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HEROの◇  作者: sonora
9/14

HEROの余裕

この主人公いっつも質問してますね

 「これだ、少年。どれがいい?」


 研究所に来た俺にローナが言った。

 ずらりと並べられた色々な装飾のようなもの達。

 腕輪、メガネ、チョーカー、イヤリング、入れ歯、薄い板状のもの、……などなど


 「蝶ネクタイはまずくない?」


 「何がだ?」


 「いや、別にいいけど」


 「いくつか用意したが、おそらく全て使えると思うぞ。キミの『変身』は服を着ていても装着できるようだから、体に害を及ぼさないものなら大丈夫だとは思う」


 うーん、どうしようか『変身』している最中に声を変えるだけだから、そんなに目立つ物でなくていいんだが……


 「これから『ウルティラ7型』を通して話すのはめんどくさいだろうから、ついでに通話機能とかリアルタイムで映像を送信出来る機能をつけてみたぞ。入れ歯型は通話のみだがな」


――それって?


 「それ『Dフォン』みたいな機能付けたってこと?」


 「『Dフォン』……? ああ、『ジゾーン機械ダー』のことか。そうだな、あれを元に改造したから性能はかなり良いぞ」


 このネーミングセンスはもしかすると……


 「もしかして『Dフォン』作ったのってローナ?」


 「『Dフォン』ではない!! 『ジゾーン機械ダー』だ!! 全く……わしが作ってやったというのに勝手に名前を変えおって……」


 ブツブツと文句を言っている。


 『Dフォン』改め『ジゾーン機械ダー』は段階を踏まずにいきなり商品として売り出された。俺みたいな一般人からすると開発者なんてあんまり気にしないし、開発者が情報媒体で取り上げられることもなかったのだが……なるほどこいつなら合点がいく。正体を隠しながら技術提供をしたのか。


――うん? そうなると


 「ローナって何歳?」


 始めに自己紹介した時年齢は忘れてとか言ってたけど……


 「わからん。そんなこと気にするのはキミ達人間くらいだ。……そうだな、わしはこの世界の人間が知る歴史より前からこの惑星に来ているとだけ言っておこう」


――宇宙人だからね。そのくらい生きるよね。うん。


 「本来は人間に手助けをするつもりは無いのだがな……」


 珍しく気力のない声だ。この宇宙人でも何か思うことがあるのだろうか?


