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幕間 14〜18日目1 森林ダンジョン攻略

 俺たち【イーリアス】は今、森林ダンジョン七層を歩いている。

 四層から六層を二日で走破し、たどり着いたここ七層で、早速罠の洗礼を受ける事になった。


「あ、なんか踏んだかも」


「――カケル、注意して歩かないとダメ。ちなみに踏んだのは魔物のフン」


「まじで!?」


 うえー、なんかグニャッてしたと思ったら、よりによってうん◯かよ。てか罠じゃないな?


「匂いで魔物に気づかれやすくなる。ちゃんと洗う」


 一応マイナス効果があるって事は、罠ではあるのだろうか。俺は近くの倒木に腰を下ろし、クリエイトウォーターで靴底を洗い流す。フッ、惨めな気分だ。


「このダンジョンは平気だけど、今後も二人だと罠が致命傷になるかもしれない。罠察知スキルと罠解除スキルが欲しい」


 そうだなぁ。けどスキルの魔法書って一部を除いて軒並み高額なんだよなー。罠探知と解除も一冊で50万ラウ近くしたはずだ。


「店での購入以外だと、やっぱり宝箱かドロップだよな? プラントドラゴンで稼いだ100万ラウ使ってでも買った方が良いか?」


「罠探知と解除はEランクダンジョンのボスがドロップする。勿体無い」


 そうは言っても、ボス部屋は一週間に一度しか入れない。毎週狩っても月4回なのだ、時間の方が勿体無い気がする。


 そんな事を考えてると、アイリスが妙案を出してくれた。


「ブラウンから南のサントニオル港と、その道中にあるアルスヴァルトにはEランクダンジョンがある。三つのダンジョンを往復してスキル本を出す」


「へー! 面白そうだなそれ」


 レアドロップ狙いは、良いアイテムが出た時の脳汁がすごい。


「クラウド王国南部に居る若手の黄金ルート。このルートでいくつかスキルを稼いだあと、Dランクダンジョンがある王都へ行くのがオススメ」


「俺たちもそのルートで行こうぜ。そうと決まればこのダンジョン、パパッと攻略しないとな」


 俄然楽しみになってきた。


「ダンジョンは逃げない、慎重にやる」

「はい! アイリス先生!」


 いつだって先生は俺を正しく導いてくれるぜ。


「少し進行が遅れても良い。注意深く周りを見て」


 俺はとても用心深い男、任せて欲しい。頑張るぞ!


 それからの三日間、俺は麻痺で体が上手く動かなくなりアイリスに助けられ、毒状態になって苦しんでるところをアイリスに助けられ、眠り粉でフラフラしてるところをアイリスに助けられた。


 頑張った結果がこれだ。本当に申し訳ない。


 それでも一層あたり一日をかけて探索は進んで行った。

 そして俺がこの世界を訪れてから十八日目、九層の最奥である階段へ辿り着く事ができた。


「色々あったが、ついたぞ!」

「うん、到着」


 この連日、不意打ちで状態異常にしてくる植物やキノコ、延々と続く森林に食傷気味だった。終わりが見えるとやる気も復活するぜ!


「このままボスか?」


 現在時刻は十五時、まっすぐ階段に向かって走れば一層あたり二十分で帰れるから、アイリスの門限には十分に間に合うだろう。


「並んでるパーティーの数を確認して、五組以下なら行く」


 よっしゃ、そうと決まれば善は急げだ。

 俺は張り切って階段を下る。途中一組のパーティーとすれ違い、階下で列を確認すると、並んでいたのは四組のパーティーだった。


「セーフ!」

「うん、並ぶ」


 列の最後尾につき、軽食やポーション類で心身ともに回復しながら、ボス戦の打ち合わせをする。


「ボスはトレントだよな? どうやって倒す?」


 森林ダンジョンのボスは、樹木の魔物であるトレントが六体出現するらしい。

 普通に魔法で燃やす感じかね。弱点だし。


「トレントは地面から根を伸ばしてくる攻撃と、土魔法が厄介、短期決戦が望ましい。炎属性が弱点だけど、魔法防御力は高い」


 俺はこれを聞いて、閃くものがあった。


「アイリス、俺に良い考えがある!」


 成功率80%を誇るフラグを立て、アイリスに作戦を提案する。


「良い考え?」

「うむ、あれをこうして、――すれば、良い感じになって」

「ほー」

「そこで俺が――をボンっ! ってやれば」

「良いかも」

「それでも……だったら……する!」

「天才の所業」

「そうだろう、そうだろう」


 こうして俺達の怪しい作戦会議は終わった。頭の中で戦闘をシミュレートしつつ待つこと一時間、俺たちの順番がやって来たのだった。


 ボス部屋に入ると扉が閉まり、部屋の中央が光に包まれて、トレントがポップした。

 凶暴そうな顔が浮かび上がっている木々が、こちらを見てニヤニヤしている。

 そのトレントに向かって皮袋を投げつける俺とアイリス。


「先手必勝! くらえ!」


 投げたのは、調理用にアイテムバッグで持ち運んでいる、食用油だ。魔物の内臓を回収するために持っていた袋に小分けにしたソレを、六体いるトレントへ投げつけていく。


「よし! もう良いだろう。行くぞ、ファイヤーボール!」


 食用油にまみれたトレントに向け、火の玉が襲いかかる。

 ボッと音を響かせて、炎上し始めるトレント。


「いくら魔法防御が高かろうと、燃焼反応には意味があるまい!」


 ぶっちゃけこの魔法の世界で、化学反応が全て地球と同じように起こるかは微妙なところなんだが。少なくとも油に火はつきやすい!


