HERO見参!? 2
一瞬何事かと焦ったがすぐに理解できた。
不自然な校内放送の直後にこの轟音、ローナの嫌な予感ってやつだ。
「なっ!? なに?」
「おいおい、何の音だ?」
「事故かなー?」
図書館で本を読んでいた生徒も思い思いを口にして音のした正門と反対側の第2グラウンドの見える窓へ駆け寄る。
取り敢えず俺は保健室に向かおう。呼び出したのは間違いなくローナだろう。
状況の整理ができていないシャリアさんに一言残しておく。
「危ないかもしれないから生徒がここから出ないようにしておいて、俺は先生呼びに行ってくる」
「えっ!? ちょっと播磨さん!」
彼女の返事は聞かず一方的に言うだけ言って廊下を駆け出していた。
◇◆◇◆
「遅いぞ! 少年!」
保健室に着くなり怒鳴られた。俺だって結構急いだんだぞ。校内の生徒や教師を避けながら全力で走ったことを褒めて欲しいくらいだ。
「で、今何が起こったんだ!?」
「どうやら刺客が来たらしい。あれを見てみろ」
そう言われ校庭の真ん中あたりに砂煙が舞う中心地を見てみる。
生徒や教員が取り囲んでいてよく見えないが銀色の球体が確認できる。
「あれ……なのか?」
「間違いないだろう。かなりの勢いで降ってきたが、あの球体に傷一つついていない所を見るに、この星の技術ではない。今のところ動きは無いが爆弾等の下等兵器の可能性がある」
爆弾を下等兵器と言ったことに改めてこいつはヤバイ奴だと確信したが、そんなことよりも――
「おいおい、そんなの冗談じゃすまないぞ。取り囲んでるあいつらどうにかしないと!!」
「そんなのどうでも良いだろう。お前の使命はわしを守ることだ」
こいつ――本当に人じゃない――
だからといって今こいつの倫理観に文句を言ってる場合でもない。
「最終的にお前が無事ならいいんだろ?」
俺は感情を消してローナに確認する。
「ふむ、あいつらを助けたいということか? 構わんぞ。わしが無事なら好きにするといい」
俺は急いで銀の球体に向かおうとした。
ローナがすぐに大声でそれを止める。
「ただぁし!! お前の正体は気づかれるな。そしてあの銀の部品は可能な限り回収しておけ。そうだな、わしの研究所にこっそり運んでおけ。以上だ」
この少女の他人なんてどうでもいいような言葉に腹が立っていたが、少しだけ冷静になれた。今回だけで終わるわけじゃない、次も同じようなことが起こったとき、少しでも有利になるよう先を見越さなければいけない。俺の正体を隠すのはこっちの手駒を見せないため、部品の回収は敵の手の内を探るためというところか?
「わかったよ……ここで『変身』していいか?」
「良いぞ」
そう言われると俺は全身に命じる。昨日の練習を思い出しながら――
一瞬にして体を包む赤黒い鎧が現出する。
と同時にローナが叫ぶ。
「おい!! ふざけるな!!」
「何がだよ! ちゃんと出来ただろ!」
「『変身』って言えよ『変身』って。いきなり変わるんじゃない! せめて何かセリフを言え! ビックリしちゃうだろうが!」
「なんでそんなカッコ悪いこと言わなきゃならねーんだよ! というか今更ビックリすんな! こちとらお前の存在の方がビックリなんだからな! 俺はもう行くぞ」
急いで銀の球体に駆け寄る。
周囲を囲んでいた生徒や教員が俺の方を思わず2度見している。
まぁ見た目相当気持ち悪いからね……いいんだけどさ
「全員避難してください。ここは危険です」
「なんだキミは? 部外者は入れないはずだ」
「撮影か何かか? 困るよこういうこと勝手にすると」
先生達の質問が飛んでくる。大人に真面目な対応されるとすごい焦る。いや、でも危険なことに変わりはない。早いとこ皆を移動させないと。
「ですから、この銀の塊は危険なんです。早く離れてください」
「何なんだキミは!! 一体誰なんだ! こういうお遊びは別のところでやりなさい」
全く聞いてくれない……仕方ない
ちょっと恥ずかしいが、授業中に考えたやつをやろう!!
両足を開き、左腕をまっすぐ右斜め上に向かって突き出す。右手は左腰の位置に置き、大声で叫ぶ。
「お……おれ……俺は!! HEROだ!!」
瞬間空気が凍る。
無言が痛い、周りの生徒が携帯機器で写真やら動画を撮っている音がする。
やって分かった。思ってたよりすごい恥ずかしい……
だが黙らせることは出来たし、俺に対する注意を惹きつけることも出来た。後はこの銀の塊をどこか遠くに持っていけば目的は達成だ。大事な何かを失ったが後で後悔しよう。
俺は皆が唖然としている中、校庭に大きく穴を掘った銀の球体の元へと急いで近づく。
突如銀の球体が宙に浮き音もなく変形していく。
みるみる間に4足の獣に姿を変える。
銀の獣は俺を見ると敵と認識したのか、一瞬で間合いを詰め突っ込んできた。
「ぐっ」
想像以上の衝撃に5〜6mは吹き飛ばされた。なんだコイツ!?