 「まあ、でもわしの開発した『ジゾーン機械ダー』を元にいろいろ技術が進歩しているようだしその点は良いぞ。キミの学校のセキュリティシステムもそうだしな」


 あぁ、だから簡単に侵入して来たのか。元々自分が開発したものだからその抜け穴も知ってるってことか。


 「そんなことよりもだ。どれにするんだ?」


 おっとそうだった。


 「タダでいいの? これってD…じゃなくて『ジゾーン機械ダー』くれるって言ってるようなもんだろ? 俺金持ってないけどいいの?」


 「構わんぞ、こんなもんいくつでも作れる。この国では違法だが、バレなければ問題ない」


 折角タダでもらえるのだし、カッコイイやつがいいな。

――そうだな


 「ベルト型って作れる?」


 「わしの作ったのでは不満というのか……ベルト型なんて簡単だ。ちょっと待ってろ」


 乱雑に置いてあった変声器を持って研究机で作業を始めた。


 「ちょっと質問していい?」


 黙って待ってるのもつまらないので、忙しなく手を動かしているローナの後ろ姿を見ながら聞いてみる。


 「良いぞ」


 「ローナの技術で『魔物』どうにかできないの?」


 こいつの技術ならどうにかなりそうな気がする。


 「――無理だな、あれは。たとえ出来たとしてもわしは手を出さない。人間のことは人間で解決するべきだ」


 そうか……ローナでもどうにもならないのか。そうなると、俺たち人間は結構まずい状況なのかもしれないな。


 「あれってローナと同じく宇宙人がもたらした兵器とかの類か?」


 ローナの手が止まった。少し考えているようだ。


 「ふむ、おそらく違うと思う……が現状分からないと言っておく」


 ローナが今少し考えたということは『魔物』については割とどうでもいいと思っているのだろう。本当に人間の命自体に興味はないんだな。


 「なんでそんな汚い格好してるの?」


 最初からの疑問だった。見た目はかなり美人幼女なのだが、服装が壊滅的に汚い。人前に出たら素性を心配されて保護されるんじゃないかと思ってしまう。


 「……キミは何故服装にこだわるのか、考えたことがあるか?」


 「……いや、無いな」


 「――そうか、まあ構わないがそういうところは直しておけよ。後で後悔するぞ」


 作業速度を落とすことなく語る。


――何を言ってるんだこいつは? どういう意味だ?

 

 「そうだ、わしが何故こんな汚い格好をしているのかだったな。わしは動きやすければなんでもいいと思っている。更に言えばこんなものの為に金を使いたくない。この惑星のルールでは服を買うにも奇麗な服装でなければ追い出されるらしい、過去に8回ほど試したが全てそうだった。だからゴミ捨て場に置いてあったものを着ている。靴も同様だ」


 なんていうかあれだな。こいつはこいつなりの生き方があってそれに沿って生きている。

 このたくましさは、どこでも生きていけそう。


 「自分で作らないの?」


 「わざわざ作るまでもなく現在の服装で満足している。店に行ったのは、服を買うというより反応が面白かったから行ってやっただけだ」


 そのお店の店員さん……カワイソウ


 「ただ……靴は揃えたいと思っている。左右で若干の高低差があって違和感がある。あと雨の日は左足が重い」


 ローナの左足を見てみる。

 それ靴じゃないよ。靴下だよ?


 「ずっと同じ格好なのに洗濯とかどうするの? まさか同じ服何着も持ってるなんてことないよな?」


 ローナはみすぼらしい格好で汚いが不思議と臭くない。香水なんかで誤魔化してる感じもしない、言うなれば無臭だ。


 「これがわしの一張羅だ。洗濯はしとらんが、消毒はしている。臭わんだろ?」


 「まあ、臭わないけどさ……」


 俺の中の常識としては洗ってないということに少しの嫌悪感が沸く。消毒とやらもローナの発明だろうから、洗濯するよりも清潔な状態に保っているんだろうが……


 「できたぞ。ホレ」


 くるりと俺に振り向きベルトを投げた。


 「おっと、投げるなよ」


 「落ちたくらいでは壊れないぞ、早速『変身』してみろ」


 言われるがままに付けていたベルトを外し、ローナが投げて渡したベルトをつける。


 「ベルトを3回素早く触れ、それとちゃんと『変身』って言えよ?」


 「やだよ」


 俺はローナを無視してベルトを3回触り無言で『変身』をする。

あからさまに不機嫌な顔をしてるが無視だ。


 「あーあー。おお!! 本当に声が変わった!!」


 地声よりも低い、それでいて二重に聞こえる感じがする。

 声まで悪役のようになってしまった。


 「はぁ〜あぁ……声はそんなもんでいいだろ? 2秒触ればわしと通信できるようになってるから、それと淵のボタン押せば『ジゾーン機械ダー』として使えるから〜よろしく」


 適当な説明はいつもだけど、声の調子からも適当さが滲み出てる。

 どんだけ『変身』って言って欲しかったんだよ。そんなに落ち込むなよ。


 「『変身』の掛け声はいいとしても、せめて必殺技くらい考えておけよ。名前はわしがつけてやるから」


 「必殺技って言ってもキックかパンチしか出来ないんだが……」


 「ふむ、最近は思うように動かせるようになったのだろう? 形態変化も可能かもしれんぞ? やってみろ」


 「えーやだよ、めんどくさい。どうせお前が変な名前付けたいだけだろ? 俺もう用事済んだから帰るよ。『Dフォン』ありがとなー」


 そう言ってすぐにローナの研究所を出た。


 「ちょっとこら待たんか!! それと『ジゾーン機械ダー』だ!!」


――あいつの悪趣味に付き合ってられるかっ!!




 その後1週間何事もなく学校生活を送った。


――俺は後悔した。前回のような敵なら余裕だと、たかをくくっていたことに――



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