「効いてるけど、燃え方が少し甘いか? ならダメ押しだ! エアブロウ!」


 初級の風属性魔法の中でも、風を発生させるだけでなかなか戦闘で役に立たない魔法、エアブロウ。

 しかし攻撃対象が燃えていれば、大量の酸素分子を送り込む凶悪な魔法に変わるのだ。


「ふはははは! 燃えろ、踊れ!」


 気分が乗ってきたので悪役ごっこに興じてみる。


「カケル、三日徹夜したときのお父さんみたい」


 えぇ……、もう二度とやりません。あの人は本当に大丈夫か? 十五歳の娘が居る年齢なのに……。


 本気でアポロさんが心配になったが、気を取り直して魔物に目を向ける。


 トレントは順調に燃え続け、パニックを起こし攻撃すらしてこないまま、一体、また一体と消滅していった。そして最後の一体が恨めしそうな絶叫をあげて消滅した後、中央に宝箱が出現した。


「やったな!」

「おー、圧倒的勝利」


 ふふ、Fランクダンジョンのゴブリンリーダーより簡単に倒してしまったぜ。


「早速宝箱をあけるか!」

「うん、期待」


 宝箱の前に座り、手を合わせて都合のいい神頼みをする。


「神さま、いつも感謝していますよ。良いアイテムを頼みます」


 宝箱を開けると、HPポーションが三つ、魔石6個、指揮棒サイズの杖が一つ、そして打撃耐性スキルの魔法書が入っていた。


「良い感じだな!」

「うん、そこそこ良い」


 アイリス先生も満足気だ。


「打撃耐性はあるから、カケルにあげる」


「まじで? この前魔法書を見にいった時、二十万くらいした気がするぞ、これ」


 アイリスのご両親、娘の安全の為なら金に糸目をつけねーな。


「うん。その代わり、杖は鑑定次第で使わせてもらう」


「それは勿論」


 魔物と戦う上で打撃耐性はかなり有用なスキルだ。有り難く頂戴しよう。


「じゃ、帰るか!」

「うん、帰る」


 こうして俺達二つ目のダンジョン攻略は、呆気なく終了したのだった。


 ブラウンの町へ戻り鑑定した杖は、攻撃魔法の威力を15%あげるモノだったので、アイリスに使ってもらう事となった。

 サイクロプスを一撃で倒せなかったのが悔しかったとは、アイリスの弁である。


 酒場で偶然居合わせたテリーさんとダンジョン踏破祝いをした後に、これからの方針について話し合いをし、明日はアイリスの家でアポロさん達の説得をする事となった。


 この町にあるもう一つのダンジョンは、C級山岳ダンジョン。今の俺達では厳しいので、ダンジョン求めて町の外に出なければならない。


 しかしそう簡単に許可を貰えるとは思えない。という事で頭を下げに行く事にしたのだ。


「明日の夕方五時ごろ、家で待ってる」


 との事なので、出来るだけ良さげなお土産を持って行こう。


「ステータスオープン」


 その日の夜、日課である自身のステータスチェックをする。十一日目のステータスがこれ。

 

 Lv22 HP101/102 MP110/112

 str25+2 vit34 int56 dex24 agi26 luk22 pt 8

 スキル

 言語理解 鑑定カス初級魔法


 そこから一週間たった、十八日目のステータスがこっち。

 

 Lv27 HP101/117 MP110/122

 str30+2 vit39 int61 dex29+3 agi31 luk27 pt 23

 スキル

 言語理解 鑑定カス初級魔法 打撃耐性


 うん。アイリスがモンスターを回してくれるお陰で、5レベルも上がっている。テリーさん曰く、かなり早いペースらしい。


 冒険者ランクDの条件は30レベル到達、Eランクダンジョン3つ以上の攻略と、討伐収集依頼をそれぞれ十回ずつ、護衛依頼を依頼人の評価[高]で3回クリアらしいので、レベル条件はもう少しで達成出来てしまう。嬉しいぜ。


 話をステータスに戻そう。初級魔法のレベルも軒並み上がっているが、特出すべきはファイヤーボールとファイヤーアローが、レベル3に上がった事だろうか。

 ダンジョンの性質上、大物を倒すのは火魔法に頼っていたので、他の魔法よりレベルが高い。


 残っているステータスポイントは、str int agiに振る事にした。テリーさんに、特化型は大きい組織にでも所属していないと運用の幅が狭く厳しいぞと、アドバイスを頂いたのだ。


 Eランクダンジョンを巡っているうちは平気だろうが、上を目指すなら多くの戦闘で役立つようにした方が良いとの事だったので、刀と相性が良さそうなstrとagiにした。


 ロマン型好きの皆、すまぬ。死にたく無いし、アイリスの役にも立ちたかったのだ、許してくれ。


 そして振り分け後のステータスがこうなった。


 Lv27 HP101/117 MP110/122

 str40+2 vit39 int65 dex29+3 agi40 luk27 pt 0

 スキル

 言語理解 鑑定カス初級魔法 打撃耐性


 MMORPGなら育成失敗を確信するステータスだが、この世界では問題ないはずだ。多分。


「よし、明日は良いケーキとワインを買って、アイリスの家だ。早めに寝とこう!」


 声に出して気合を入れる。ちょっぴり不安だが、なにかあっても死ぬわけでは無いのだ。死ぬわけじゃ無いよな? アポロさん、俺はあなたの良心を信じているぞ。


 眠りの中でその日見た夢は、とびっきりの悪夢だった。

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