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灰色の魔導師シリーズ

邂逅の裏側で~公子の誤算~

作者: 麻生愛海

 一千年近く長く生きているが不思議な出会いがいくつもあった。

この全知全能の私でも驚かされる人物がいるとはな…。

ある日「闇の公子」ことサタンは自室で一人ふふっと腕の消えかかっている傷を見つめて笑いながらそう一人ごちた。


 近年というより数十年サタンは人間界に忍びで行っては、様々な人間の運命を弄んでいた。例えばある国を滅ぼした傾城の美女とか。その女は、元来は醜女であった。しかし心は気高くてサタンは容姿とのギャップに目をつけたのであった。女を言葉巧みに誘導し彼女を絶世の美女に変身させたこともあった。しかも人間を試すやり方すらも変わっていると彼の同胞は言うだろう。普通悪魔は巧みに悪の道に誘導したりと自分の思い通りにするものだからである。このサタンが人間を試したがるのには父である大魔王も困惑させていた。大魔王曰く「人間界は天界と魔界の緩衝地帯のようなものだから不可侵であるはずなのに、下の者に示しがつかないだろうが」と側近に嘆息して呟いたとか。

 

ここで魔界の歴史について一筆する。

この世界が始まって以来天界と魔界は当たり前だが非常に仲が悪かった。

何でも元々は天界と魔界の住民は一つの種族であったらしい。気の遠くなるほどの大昔この世界を支配していたグループの間で大事件が起こったと言う。原因は支配体制等の当時の体制に不満を持つ者がたくさん現われ一派をなしたと言う。そして二つの大きなグループは覇権を何十年もの間争ったと言う。激しい長い闘いは今の天界を構成しているグループにヒトと呼ばれる種族が力を貸したことで決着がついた。そして敗れ去った一派は異次元に亡命し魔界の礎を作った。魔界それは元々天界や人間界から様々な事情で追われた者たちの降る所へと成長して今に至った。やがて時が流れ天界のものも異次元に移住する。理由はヒトや様々な動物達が生まれ住みにくくなったからである。それが天界と人間界が分離した結果となった。魔界に住む者は天界やヒトへの恨みを忘れてはいなかった。また天界も同様だった。そこで両者は人間界を間に挟んで幾度となく対決しその結果は引き分けに終わった。また戦いを繰り返すたびに両者の間で争うのも馬鹿馬鹿しいと考える者も増えてきた。「無駄な流血はさけたい」とサタンの父である魔界の王が天界の王と永久休戦協定を結んだのはつい数百年まえのことである。


むやみに人間界に干渉しない

それが両者の暗黙の了解であった。


以上が魔界の事情であるが、サタンは「人間の運命がどう転がるか知りたいだけだ。」と何を考えているか分からない無表情で冷たく言い放ちままこの件については口を閉ざした。

「人間界と天界の動きを探っているだけですよ」と父王を言いくるめているようだが…。

では今回のターゲットは誰にしたのだろうか?この何を考えているのか分からないこの貴公子の不運にも目が止まった人物と言うのは誰だろうか?

 

 …彼と会う数年前

 とある日サタンはいつものように人間界をひそかに訪れていた。いつものようにまっ黒のカラスの姿で気ままに夜陰に乗じ飛んでいた。今日はどこへ行こうかと思いながら地上を見下ろしたとき、ふと自分の勘に訴えるものがありその場所に誘われるように地上に降り立つ。人の気配が無いことを確認してから最小限に力と気配を押し殺しサタンは人形を取った。「これは…。」と思わず驚きの感想が漏れた。降り立ったのは薄汚れた廃墟である。かすかに魔法の残滓が残っていることから魔法の類の力によって壊されたのだろう。「ふむ…。」とサタンは腕組みをしながら考え込む。ここは廃墟のスケールの大きさとしてかなりの大きな建物だったのだな。近年色々と事情があって人間界に言っていないから分からないが、相当激しい戦いだったように思われる。空へ伸びている大きな柱のようなものや元々壁であっただろうその残骸からサタンは推測する。一体何があったのやら少し調べてみることにしようかと思いサタンはこの廃墟を探索してみることにした。魔力の残滓がわずかといえども広範囲に残っていたから少なくとも一カ月は経っていないし大きな戦いでもなかっただろう。通常魔法が発動し終わった時魔法の使われた痕跡が残る。使われた魔力の量が少ない、一過性の物なら使われた後半日も経たず痕が消え去るのが普通である。だが天界や魔界に知られ渡る程の大きな戦いではないとサタンは確信していた。ここ数年人間界にさほど大きな戦いがあったと言う知らせは耳にしていない。だが何故自分はここに呼び寄せた物は何かと考えながら廃墟の壁らしき所の前で立ったとき時、ふと近くに魔物の気配を感知した。

