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28日目1 束の間の休息を求めて

 プラートゥムティラノスを討伐した翌日の朝、コンコンと、扉をノックする音で目が覚めた。


「うぅ、まだ寝てたいけど、駄目だよなぁ……」


 体を無理やり起こして、寝ぼけ眼で扉を開けると、そこにはエルフの美少女が立っていた。


「お前を起こす」


 なんだこれ? ……あぁ、アポロさんの真似か。あの時は殺すだったな。今考えても無茶苦茶だ。


「人違いだと思いますけど」


 こんなやりとりをした記憶がある。


「そう。じゃあ居ないカケルの朝ご飯は、わたしの」

「冗談じゃないですか! おはようアイリス」


 危ない。それでなくとも昨夜はギルドで軽く摘んだだけなんだ。今日は絶対に逃せない。この宿の料理、超美味いんだから!


「もう八時、朝ごはんは九時までだから急ぐ」

「まじか、パパッと準備するわ。サンキュー」


 俺は大急ぎで支度をして、宿の食堂へ向かう。


 席に着いて給仕さんに食事を頼むと、昨日の朝より豪華な食事が配膳された。


「君たち、凶暴な魔物を討伐してくれたそうじゃないか。昨日の夜は討伐作戦で食べに来れなかったようだし、これはそのお礼だ」


「ありがとうございます。ここの食事、とても楽しみにしているので嬉しいです」


「ありがとう」


 朝から中々の品数だが問題ない。美味しい食事は、いくらでも入る!


「相変わらず美味すぎる」

「料理スキル、磨くのもやぶさかではない」


 持っては居るのね。アイリスのご飯は既に美味しい。それが更に美味くなるのか、楽しみだな! 任せっきりもどうかと思うし、俺も料理を覚えよう。


 三十分程で完食し、お礼を言って宿を出た。


「今日こそはギルドで情報収集か」

「報酬も受け取る」


 事後処理として、レポートの提出などは昨日のうちに終わらせたが、プラートゥムティラノスの査定は翌日に持ち越しだった。

 Cランクパーティーが十近く参加したので配当は少ないだろうが、楽しみではある。


 ギルドは今日も混雑しており、特に掲示板の張り紙には人集りが出来ている。


「ダンジョンは封鎖中。冒険者を派遣して、大型の魔物を駆除する予定らしい」


 隣でアイリスが読み上げる。


 ダンジョンは封鎖か。巨大化した魔物は、Eランクの冒険者では倒すのが難しいからな、仕方ない。


 掲示板から目を逸らし、受付の待機列に並び待つ事数分、俺たちの番がきた。


「すみません、プラートゥムティラノスの査定はいつ頃終わりそうですか?」


「昨日の討伐に参加された方ですか? その件でしたら今夜にも終わる見込みだそうです」


 そうか、ならそれまでは町ブラと情報収集だな。


「それと申し訳ないのですが、参加者の方はギルドに到着次第、第一会議室へ案内するよう仰せつかっております」


 俺たちはまだ働くのか!? 全然観光出来ないんですけど!

 そんな事を言ったところで職員さんを困らせるだけだろうから、言いませんけど。


「カケル、目が死んでる」


「俺、殆ど休みなく働いている事に気づいてしまったんだ」


「――これが終われば、休める」


 アイリスの目も少し濁りましたね。思い当たる節があったのだろう。

 会話を聞いて若干引いている職員さんの案内で、会議室に向かった。


 会議室には、プラートゥムティラノス討伐に参加していた各パーティーのリーダーが待機していた。


「うん? リーダーだけで良いなら、わたしは資料室へ行く」


「俺一人じゃ分からないこともあるから、却下」


 言いつつ空いてる席に座り、周りの人と軽く挨拶をする。

 すると席が近い冒険者たちが声をかけてきた。


「お前達まだEランクなんだってな。早くランク上げちまってくれよ? 俺たちの負担を減らすためにも」


 Cランク冒険者は支払う報酬と、出す成果のバランスが良い。故に指名依頼も多く、大忙しのようだ。

しばらくはDランクで止めましょうかね……。


「ははは、ゆっくり上げさせてもらいますよ」


 忙しいのは嫌です。


「最近のルーキーは可愛げがないな」

「良い性格してやがる」

「根性無し」


「アイリスはなんで悪口言ったの!?」


 便乗やめて。


 何時ものやりとりで場の空気が温まってきた所へ、ギルドマスターのテッドさんが登場した。


「またせたのう。全員揃っているようじゃな?」


 テッドさんは扉を閉めて魔法を唱る。どうやら会話が外へ漏れないようにしたみたいだ。


「さて、お主たちを呼んだのは他でもない。今回の顛末について説明するためじゃ」


 おお、労働に駆り出される訳ではないのか?


「【イーリアス】や、ブラウンの森林ダンジョンでも似たような事件が起こったそうじゃの?」


「えぇ。一部の魔物が異常に巨大化したり、魔物の数が通常より増えて、場違いな怪物アウトオブプレイスモンスターまで出現しました」


 アレは大変だった。


「このダンジョンで起こったことも同じじゃ。それと四日ほど前、草原ダンジョン内で大きな魔力を感じたと、いくつか報告が上がっていたらしくての」


 確かに、森林ダンジョンと一緒だ。


「先ほど、大きな魔力を感知したと言う人間に聴取を行ったのじゃが、魔力から既存の属性を感じなかったそうじゃ。未知の属性魔法が使われた可能性がある」


「未知の属性魔法? 重力や磁力、空間なんかか?」

「その可能性が高いかの」


 そうであればまだ良い。しかし俺はもう一つ、この世界を崩壊に導きかねない属性を知っている。


「教会が最近言い出した、無属性の可能性も?」

「――それもありえるのう」


 憂慮するように、言葉を発するテッドさん。もしかしたら彼もまた、無属性魔法の真実を知っているのかもしれない。


「今分かるのはそんな所じゃ」


 俺は緊張して呼吸が浅くなっていた事に気づき、大きく息を吸う。


「さて、ここからは先のことじゃが、Bランクの冒険者たちが戻り次第、大型魔獣の駆除をしてもらう予定じゃ。お主らCランクにも手伝って貰うぞ。それまではゆっくり身体を休めてほしい。以上じゃ」


 Cランクって事は俺たちは免除っすよね? 聞いたら藪蛇になりそうなので、気配を消し黙っておく。


「わたしたちは?」


 アイリスさん!? 働きたく無いはずでは!?


「おお、主らがEランクなのを忘れておった。もちろん参加じゃ。ではまたの」


 俺の適正、贔屓目で見てもDランクが良い所なんですけど。


「成長のチャンス」


 流石アイリスさん、ポジティブの化身だ。


「はぁ、まあ仕方ないか」

「そう、誰かがやる事。仕方ない」


 こうして俺たちの参加は決定した。せめてBランク冒険者が戻るまで、この町を目一杯楽しむぞ!

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