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第4話 ケンカとカレーライス

酒場はまだ少しざわついていたが、さっきまでの緊張はすっかり消えていた。

床に転がされていた男たちは、すでに仲間に引きずられて奥に運ばれている。


受付の男は腕を組みながらミオを見た。


「……嬢ちゃん」


「はい?」


「強いじゃねえか」


周りの冒険者たちも、さっきまでの態度とは少し違う目でミオを見ている。


「見た目はただのガキなのにな」


「いや、今のはすげえだろ」


酒場の店主がカウンターの奥から顔を出した。


「嬢ちゃん」


「はい」


「さっきのケンカ、止めてくれて助かった。今日は好きなもん食っていいぞ」


ミオは目をぱちぱちさせた。


「え、いいんですか?」


「ああ」


店主は笑った。


「何でも食っていい」


ミオは席に座ると、渡されたメニューをじっと見つめた。


視界の端で、いつもの翻訳機能が静かに働く。

この世界の文字が、次々と意味のある言葉に変わっていく。


「えーと……」


肉の煮込み。

パン。

スープ。


そして、その中の一つに目が止まった。


「……カレーライス?」


ミオは小さくつぶやいた。


「そんなものもあるんだ」


少し考えてから、店主に言う。


「じゃあ、これください」


「おう、カレーだな」


しばらくして、皿が運ばれてきた。


白いご飯の横に、茶色いとろりとした煮込み。

香辛料の匂いがふわっと広がる。


ミオはじっとそれを見つめた。


「これが……」


スプーンを持つ。


そして一口、口に入れた。


次の瞬間、ミオの目が大きく開いた。


「……!」


少しの沈黙。


それから、ミオは勢いよく言った。


「おいしい!」


周囲の冒険者たちが振り向く。


ミオは夢中で二口、三口と食べる。


「すごい……」


「温かいし……」


「香りもあるし……」


「こんなに美味しいんだ……」


スプーンを持つ手が止まらない。


「ご飯って……こんな感じなんだ……!」


その様子を見ていた冒険者の一人が、呆れたように笑った。


「……なんだあいつ」


別の男が肩をすくめる。


「カレーでそこまで感動するか?」


店主も笑った。


「大げさな嬢ちゃんだな」


ミオはそんな声も聞こえない様子で、夢中で食べ続けていた。


「おいしい……」


ぽつりとつぶやく。


「人間って、こんな美味しいもの食べて生きてるんだ……」

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