ただの体当たりなのに……こんなの普通の人間がくらったら間違いなく死ぬぞ
銀の獣は俺から興味を無くしたのか周囲を取り囲む生徒や教員にその冷たい殺意を向ける。
――まずい、死人が出るかもしれない――
「はやく逃げろ!!」
咄嗟に叫んだ声に先生達が反応して生徒に避難を呼びかける。蜘蛛の子を散らすように銀の獣から遠ざかるが、数人の生徒はまだ撮影か何かと思って携帯機器で写真や動画を撮っている。
「おい、何やってんだ! 本当に死ぬぞ!!」
――ダメだ。全く聞いてない
銀の獣はそのうち一人に狙いを定めたらしく突進の態勢をとる。
――クソッ 間に合うかっ!?
銀の塊が生徒にぶつかる瞬間思いっきりぶん殴った。
真横から加えられる力のベクトルによって、銀のそれは斜めに大きく飛んでいく。
自分でも驚いた、この状態になると瞬間的な脚力と腕力が大きく上昇するらしい。
今の瞬間的な力はまぐれかもしれないし、こいつらを庇いながら戦うのは無理がある。ここは仕方ない、脅しをかけよう。
「邪魔だ。死にたくないだろ?」
俺は生徒の1人が落としたであろう地面に落ちている携帯機器を踏みつけ、さっきまで撮影をしていた尻餅をついて怯えている生徒に向かって言い放った。
「なんだよ!? なんなんだよ!!」
これは撮影などではなく、本当なのだと理解したのか不格好に走っていった。他の生徒達も一度睨むと携帯機器をしまって避難し始めた。
これでようやく校庭に2人きりになれた。あんまり嬉しくないけど……
巻き上げた砂煙から黒い影がこっちに向かってきている。
まあ、あんなんじゃダメだよね。わかってたよ。
「来いよワンちゃん」
正直、見た目は銀色の大きな卵に銀の円錐が4つくっついて、頭? らしき所に少し大きめの円錐がくっついているだけで、犬かと聞かれたら疑問だが……
「…………」
銀のワンコが挑発に乗って突進を仕掛けてきた。
「うっ」
やはりまともに受けるとすごい衝撃だ。掴もうにも滑るし……
すぐさまワンコが突進の態勢をとる。
受けるのはやめて、避けよう。そう思ってよく観察してみると
――ん? なんか頭の形が歪だ。
右側が少し凹んでいるように見える。あれは……さっき殴った所か?
殴るのは効き目があるのかもしれない……よくわからないけど、反対側も殴ってみるか。
突っ込んでくる銀色の塊を真横に避け、思いっきり横に殴った。
今度は直角に綺麗に曲がり、飛んでいく。
すぐにワンコの方へ向かうと小刻みに体を揺らしながら立とうとしていた。
やっぱりへっこんでるな。もう1回殴るか。
生まれたての子鹿のように震えている犬型ロボットの頭を真横から思いっきり量の拳で潰した。缶ジュースのようにべコンと凹みそれは一切の動きを停止した。
「意外とあっけなかったな」
取り敢えずコイツを運ぼう、そう思った矢先体から力が抜けていく。
「なんだ? なんだ!?」
見ると赤黒い鎧が徐々に体に戻っていく
――これタイムリミットあるのかよっ!!――
どうする? 正体がバレずに尚且つこの銀塊を運ぶ方法は……?
――突然校庭に巨大な竜巻が現れた。
竜巻はグラウンドに砂を巻き上げ砂塵の壁を作り上げる
――なんか知らんが今のうちに
銀の塊を両手で抱え、大急ぎで保健室に向かう。今はこれがベストだ。
保健室に着いた時には、ほぼ鎧が無くなっていた。
「よくやった少年! 上出来だ」
「お、おう」
抱えていた銀の塊をローナに渡すと、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように、キラキラした目でその物体を見つめている。
「疲れたか? 寝ててもいいぞ」
目線は新しいおもちゃにに向けながら俺に問いかけてくる。
ローナなりの気遣いなのだろうか?
初めての戦闘だったこともあって今はその言葉に甘えることにした。
「じゃあベッド借りるぞ」
一番近い所にあったベッドに仰向けで寝転び、校庭をチラリと見てみる。
既に謎の竜巻は止み、幾人かの教員が校庭の安全を確認しているようだ。
後のことはローナがなんとかしてくれるだろう……
なんだろうか、全身が熱っぽくて妙に怠い……まともに思考が働かない……
戦闘があっさりしてるのは当初の予定通りですからっ!!
どなたか一人称視点で戦闘描写が上手な小説ご存知ありませんか?