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34日目 7 真相

 クリフォードさんがゆっくりと語り出す。


「俺が初めにこの依頼を受けたのは、ニヶ月前のことだ。孤児だった俺を育ててくれたルーデン男爵を通しての依頼で、目的はこの辺りに巣食う盗賊団の壊滅」


「何!? やっている事と言っていることが真逆ではないか!」


確かにね。裏があるんだろうけど。


「指示された作戦はこうだった。まずこの一帯の盗賊団をまとめ上げ、隊商(キャラバン)を襲わせる。死人や怪我人が極力出ないよう隊商(キャラバン)に内通者を仕込んでおき、冒険者を調合薬物で無力化、投降を促して商人たちを確保。(内通者)に逃げた者や使い魔がいない事を確認した」


 鮮やかな手並み、なのだろう。


「そもそも、何故隊商(キャラバン)を襲う必要があった?」


 チャドさんが疑問をぶつける。


「ルーデン男爵へ指示を出した貴族に、華を持たせるためだと聞かされていた。隊商(キャラバン)を確保した段階で軍が現れ、盗賊を捕縛。たったそれだけの任務なはずだった」


 クリフォードさんは沈痛な面持ちだ。


「しかし軍は現れず、戸惑いながらも寝ぐらとして準備されていた洞窟へと戻った。その夜、この建物へと呼び出されたのだが、そこで待っていたのは数十人の兵士と――」


「っ! 貴様ぁ! 名を出すな!」


 先ほど豚と呼ばれた男が喚き散らす。


「ヴィクトル=デ=サントニオルという男だった」

「なっ――サントニオル侯爵の息子ではないか!?」


 うわ、思ったより大物だ。


「ヴィクトルは俺や、そこの豚を迎えるなり、『ご苦労、物資と人は8割ほど頂いていく。もう一度だけ同じことをしろ』と一方的に告げて帰って行った。一人の人間を残してな」


 それが新たな内通者役のフォルクだったようだ。


「何度かルーデン男爵に連絡を取ったが、男爵の筆跡で作戦続行を指示する手紙が届くだけ。ヴィクトルの部下が書かせているのだろう、人質としてのアピールを兼ねて」


 クリフォードが裏切れば男爵は死ぬと、暗に言っているようなものだ。


「故に今日まで作戦を続けた。フォルクや調剤をしているモーリス(錬金術師)に、そこの豚の目まで誤魔化すのは難しく、俺の監視は多分他にも――」


「それはこいつ」


 ドサリと音を立てて、気を失った一人の男が転がって来た。


「アイリス!」


 タイミングが良すぎるぜ。隠れて様子を伺ってたんじゃ無いだろうな? え? まじかよ、こっちを見ろ目を逸らすな!


「――こいつが監視か、何故わかった?」

「……冒険者の秘密、けど本当の事」


思考が読める事の説明、面倒になってない?


「それは疑っていない。怪しいと睨んでいた男の一人だ。それにフォルクの正体を見抜いて捕らえたのは、お前たちだろう? これで俺は……」


「自由の身」

「そう、そうか……」


 噛み締めるように頷くクリフォードさん。これからの事を考えて、思考に耽っているようだ。


 しかしアイリス、なんで監視者を捕まえられたの? フォルク経由?


 俺が疑問を脳内で問いかけると、アイリスが近くに寄ってきて小声で教えてくれた。


「フォルクは初め、作戦に失敗したらヴィクトル様に殺されると怯えてた。わたしはその男が盗賊団の首領だと思ってた。だから陽動を始めた時、ヴィクトルという人間を探した」


 ああ、なるほど。


「盗賊を拘束して思考を読んでも、ヴィクトルの名前を知ってる人が居なかった。怪しいと思って森を駆け回ったら――」


 一人だけ、ヴィクトルを知ってる男がいた?


「そう、『賊共の動きがおかしい。クリフォードが裏切ったかもしれない。ヴィクトルさまに報告せねば』なんて考えてた」


 そりゃ怪しい。


「戦闘中、諦めて毒を飲もうとしたから気絶させた。近くにカケルの気配がして、抱えて追って来た」


 なるほどね。だからここに来れたのか。俺たちの移動中ってことを考えると、結構前の事ですね。グッジョブです。


「それでクリフォードさん、これからどうします?」

「――盗賊共を捕え、ルーデン男爵の救出へ向かう」


 まあ彼からするとそうなるよな。


「盗賊の制圧までは同感ですが、救出は少し待ってください。先にヴィクトルに対処しないと、我々全員が狙われることになります」


「――ああ、しかし手はあるのか?」


「ええ、私にいい考えがある、です」

「…………?」

「うん」


 元ネタをタカシ本で履修しているアイリスだけは、わけ知り顔で頷いてくれている。持つべきものは相棒だな?


「さて、作戦は簡単です、まず――」

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