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HEROの◇  作者: sonora
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Villainの者たち

 ほの暗い開けた空間に3人は居た。外の光は届かず、常夜の冷たさが支配しているその場所で青紫色と赤の輝きを放つ灯が不気味に光る。

 1つの影は片膝を立てて座り、右手は胸元へと置き頭を垂れる。1つの影は両腕を頭の後ろで組み、体重を左右の足へと移動させ退屈そうな素振りを見せる。1つの影は両腕を組み両の足は杭のように地にさし、微動だにしない。

 3つの影が見つめる方向には布で仕切られた大きなベッドがあり、薄らと黒い影が見える。

 布の隙間から微かに見える美しい装飾が施されたベッドから声がする。


 「して、ピピよ。どうだ? 体は」


 真ん中にいた退屈そうな影は後頭部に組んでいた両腕を天井へと向け伸びをし、ふるふると全身を震わせる。暗闇の中で光るくるりとカールした白銀の髪も体の震えに応じて揺れる。


 「んー、いい感じかなー。でも力はまだ使えないみたいな? っていうかアメ舐めていい?」


 許可を得るより前に腰にぶら下げていた袋から棒付きのアメを取り出した。

 その砕けた態度に頭を垂れていた男が口をはさむ。


 「ピピよ。ダヴィデ様にそのような口を聞くでない」


 頭は上げずに横目でピピと呼ばれた若い女を睨みつける。


 「お爺ちゃんこわ~い。うち、そういうお爺ちゃんきら~い」


 持っていたアメを口にいれ、ピピは頬を膨らませ可愛らしい顔で睨み返す。

 

 「そう厳しくするでない、マドロスよ。ピピは我らの新しい家族ではないか。ピピもその(からだ)があるのはマドロスの力のおかげであることを、努努(ゆめゆめ)忘れるでないぞ」


 「パパやっさし~。マドロスお爺ちゃんありがとっ。大好きだよ」


 腕を組んでいた長身の男が茶番に飽きたのか話の本題を切り出す。


 「そんなことよりもだ。父上、あのローナとかいうのを連れ去るのに2体も破壊されたようです。……俺様の力を使ってやったのに破壊されるなんてありえないな。じじい貴様の造った躯が弱いからだぞ」


 後半、父と呼ぶダヴィデではなく、頭を垂れるマドロスの方へと言葉を向けた。

 それを聞いたマドロスが返事をする。


 「……返す言葉もない」


 「アレクガンよ、疎明(そめい)はあるか?」


 布で隠された向こうから問いかけた。


 「は、『アレクサンワーヒド』と『アレクサンイトネーン』……あの2体は実験体のようなものでございます。『アレクサンイトネーン』は生物の死骸を利用し、ガイサルの力で動かしましたが、精神が入ってない器は本来想定していたものより脆くなってしまうようなのです」


 「じじい、それは俺様の力が弱いとでも言いたいのか」


 「そうは言っておらぬ。が、我らの力はまだ弱くダヴィデ様の力になれないのは事実であるだろう?」


 思い当たることがあるのか、ガイサルという男は軽い舌打ちをして押し黙る。

 殺伐とした雰囲気を壊すかのようにピピが話始める。


 「お爺ちゃん何でもかんでもアレクサンって名前にすんのやめない? うち的に可愛くなーい。次のはうちが名前付けてあげるよ」


 「ふふ、ピピよお前を創って良かったぞ。アレクガン、ガイサル、力が上手く使えずに苛立つのは分かるが家族で仲違いなど愚かなことだ」


 その言葉を聞き、腕を組んでいた大男もアレクガンと同じく片膝をつき頭を垂れる。


 「「申し訳ございません。(ダヴィデ様)(父上)」」


 「分かればよい。私はまだ力が戻らない。後のことは頼むぞアレクガン=マドロス」


 「は、仰せのままに」


 ピピが一番に身を返し、扉を出て行く。それに続きガイサル、アレクガンも続く。

 重苦しい空気から解放された3人は先ほどいた空間よりも広々とした場所へと移動する。中心に置かれているそれぞれの趣味が前面に現れている統一感の無い椅子へと腰掛け、3人の容姿がはっきりと確認できる明かりに照らされる。


 黒のオールバックに先端が白く染まり、口と顎には整えられたヒゲを蓄えている男はそのがっしりとした体を包むような円状のシンプルな黒い椅子に座り、話し始める。


 「ダヴィデ様は現在ピピを創造したことで相当の体力を使って休養を取られている。そこで暫くは我が指揮を取る。ガイサル、ピピ、今の力と躯の馴染み具合はどうだ?」


 白いクマの毛皮の上に真っ赤なハート型の椅子に座っているピピが左右に揺ら揺らと振れながら答える。


 「うちはー、この間のゴリゴリちゃんを送ってく時に力をほとんど使っちゃった感じ〜、躯はバリバリOKみたいな? 力戻るのはどんくらいかわかんな~い」


 胸を覆う銀の髪と、短めのツイストポニーがふさふさと揺れている。


 次に王座と呼ぶに相応しい、宝石がいたるところに散りばめられた黄金の椅子に座る2mは優に超える長身の大男が口を開く。


 「俺様は当然いつでも使える。躯の具合も悪くない、なんなら今すぐにでも戦場へ赴こう」


 椅子と同様に主張の激しい金色に光る短く揃えた髪からも男が自信家であるということが伺える。


 「……いや、ガエサルそう急く事もない。ダヴィデ様の旧友も一筋縄ではないようだしな。我らの力はこの星に来て躯を得たのと同時に目覚めたのだ。時間は十分にある。己の力を見極めてから追い詰めるが賢いというものだ」


 「……俺様は助言を愛する。いいだろう、では俺様は力の制御を会得するとしよう。じじい後で試験体を俺様の部屋まで持って来い」


 そう言うとガイサルは席を立つ。

 それを目で追っていたピピがくるっとマドロスの方へと顔を向け、ニコリと笑う。


 「ねぇお爺ちゃん。うちは暇……じゃなくって、現地調査を兼ねて力戻るまでお散歩してくるね」




 止めても無駄だと悟ったのか暫くの沈黙を破の後口を開いた。


 「……暗くなる前に帰ってくるのだぞ」


 「はーい。――――あっそうだお爺ちゃん、お金ちょーだい?」


 はぁ、とため息をつき懐から数十枚の紙幣を渡す。


 「無駄遣いはするなよ。それと変な男について行ってはならぬ。それと目立つようなことはするな、それと人間はまだ殺――


 耳にタコだと話を遮る。


 「わかってるって、ありがとっ、じゃあ行ってきまーす」


 老人は再びため息を漏らし、銀色がふさふさと揺れながら部屋を出ていくのを見守る。


 「娘には勝てないな……」


――それにしても


 「これが人間というものか……我とピピはまだ時間がかかりそうだ」


 残されたマドロスは一人では広すぎる部屋で何かを悟ったようにごちた。


前話で名前を出してネタバレしてしまったので敵側を書いてしまいました。


敵は3人と前の話で言っていましたが4人です。

名前のままトランプのキングがモデルです。



あらすじに魔法は出ないと書きましたが、敵には超能力的なものを使ってもらいますので少々変更します。

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