」


そう言いながらも、心臓は早く打っていた。


今のはなんだ。


幻覚?

いや、違う。


あれは――


「……白の記録」

小さく呟く。


「ん?なんか言ったか?」

誠が聞く。


「いや、なんでもない」


俺はごまかした。


だが確信していた。


――近づいている


あの世界が。

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