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的を射ずとも  作者: すみれ


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第十六話 探索

「木野先輩。」

「なんだ、篠原。なんとなく言いたいことはわかるぞ。」

「木野先輩…」

「藤川、意識をしっかり持て。大丈夫か。」

「「飽きました。」」

「だよなぁ…」

 わかっちゃいたけどと言いたげな表情でこちらを見てくる。

「加茂さんはああいうけど個人的にはもう引いてもいいとは思うんだけどなぁ、形はできてるし。」

 木野先輩までそう言うなら、疑う余地はなかった。

「まぁこれも含めて弓の修行と思っとき。そうでも思わんとやっていけん。」

 木野さんはガハハと豪快に笑い飛ばした。さっきまでの神妙さはどこへ消えたのか。

「なるほど、そう考えるのも大切ですね。」

 どこがだよ。弓の修行って本当にわかって言っているのか?


第十六話 探索

「双葉ぁ…つまんない…」

「僕思いっきりディスられてる?」

 あえて黙ってみよう。あ、オドオドしだした。涙目になり始めている、面白い。このあたりで止めといてやるか。

「藤川…何をしているの?」

 天からの使者、天光様がご降臨なさった。刹那、全てを察した。終わった。


「いーじゃんちょっといじっただけじゃん…」

「天光さん、そこまでしなくても…」

「弓道人としてどうなのさ!そこ。」

いや関係ないでしょ。高校生の戯れとして見逃せよ。

「にしてもファミレスで奢りは天光がやってほしいだけでしょうよ。」

「あ、バレた?」

「だから僕はいいって、天光さん。いつも仲良くしてもらっているし僕が払うよ…」

「ふ・た・ば・く・ん。」

「…ハイ。」

 やはり双葉は犬だ。

「そういえば藤川君って最近部活で嫌なことでもあったの?」

 こいつ…ふいに心臓を打ち抜きやがった。

「…やっぱわかる?」

「なんか楽しそうにトレーニングの話していたのにふとしなくなっちゃったなって。」

 思い返せば、どうでもいいことまで話していた。

「まぁ先輩にいじめられているのはいつもだけどね、藤川は。」

「え!?それは先生に言わなきゃじゃないの!?」

「鍛えるためだから、うん。細胞レベルでとことん破壊されていたけど。あと天光、余計なことは言わない。」

 双葉の顔が引きついていた。

「お待たせしました。ミートドリアと…」

 注文した品が運ばれてきた。そういえばこれ、誰が払うんだ?別会計?

「藤川の様子が変わったのは素引きを始めてからよね。」

「すびき?」

「弓だけで引くことよ。動作の確認や定着にもってこいなの。」

「へー、本物の弓もう使っているんだ!すごいじゃん。」

 弓道を知らない相手と話すと、感覚のズレを思い知らされる。

「まぁ、その練習が不満なんだけどな。」

「どうして?」

「2時間同じ動作の繰り返し。何度見ても違いが分からないし、これ以上何をすればいいのかも見えない。誰があんな練習を続けられるんだよ。」

「あーたしかに、基礎練みたいに何度も繰り返すやつって辛いよね。」

「ちゃんとやりなさい…と言いたいところだけどしんどい気持ちはわからなくはないからなぁ…特に藤川は中学の頃から反復って苦手だったよね。何度私が頭を抱えたことか…。」

「その節はお世話になりました…。」

「2時間ぶっ通しだと流石に飽きるし、座学的な勉強タイムを入れてみたら?僕もテニスでよくやるし。」

 え、テニス部なの?聞いてなかった。そういえば、弓道部の体験後にテニス部の体験行くって言ってたっけ。

「座学…教本でも読むか…」

「あ、この前整理していたら的中記録とかまとめられたノートの束があった気がする。色々とまとめられていたからあとで見てみようと思って…どこにしまったっけ?」

……そこが一番重要だろ。

「藤川も明日一緒に探さない?参考になりそうなノートだった気がする。」

「気分転換にもいいんじゃない?やりなよ!藤川君!」

「…ウッス…。」

「なんでそんな面倒くさそうなのよ…。」

 どうせくたびれたなんかの的中記録表とかメモ帳だろう。秘伝書でもあるまい。“ま、いっか”とつぶやき、天光たちに問いかける。

「ご注文は?」

「コーラ、氷抜き。」

「え、そういうこと?じゃぁ、僕オレンジジュース、お願いしてもいいかな?」

「あいよ。」


 いつも通り始まる練習。篠原と俺は1年生の中で2人だけ、道場に残る。

 巻藁部屋を箒で掃き、足元の藁くずを払う。キャスター付きの鏡を前面に置き、準備は完了。

部屋の上に掛けられた鏡と前面の鏡を見ながら、射形を確認する。会まで引いたところで弦を戻し、離れだけを真似る。これをここ最近ずっと、延々と続けている。何が正しい形なのかも、分からなくなってくる。

1時間ほど経っただろうか。頑張りたい気持ちはあるが、ついに限界が来た。篠原と共に自販機に飲み物を買いに行く。

「篠原はよく真面目に素引きできるな。」

「面白いこと言うなぁ、僕は君ほどまじめにやってないと思うよ。」

 いやいや、淡々とこなしつつ射形を整えているじゃないか。

「藤川君は毎回射が変わっている。それって追求している証拠でしょ。」

 でもそれって…。

「再現力がないってことを皮肉したいのか。」

「相変わらずひねくれているね。」

 アハハと笑いながら篠原は続ける。

「毎回の射に満足してないってことだと思うけどな。」

「迷子になっているだけだよ…あ、そういえば篠原。宝探し興味ない?」


たびたび更新しかできなくなりました。

眠い…腹減った…仕事が…。

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