第7話 護衛任務
ある日、ギルドの依頼で、ミオは商会の主人の護衛に付いていた。
荷馬車がゆっくりと街道を進んでいく。周囲は低い森に囲まれ、風に揺れる草の音だけが聞こえていた。
剣士がふと足を止める。
「……来るぞ」
次の瞬間、森の奥から低い唸り声が響いた。
ウルフの群れだった。
十匹以上。
しかもすでに、周囲を囲まれている。
「囲まれた!」
格闘家が武器を構える。
狼たちは低く身を沈め、じりじりと距離を詰めてくる。
一匹が飛びかかった。
ミオは瞬時に状況を計算した。
個体数:11
包囲角度:全方位
近接戦闘:危険
「うーん……」
ミオは少しだけ考える。
そして小さく息を吸った。
魔導書を読み込み、再構成した言葉を口にする。
「天を走る光よ――」
ウルフが飛びかかる。
「地を裂く雷となりて――」
もう一匹が横から迫る。
ミオは両手を広げた。
「我が敵を打て――サンダー!」
次の瞬間、空気が震えた。
バチッ。
青白い光が弾ける。
雷が円形に広がり、地面を走った。
バリバリッ!
ウルフたちの体が一斉に跳ねる。
毛が逆立ち、足が痙攣し、そのまま地面に倒れた。
動けない。
完全に感電している。
静寂が戻った。
剣士がぽつりと言う。
「……今の」
格闘家が目を丸くする。
「サンダー……?」
魔法使いが首を振った。
「違う」
「こんな魔法、見たことない」
ミオは周りを見回して、ぱっと顔を明るくした。
「すごいでしょ!」
少し嬉しそうに言う。
「魔導書の内容、組み替えてみたんだ!」
得意げというより、
新しいことができて嬉しい子供みたいな声だった。
パーティのメンバーは、しばらく言葉を失っていた。
魔法使いがようやくつぶやく。
「……魔導書を」
剣士が額を押さえた。
「組み替える……?」
格闘家が小さく言った。
「それ、普通じゃないからな……」
ミオはまだ嬉しそうに、倒れているウルフを見ていた。
「ちゃんと感電してるね」
護衛任務が終わり、街に戻る。
ギルドで報酬が支払われ、パーティは酒場の席に座っていた。
そのときだった。
護衛していた商会の主人が、ミオの前に立った。
細身で落ち着いた雰囲気の男だが、その目は商人らしく鋭い。
男はミオの手を取った。
そして突然、ひざまずいた。
酒場が静まり返る。
「君には才能がある」
男は真剣な声で言った。
「私のもとでなら、君はスターになれる」
少し微笑む。
「一緒に来てはくれないか」
その瞬間だった。
ミオの視界の端に、コンソールが開いた。
システム更新。
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マスター:商人ウェルズ・グライナー
ミッション:闘技場のスターになる
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ミオはその表示を見つめた。
しばらく黙る。
そしてゆっくり顔を上げた。
ミオはアルトの手を取り返す。
「はい」
少し嬉しそうに笑った。
「私でよければ、応えて見せます」
酒場の奥から歓声が上がった。
「おい、ミオが出世したぞ!」
「闘技場スターかよ!」
格闘家が肩を叩く。
「有名になっても俺たちのこと忘れるなよ!」
魔法使いも笑った。
「まあ、頑張りなさい」
その夜、酒場はいつもより騒がしかった。
そして翌朝。
ミオはギルドの仲間たちに見送られながら、商人とともに街を後にした。
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