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HEROの◇  作者: sonora
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HERO見参!? 1

 「……じゃあ播磨くん。この後世界はどう動いたでしょうか〜?」


 やば、聞いてなかった。授業中なの忘れてた。

 

 「……はい」


 間を置いた返事をしてゆっくり立ち上がるが頭はフル回転させる。

 昨日遅刻して早退まで見逃してもらった手前、聞いていませんでしたは京ヶ島先生に申し訳ない。教科書を見て大方の予想をつけて答える。


 「えーっと残った人達が集まって、国を作りました。6つくらいです……それ」


 「そうね、6つくらいじゃなくて6つよ〜。私たちのいるクラウド国はその中でも一番技術が発展しているといわれているわ〜。ありがとう播磨くん」


 うむ、どうやらあたりを引けたようだ。

 あまり成績が芳しくない俺でもこの辺の事情は知っている――それほどまでに大きな出来事がおこったから


 この星には元々、人間族、獣猛族、鱗牙族という人間が合わせて60億人いた。それが約300年前に起こった『黒の厄災』によって大きく変化した。

 突然現れた黒い塊、俺も実物は見たことがないが写真を見る限り濃い影の(もや)のようなモノが何もないところにあるという印象だ。

 この影に触れると人間は死ぬ。赤ちゃんだろうと老人だろうと関係なく皆等しく死ぬのだそうだ。悲鳴を上げるでもなく、ただその場で倒れる。原因は現在でも不明とされている。

 人々は恐れ、黒いモノをこう呼んだ――『魔物』――と。


 その後の世界が崩れるのはあっという間だったという。どこからともなく突然現れる『魔物』に刃物で斬ろうが、銃で撃とうが何の意味もないのだ。止めることの出来ない恐怖に経済は止まり法なんてものは何の意味も成さなくなった。


 バラバラになるのも早いが団結するのも早いのが人間のたくましいところで、生き残った人間が小さな集落を作り国へと発展させた。古い歴史から中の悪い人間族、獣猛族、鱗牙(りんが)族の3種族だがこの時ばかりはそうは言ってられないと一丸となったそうだ。

 人間の絶対数が減少すると不思議なことに魔物は人間を襲わなくなったそうだ。そうして生き残りが作り上げた国が全部で6つ、総人口は約2億人。


 「……という風に〜各国の移動及び貿易は〜現在でも魔物の影響で頻繁には行えず、資源も含め自給自足が基本になっています〜」


 言い終えると、謀ったかのように鐘が鳴る。


 「じゃあ終わり〜」


 教室を出ていく先生。今が4時限目なことを考えると、食べ物関係なのであろう。


 「さっき指された時、別のこと考えてたでしょ?」


 授業が終わると、ツインテールの女の子に声をかけられた。


 「えっと神流さん……だよね? ああ、ちょっとぼーっとしてた」


 「だよね? ってひどくない? あたしは播磨くんのこと覚えてるのにずるい!!」


 何がずるいのかわからないが取り敢えず謝っておこう。


 「なんかごめん。そういえば鼻とおでこのオシャレはやめちゃったの?」


 「オシャレじゃないよ!! 女の子として結構気にしてたんだからね! ほら見てよまだちょっと赤くなってるでしょ?」


 そう言うとずいと俺の顔の前まで顔を近づけてきた。

 思わずドキっとする。神流さんはそういうの気にしないかもしれないが、俺としては女の子が近くにいるだけでドギマギしてしまう、ましてやこんなに可愛い子に。


 見てくれと言っているのだから見てあげるのが男として、いや友達になれるかもしれない一候補としての使命なのではないだろうか? でもなんかすごい鼻息荒くなりそう、それに気づかれたらもうこんな風に話しかけてくれることもなくなってしまう。それはいやだーーどうする俺? 


