第三幕
あの日見た、真っ赤に燃えるホールその中に俺はいた。
綺麗なピアノの音色がホールを包み込む。
中央にある大きなピアノを中心に炎が燃え上がる。微かながらその中に、誰かの姿が見えた気がした。
俺の意識はそのピアノの前へと移り、その誰かの姿がはっきりと見えた。
――――――――――――黒く長い髪を揺らす女だった。
黒い髪は周りの炎の影響で真っ赤に染まって見えた。ピアノの演奏をやめることはせずにただ黙々と弾き続けて、それ以外のことは気にせずに弾き続ける。
俺の腕がその女の髪に触れる。そして――――――――
なににも触れることなく通り抜け、腕が女の頭を貫通する。
俺は女の顔をまじまじと見つめ―――――
ることはできなかった。
視界が歪み、無理やり現実に戻される。
「なにをぼーとしているんだ?」
その声で俺は意識を取り戻した。
靴紐を結ぶ途中で止まってしまった手は、汗にまみれて、その下は今にも池ができるんじゃないかというほどに汗がたまっていた。
ふと顔を上げると、いつもの無表情な顔が目の前にあった。
無表情な顔をした女――――――天音海依が少しばかりイラついたように声をかける。
「お前もわかっているんだろ?もう・・・・私たちに時間はあまり残されていないっていうことぐらい・・・」
その言葉の意味を、俺はよく理解していた。理解していたからこそ知りたくなかった。
気がついてしまったら・・・・・・
自分は自分で入られなくなるような気がしたから。
二人は陽一が住んでいたアパートを後にして、とある場所へと向かった。
それは、ひとつの・・・さざなみという事件の始まりであり、終焉の地でもある小さな島、日本海に浮かぶ小さな島、洛陽島
その島の最北端に位置する小波市
そしてその中で、地図からも抹消されたエリア
今は封鎖され誰も出入りすることができない、政府によって消滅させられたエリア。
そこを知る数少ない人間はいう。
エリア9(ナイン)と
久しぶりに書いたので、多分もしかしたら話が微妙に狂ったりしているかもしれません。
そこは温かい目で見てください。