「何者だ?近くにいるのだろう。」と尊大な態度で誰何の声をかける。すると目の前の壁の割れ目から小さな鬼がふるふると震えながら現われた。この程度の鬼ならば特に何も問題ないだろう。鬼は確か未練残した魂が成仏できないまま異形に変化したもの。まぁ、我々人であらざり招かれざる者は同じ生い立ちを持つかと自嘲する。

(ただの小鬼か…。一応聞いてみるか?)

サタンは早速堂々とした態度を崩さないまま鬼を尋問した。

「小鬼よ。何故貴様ここにいる?答えねば分かるよな?」と手に魔力を高まらせれば鬼は一層委縮した。自分の事を知らないとしてもさすがに危険な人物だと悟ったらしい。

小鬼は震えながら「自分はこの森に何十年も昔からここに住んでいる」と答えた。

それをききサタンは満足した。人間界の夜は幽霊や死霊等の異形の者が彷徨っている。

こいつがここに長年存在しているならばここで何が起きたか知っているだろう。

「ではここで何が起きているのか知っているな?包み隠さず教えよ」と厳かに聞いた。

「数十年前からここには闇の…魔導師ロキなる人物が住んで、おりました。数週間前別の魔導師によりかのものは滅ぼされたというのです。そ、それ以上は存じ上げていません。」と不安そうに怯えながら話した。


「闇の魔導師ロキ?!だ…と」

と目を見開き珍しく驚きの反応を示した。魔導師ロキ、それは数世紀に渡って活躍してきた闇の魔導師である。一般では知られていないが、一定以上の実力を持つ魔導師や魔界の上層部には名が届いていた。

まさかあの男が倒される日が来るとはな…と賞賛の声を上げた。

 

 闇の魔導師…。それは聖にも魔にも属さない中途半端な存在。闇の魔導師というのはその術の危険さ故に使うのを禁じられたり敬遠されてきた闇の魔術を扱う魔導師のことを差す。同じ闇に生きる者であっても魔界では敬遠されていた。何故ならばヒトでありながら魔族に挑む存在であり、一度魔界に侵入して大騒ぎになる事態もあった。勿論魔界は力が制する社会であるが、あれ以来闇の魔導師は非常に嫌われた。勿論サタンも何人か会ったことがあり、ロキなる人物にも会ったことがある。勿論自分に及ばないにしても、ヒトの意外な可能性に何度か驚かされたものだ。闇の魔導師の特色の一つに相手がどういう人物であったとしても他人から魔力を奪うことであった。そうして力を蓄え強くなろうとする。己が誰かに倒されるまでやめないのだ。

 私ともやりあったことのあるあのロキを倒した人物か興味深いとサタンは好奇心がうずくのを感じた。そして小鬼にその人物を問いただせば灰色の髪の男としか聞き出せなかった。サタンはこれ以上聞くのは無用と判断し、哀れな小鬼を放しひとまず引き上げることにした。その前にかすかに残っていた魔力の性質を頭にしっかり記憶するためにもう一度廃墟の中を歩き回った。


(かすかに奴の物が感じられるが…。別の力も感じられるな。かなり奴と似た力で実力のあるな。この力覚えておこう。いずれまみえるかもしれぬ。)

