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的を射ずとも  作者: すみれ


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10/21

第九話 再開

「おはよう、藤川。」

「おはよ、天光。」

 変わらぬ日常がまた始まった。

「今日楽しみだね。」

「……何かあったっけ、今日。」

「部活動紹介だよ!」

「見る必要ないじゃん。」

 弓道部以外入る気ないし。

「しけてんなぁ、面白い紹介も多いらしいから楽しいらしいよ?」

 ふん、なんとでも言え。

「弓道部以外興味ないってつまんない男だな。」

「天光には言われたくない。」

 そう言い合える相手がいる朝も、もう当たり前になっていた。


第九話 再開

 天光と一緒にいるせいか、最近やけに一日が前のめりだ。

生き急いでいる、と言うほど大げさではないが――そんな感覚がある。

 本来なら8時15分までに登校すればいい。それなのに今は、なぜか毎日7時には学校に着いている。授業も始まっていない時間だ。正直、やることがない。手持ち無沙汰で、1組に顔を出すことにした。

「暇か?」

「発信音の後にお話しください。」

「天光、電話だったのか。」

「仕方ないから、藤川に付き合ってあげるわ。」

 両手を横に出し首を振っているがどこか嬉しそうな表情だ。天のじゃくな性格だ―天光だけに。

 ふと疑問を発する。

「俺らこんな朝早く来る必要あんの?」

「校則見る限りは朝練が可能っぽいから初めのうちは勉強でその後は弓道をやることになりそうね。」

 さも当たり前のように校則を話題に出してきた。あとで生徒手帳でも見よう。

「お、朝早いな。いい心がけだ。」

「おはようございます!」

「お、おはようございます。三浦先生。」

「おう、おはよう。藤川とそちらは…」

「天光です。1組です。よろしくお願いします。」

「天光だな。よろしく。2組担任の三浦だ。早速二人に悪いが手伝ってもらってもいいか?」


「おはよう!藤川君!…って大丈夫!?」

 激しく肩をゆすられ反応せざるを得なくなる。

「双葉……限界。見ての通りだろ。」

「見ればわかるけど…」

「じゃ、おやすみ。」

「ちょっとそれは酷くない!?」

 今一番絡まれたくないやつに絡まれた。

 三浦先生からの依頼…それは教科書運び。各クラスの教科書セットを運ぶのだが、富丸は学年でクラス数が多い。運搬自体は台車だったが、何度も往復と積み下ろしをさせられたのはさすがに堪えた。椅子が俺を放してくれない。

「それは大変だったんだね…優しいなぁ藤川君は。」

「そう言うのは双葉くらいだぞ、多分。」

「よし、出席を取るぞ。」


 今日は午前を乗り切れば部活動体験。そう考えると気が楽だったが…

「なんでこの学校は50も部活があるんだ。」

「ワクワクするよねぇ、楽しみだよ。」

んなわけあるか。もう決めている身としては退屈で暇で仕方ない。

「ただいまから部活動紹介を始めます。司会は生徒会長の石動と。」

「木元です。よろしくお願いします。」

 あ、ダメだ。これ眠くなる…

「少林寺拳法部です!」

「お願いします!」

 ドンッという地響きと共に部活動紹介がスタートした。ワンダフルな目覚まし時計だ。

「皆さんはカツアゲに遭遇したことはありますか?もし少林寺拳法を習っておけば…というシーンをご紹介します。まず、一般富丸生の場合。」

 ドラマでよく見るカツアゲシーン、昭和の学園物でしか見たことないぞ。あまりの演技に鼻で笑ってしまう。

「少林寺部員富丸生の場合。」

 ヤンキー側が声をかけたとたん、奇声を上げ、ド派手に相手の懐に潜り込み倒してしまった。え、そんなに強いのこの部活。

「我々はインターハイに県代表として5年連続出場しております。でも全員未経験からのスタートです。高校デビュー、成功させようぜ!」

オッス!という迫力ある声とともに終わる。逆に弓道部はどんな説明なのだろう。ちょっと興味が出てきた。


「続いて、三十九番。弓道部。」

 紹介者が出てきた瞬間、目を疑った。そして胸が高鳴る。あの姿勢、たたずまい…忘れるはずがない。

「我々弓道部は佐渡先生、濵谷先生のご指導の下、日々鍛錬をしています。弓道は武道の一つです。苦しい鍛錬の先に、成長した己が待っています。自分を変える、という決意のある人は大歓迎です。」

「高校生から始めて、国民スポーツ大会の選手として選ばれた者もおります。間違いなく成長できる部活。変わるか変わらないかは、自分次第です。体験入部お待ちしております。」

 つい口元が緩んでしまう。どれだけの言葉を並べられたとて、自分の覚悟は揺るがなかった。


 ホームルームを終え、双葉と2人で学食に向かう。

「弓道部の人カッコよかったよね!」

「あぁ…カッコいいよな。」

「この後の体験入部楽しみだな~。そう言えば、3人で食べるって言ってたけどあと1人はどこ?」

「どうせもういるよ…ほらあそこ。」

 手を振る天光を見かけたのでそこに向かう。先ほどお願いした食券をもらいに行こう。

「注文通り食券買っておいたよ!はい、350円くださいな。」

「その流れはおごりだろ、ったく。」

「あの…。」

 ごめん、双葉。存在忘れてた。

「1組の天光美咲って言います。藤川と同じ中学出身です。気さくにみーちゃんでもみさちゃんでもなんでも呼んで。」

「双葉って言います。藤川君に声をかけてもらえて仲良くしてます!名前呼びはちょっと悪いから天光さんって呼ばせてもらうね。」

「いや、付き合ってないから気にすんな。お節介姉さんでもいいと思うぞ。」

「ほんっと可愛くないよね、藤川は。これだから全く…。」

 隣で双葉が気まずそうに力なく笑っていた。ごめんよ、ここらで舌戦を切り上げることにするね。さてと、富丸ランチ、今日はメンチカツだったらしいので楽しみだな。


「ねぇ、双葉君。」

「何ですか?天光さん。」

「あいつ、上手くやってる?」

「上手くって?」

「その…友達できてるかとか、誰かとトラブってないかとか」

「天光さんも優しいですね。」

「まぁ、同じ中学出身ってあいつだけだからねぇ。ちょっとくらいは大事に思ってるよ。」

「僕から見ている限りはそんなに心配しなくてもいいかなと思いますよ。」

「あいつさ、昔から視野が狭いのなんの。一個やるって決めたらイノシシみたいに突撃してくからさ。弓道の話って聞いた?」

「弓道部に入るって決めているって言ってましたよ。」

「それも突然言い出して、半年で逆転合格したような猛者だからね。私にはできない芸当だよ。」

「だから心配なのよ。追い込みすぎそうで。」

「でも双葉君が居てくれてちょっと安心かな。」

「僕は藤川君が居てくれてとても安心です。寂しいとき絶対に構ってくれるので。」

「そうかそうか、これからもよろしくね。」

「おーい、双葉の分と天光の分、持ってきたぞ。」

「流石藤川!頼もしいね!」

「俺には天光がおぞましいよ。」

「何よその言い方、レディに失礼では?」

仕事が始まりましたね。

いきなりフルタイムの再開はしんどいですが、意外と小説を書くエネルギーって残っているものですね。

今話も読んでいただきありがとうございました!

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