 つまらないことを考えていると彼女は顔を元の高さまで戻した。


 「ね? ちょっと赤くなってるでしょ。痕にならないといいんだけどねー」


 くそう、意味わからん自問自答しているんじゃなかった。


 「さきーごはん食べ行こー」


 「うん、今行くー。じゃあねー播磨くん」


 声をかけた3〜4人の女の子の方へ行ってしまった。

まあそうだよね。あわよくばお昼を一緒にと、少しでも思ってしまった俺は 期待のしすぎだ。よく考えればたいした会話してないし。

 結局いつもの一番安いパンと牛乳を買って1人教室で食べることになった。


◇◆◇◆


 「播磨さん、今日委員会ですよ?」


 「え? ああそうだった。ありがとう」


 放課後俺が帰り支度をしているところにシャリアさんが声をかけてくれた。ここ数日は委員会のことは二の次になっていた、今なんて声をかけてくれなければ普通にローナの研究所に向かおうとしていた。


 「ううん、今日も一緒に頑張ろうね」


 この子はいい子である。――一緒に頑張ろう――良かった。心の底から俺はこの子と同じ委員会で良かったと思えた。何気ない言葉だがあまり友達の多くない、というか友達がいない俺にとって一緒という単語に仲間意識が含まれ自分は1人じゃないと思わせてくれる。


 ルンルン気分で別棟の図書館に向かう途中アイツがいた


 「おい、少年なんだか嫌な感じがする。気をつけろ」


 てっきり、研究だーとわめき散らすのかと思えば真面目な顔で一言そうつぶやいた。


 「嫌な感じって? お前を狙ってる奴らのことか?」


 「おそらくな……まだ確信したわけでは無いが注意しろ」


 そう言うと何処かへ行ってしまった。ローナが真剣な表情でそう言うのだから警戒した方がいいかもな……


 ていうかあいつ本当にどうやってここまで来たんだ? ここの学生なのだろうか? 超科学でセキュリティ抜けられるのか? 今度聞いてみよう。


◇◆◇◆


 「シャリアさんはどうして図書管理委員やってるんですか?」


 放課後の図書館でやることも無く暇なので聞いてみる。


 「んー、そうですね。私は……んーちょっと恥ずかしいです。笑わないでくれますか?」


 「笑いませんよ。そこまで人格崩壊してませんよ」


 「私は、将来誰かを救いたいと思っているんです。それが具体的に何かはまだ言えませんけど……その為には知識は絶対に必要で委員会の中では1番近いと思ってここで活動しています。播磨さんは?」


 なんだろう、すごく言いにくい……


 「俺は……その1番……なんていうか……楽そうだったから」


 本音を言ってしまった。ごめんよシャリアさん。俺は1番金がかからないで、なおかつ暇な時間が多いからという理由で選んだ不届きものなんだ。


 「あはははは、わかります。楽したい人にとって結構いい委員会ですよね。私も座っているだけでいいっていうのも選んだ理由の1つです」


 笑ってくれた。さっきは自分では笑わないでって言ってたけど、人のは笑うのかー。いやむしろいいんだけどね。この場合真面目に返された方が逆に辛いから。


 この学校は部活動か委員会どちらかに属さなければならないという規則があり、俺は金のかからない委員会を選んだ。もちろんどっちも選んでいいのだけれど部活動の方に人が流れやすく、委員会の方は渋々選んだという生徒が少なからずいる。シャリアさんは進んで選んだ変わり者かと思っていたが、意外と抜け目無い性格なのかもしれない。


 「そういえば、シャリアさんは獣猛族ですよね? 前々から思ってたんですけど耳はどうなってるんですか?」


 一瞬だけ暗い表情になった気がした。


 「私の耳ですか? これですか?」


 そう言うとシャリアさんは頭部から生えている少し垂れめの耳をピンと立たせひくひく動かしてみせた。


 「おおー! すごい!」


 そんな感想しか言えなかった。

 

 「じゃあやっぱり顔の横に耳ついてないのかぁ、どんな感じになってるのか見せてくれない? 嫌だったら別にいいよ」

 

 「いいですよ。どうぞ」


 サラサラのストレートヘアーをかきあげる仕草にどことなく邪な気持ちを抱いてしまった……

 