それからサタンはあいも変わらず人間界に渡った。時たまロキを倒した人物の痕跡に出会い、その人物についての手掛かりを断片的に集めることになる。しかし彼に強い関心を持ちながらサタンは自ら会いに行かなかった。


「奴が強きを追い求めていればいずれ私を倒すために追いかけてくるだろう。わざわざ会いに出向く必要はない。」


 そしてあの日の「闇の森」

「闇の森」というのはサタンの人間界の活動拠点の一つである。ここは昼間でもヒトは近づかない暗く静かで不気味な所であった。そこの奥には結界で隠された彼の屋敷があり、たまたまきていた。幸運にも奴が近くまで来ていてその気配を感知した。

まみえる機会を与えてもよかろう。それに乗るかは奴次第だとほくそ笑んだ。

まず、意図的に自分の気配をもらすとともに彼の動向を探った。

奴はくたびれた様子でどこか向かっている。どうやら寝床を探しに行っているところか。うん?立ち止まってこちらへ顔を向けた。さては気付いたということか。わが誘いに乗ってきたようだ。おおっ、でも慎重だな。頭をひねらせ何か考えているようだ。まぁ、無鉄砲でない分かなりおもしろいかもな

やがて「まさか魔界の大物が直々にオレのような弱々しい人間に会いに来るとはな。何用か?」

と奴は問いかけてきた。その言葉にますますサタンはかすかに驚愕を覚えるとともに心の中から何か熱く沸き上がってくる物を感じた。私の存在を看破したか…。これはますますおもしろくなりそうだと思いつつ、屋敷を出て会いに行った。但しサタンは姿を隠して面会する事にした。それは魔界では高貴なものは滅多に姿を見せないというならいがあるからだ。それに魔導師としてのプライドが高いと言う彼の反応を少し楽しみたい。


 …だが奴は予想以上に厄介な人物であった。こちらの心がむしゃくしゃにかきむしられるほどに。奴に何も恐れもおびえも感じさせないあの傲慢不遜な態度。私を目の前にしてそのように堂々とした態度を崩さぬ者はいない。こういう人物は己の心にある不安や恐怖をひきだすことで発狂させてから憂さ晴らしするのだが奴の心は簡単に私が侵入できなそうにないな。奴のガードが非常に高い。それにしても何だ?この忌々しいがこの快感は一体何だと言うのだ?少々イライラしながら対峙していた。奴は無礼にも姿を見せるように要求までして来た。むむっ…。まぁその大胆さに免じて見せてやるか?と姿を表わしてみせた。奴は何も怯えも恐れも微塵も感じさせなかった。そして私も一度こいつと手をあわせてみたいと戦意を燃やすようになった。今までは相手からけしかけられるばかりで自分で戦いを挑むようなことはしなかった。いつも心が氷のように冷めるばかりで轟々と燃え上がる焚き火の様に熱くはならなかった。

 こいつと手をあわせてみたい。我々が忌むべき闇の魔導師の…人間の実力をはっきりと

たしかめてみたい。

私は闇の魔導師に対し毛嫌いはしていなかったが、身の程知れぬ者と思っていた。

闇の魔導師は己の為になにふりかまわず突進してくる人物と思っていたからである。

 そう思いつつサタンはさりげなく挑発し、彼は堂々と我が宣戦布告を受け入れたのであった。

 背景は何も視界を遮ることのない草原。ヒト一人動物さえも通らないが、そこは

空間の中だけ時の流れが違っているように感じた。彼らのいる所だけ時の流れからはずれているような…。

戦いは亜空間とよばれる空間の中で行われることになった。それは騒ぎを出来るだけ周囲に知れ渡らないようにするためである。そして存分に戦えるようにようにするためでもあった。サタンが魔界の者にしか分からない呪文を唱えて異次元空間を作り出した。

しばらく二人は一定以上の間合いを取りお互いの出方を伺う。魔導師は全神経を集中させて、たいしサタンは余裕釈癪な表情で仕掛けてくるのを待っていた。

 闇の魔導師はどうしかけるか初手を悩んでいた。

こいつは今まで相手したことのない強い奴だ。この余裕の表情といい仕掛けてこないところからみるとかなり自信があると見える。魔界の大物っていうのも伊達ではないな。最初は軽く仕掛けてみて相手の戦い方を見るか…。それとも奇策を弄してみるか…。

 彼はサタンには正攻法では勝てないと判断した。サタンのような魔界の大物レベルとは戦ったことがないから対処に苦しんでいた。

サタンは魔導師が自分の出方をうかがっていることに気づきそれを楽しそうに見守っていた。さすがロキを倒したほどの魔導師か…。まぁ見物だな。正直自分が相手に負ける予感がしない。故に自分は待ち構えているだけで圧迫感を与えられる。そう判断して力を高めながらも何もしなかった。にらみ合ってから五分後闇の魔導師から動いた。

一か八だ。やってみるか

そろそろ動くか?


二人の目線が再びあった時自分の力を放出する時に使う重々しい魔剣を構えた魔導師はサタンに向かい駆けだした。

「ダークブレイド!!」呪文とともに黒い幾重の刃がミサイルが飛ぶような速さでサタンに襲いかかった。たいして動じずサタンは刃に向かって手をかざすと、幾重の魔法の刃が消え去った。「くそっ…。」とそれを見て彼は悔しがる。「ダークブレイド」は彼の基本技である。一番簡単な技で彼は様子を見ようとしたのであった。サタンは自分と同じ闇の者。故に闇系のモンスターには闇の魔法が効きにくい。自身の得意とする闇の魔法で自分以上の実力を持っているサタンに勝つには相手の意表を突くしかない。

 だがどうする?

奴は魔法を無効化もしくは半減できる。とシェゾが色々と戦略を練っているとサタンからいきなり攻撃をして来た。

「ではこちらからも参ろうか?「ダーキングサンダー!!」」と掌から黒い雷を打ち出してきた。「バリア!!」と咄嗟に魔導師は防御魔法を唱えて難なくかわした。

「ほぅ…。少しはやるようだな?ではこれはどうかな?「ダークホール!!」」と今度は間髪いれず連続で攻撃魔法を打ち出してきた。それも容赦なく休む隙がないほどに…。

「ブラックフレア!!」「ストリーム!!」「インフェルノ!」「ブリザート!!」

飛び交う二つの魔法の球や光線。ぶつかり合って拮抗した後霧散する。

最初は二人ともお互い攻撃魔法でお互いの効力を打ち消していたが、闇の魔導師が押され始めた。魔導師の方は息を切らし全身血まみれになっているのに対しサタンには傷一つつけることすら出来ない。とうとう開戦から15分後サタンの最大攻撃魔法「ダーククロスード」と呼ばれる闇色に輝く十字架で倒れてしまう。「ぐはっ…」と血を吐きながらよろよろと立ちあがる。このままではまずい。どうする?と息を整えつつ彼は思案した。それを眺めながらサタンはあざけるようにつぶやいた。所詮お前も限界はこれまでかと捨てばちのような気持ちになった。

「あの魔界へ侵入して暴れたロキもこんな弱い者にやられるとは落ちたものだな。所詮人だ。こんなものか」

それを聞いた途端魔導師は高いプライドから激しい怒りがこみ上げてきた。同時に頭の中が冷たく冴えて来るのを感じる。そして自分が何をすべきかおのずと答えが胸に落ちてきた。

 これならば奴に傷一つ付けられるかもしれない。そう決意した途端力を高めた。

「サンドストリーム!」と呪文を唱えて剣を突き刺す。すると砂埃がお互いを見えなくした。サタンが「何をするつもりだ?」と顔に手をかざしつつ彼の気配を探ろうとした。

だが出来ない。「…?どういうことだ?!」と訝しく思いつつ警戒を強める。

何か嫌な予感がする。視界を課茶色にしていた砂埃が薄れかかった時サタンは不意に自分をかばうように右腕を前に突き出すと同時に目の前から黒い大きな刃が自身に向かって現われた。

グサッ!!