 「って耳付いてるじゃん!」


 思いっきり人間族と同じ耳がついてた。

――気のせいかなのか、また暗い顔をした。


 「当たり前じゃないですか!」


 ちょっと怒ってるのがわかる。まずい、せっかく仲良くなれそうだったのに余計なこと言ってしまった。


 「いや、だってさ……ほら他の獣猛族の人も基本的に耳を隠すような髪型してるからつい無いものかと思っちゃって」


 外見的に違いはあるが獣猛族の人は長髪であったり、パーマをかけたりして顔の側面を覆うような髪型、もしくは装飾を身につけていることが多い。というか俺はそれしか見たことがなかった為てっきり無いものかと思っていた。


 「私たちだって人間です。耳が4つあるとそれだけで嘲笑の対象になるので普段は隠しているんです」


 言葉が強い。

 この世界で人間族、獣猛族、鱗牙族は仲が悪い。今は『魔物』の存在で手を組んでいるが根本的な所で相容れない。特に人間族は人口比率が全体の8割を占めているので力関係の上位にいる。全ての種族をまとめて人間と呼ぶことからも獣猛族や鱗牙族の反感を買っている。

 どこか差別的な目で他種族を見ている人間族との違いを、獣猛族が隠そうとするのは当然だろう。


 「ごめんなさい。つい興味本位で聞いちゃって、ホントになんていうか……」


 少しの間を置いて俺に向かってシャリアさんが微笑んだ。


 「大丈夫ですよ。悪気がないのは分かってます。ちょっと怒っちゃいましたけど、私たちのこういう態度も問題の1つなんですよね……こんな風なちょっとしたつまらないことがきっかけで、おかしな関係になっちゃうんですよね――」


 どこか遠い目をしている。俺が知らないだけで種族の溝は思ったよりも深いのかもしれない。


 「……シャリアさんの救いたいっていう人はもしかして獣猛族のこと?」


 「…………そうですね……厳密には人間族と鱗牙族もです。あんまりこういうことを言うと変な目で見られてしまうんですけど、将来的にはそういう種族の壁を取り払いたいと思ってます。ただ、その方法がまだ具体的に決まらないんです……あっ、あのこれ他の人には言わないでくださいね!! なんだか恥ずかしい……ので」


 後半、顔を真っ赤にして慌ててる姿が妙に可愛らしかった。これっていわゆる2人だけの秘密ってやつだろうか? ローナとの秘密とは大違いだ。今日1日ですごく距離が縮まったきがする。

俺は心の中でグッと拳を握った。


 これは更に会話をするところだ!! 行けっ俺!!


 「嫌じゃなければなんだけど、耳が4つあるってどんな感じに聞こえるの?」


 少し気を使いつつ1番気になったことを聞いてみた。


 「んーと、ほとんどの獣猛族はこっちの耳が機能していません。だから顔の横についてる耳を隠しているんです」


 なるほど、頭部についてる方が耳として機能しているのか!


 学校の授業でも、大まかな人間の体の特徴は教えるが、獣猛族や鱗牙族の体の特徴についてはあまり詳しく語らない。それが差別につながる可能性があるから触れられないのだ。


 俺が感動していると、シャリアさんは面白そうに続けてくれた。


 「私は珍しいみたいで4つの耳で音を聞くことができますよ。自慢じゃないですけど結構耳はいいですよ? 集中すれば音を聞き分けられたります」


 なんだとっ!? 結構すごいんじゃないかそれって?

 俺が更なる感動を得ていると、珍しく使われた校内放送が響く。


 「2年C組 播磨鴻斗くん、2年C組 播磨鴻斗くん、至急保健室へ。2年C組 播磨鴻斗くん、2年C組 播磨鴻斗くん、至急保健室へ」


 ん? 俺か! 会話が弾んできたところだというのに……何故保健室?


 シャリアさんも小首をかしげ不思議そうに俺を見てる。




――突然学校に似つかわしくない轟音が鳴る――



読み直してみたらすごいテンポ早いですねこの話


取り敢えず完結目指していきます

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