何かが刺さるような音がした。

「なっ…。」と砂埃が消えれば、魔導師が自分の目の前におり剣を突き刺していた。顔を苦痛で歪ませながらそのままくずれこんだ。彼は砂埃でサタンの視界を奪ってから自身の気配を遮断する魔法を使った。そしてサタンのいる位置を砂埃に視界に奪われながらも気配で掴みつつ忍び寄っていたのである。しかし本当に無我夢中の捨て身覚悟だったため魔導師はサタンに大ダメージを与えることが出来なかった。

「まぁ、予想以上だな。また会おう」とさっきの驚きが嘘だったかのように落ち着き払って言い放ち、腕で刺さった剣を払う。そして「まだだな。」と冷たく一瞥し去った。


あの後私は自室に戻って彼にやられた所を改めてみた。右腕から血が流れていた。

傷の深さは大したことのなかったが、面白おかしく感じた。この私が傷つけられるとはな…。奴は姑息な方法を使わず正々堂々と立ち向かってきたものだから少々油断した。

もしあの時腕をかざさなかったら、もっとダメージを与えられていたかもしれない。

だが逆に言えばそれほどサタンを倒すのは難攻不落の城を落とすのに近い存在だということを相手に知らしめなる。だがサタンは秘かに魔導師に賛辞を贈る。まさか初対面で私のような上位魔族に戦ったことのない奴に傷をつけられるとは意外であったな。だが傷をつけられるということは奴には魔導師として大いなる可能性を秘めているということだ。あるいはは私を打ち倒すことができるほどに…。

そう思えばサタンは楽しい気持ちにさせられる。この傷跡も好ましいものに思わせた。

もう少しの間だけ奴を見守るのもいいかもしれない。多少むっとする事が多いかもしれないがとサタンは今は血が止まっている傷口をいつまでもなで続けた。あれから私は何度か

奴に会いに出かけた。奴と関わることは私にとって幸運であった。何故ならば奴の立ち位置は我々の厄介な問題を解決するのに大いに役立ったからである。しかし私は彼の可能性が大いに秘められている同時に彼の立ち位置の不安定さを感じた。闇の魔導師にふさわしいが、悪者らしからぬ所がある。行動見ていると悪者というより好青年だ。

 誰よりも強い闇の魔導師だが、今までの奴とは違う。


こいつ一体何なんだ?


そういう奴に対し色々と疑問を抱かざるを得なくなりまた不安がこみ上げてきた。

彼と親しくすることになってからどれくらい経っただろうか?サタンはとある噂を聞きあることを思いついた。奴が闇と聖どちらの道に転がり込むか見極めてから解放してやろうかと考えた。

アイツといるとこちらが着ぐるみはがされかねないし狂わしかねない。

 

私が奴に姿を見せなくなった理由は以上のようなことが理由だ。奴は見ていると面白い奴なんだがこのまま付き合えば私の中の何かが非常にくるわせそうで…。非常に得体の知れない不安がこみ上げてきた。つまり認めたくはないが私は奴に完敗したということだ。様々な人間の運命を弄んできた私を打ち負かした数少ない人間であった。私のプライドにかけても魔族としても非常に非常にそれを認めるに不愉快だったから私はこれ以上奴に関わらないことにした。

 だがと奴と別れてから私は瞑目する。

「だから人間界へ行くのをやめられないのだ」と嬉しげにつぶやいた。

私は自分が関わった人間達がどう行動していくのか関心を抱いていた。

人間。それは永遠に生きるに等しい魔族や神からは寿命が短いはかなくかよわき存在。

だが侮れば人間は思わぬしっぺ返しを食らわせる。今回の様に。ヒトは我々の予想を超えた行動をする。時には我等を凌駕しかねないほどに

 サタンは今日も人間界へ訪れる。彼がこれまでに味わったことのないタイプの人間を探して…。

 

我が名はサタン。さて今度はどんな人間の運命の将来をみてやろうか?                  

                                (完)

 

次回からあとがきを面白く書こうと思いますのでよろしくお願いします。

もしかしたら「灰色の魔導師」を次回から一話完結形式で連載する予定です。

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