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12日目3 エピローグ

 プラントドラゴンの解体が終わり、ダンジョンを脱出する為に階段へ向かうと、そこにはテリーさんやエレクトラさん達が待ち受けていた。


「あれ、お母さん?」

「アイリス! 無事だったのね!」


 アイリスに駆け寄って、ギュッと抱きしめるエレクトラさん。うーん、母の愛。


「くるしい。あと恥ずかしい」


 照れつつも、何処か安心したような雰囲気だ。


「カケルも無事だったか。この階層で異変が起きているとの報告がギルドに入ってな。偶然居合わせた俺達【ブラウンソウル】が依頼を受けて調査に来たんだ」


 アベル君たちは約束を守ってくれたようだ。


「お母さんはなんで?」


「報告が耳に入ったらしい。娘が今日向かった場所だから、一緒に行くと言って聞かなかった」


 アイリスのことだもの、石に齧り付いてでも一緒に来た事だろう。


「それより、この時間までずっと三層に居たんだよな? 何が起きてるか、わかる範囲で報告してくれるか?」


 気づけば十六時を回っていたようだ。


「うん。カケルがする」

「俺なんだ! いやするけど!」

「嘘、わたしもする」


 要らんウソやめて。けどいつも通りのアイリスで安心するわ。気が抜けてきたぜ。


 その後、三層で起きた事を一通り説明した。


 他のパーティーを救援して回ったことは褒められたが、プラントドラゴンと戦って倒した事は、叱られましたね。

 思ったより危険な魔物らしく、無謀な挑戦だったようだ。トホホ。


「しかし、その年でアレを倒せるのか。エレクトラはどんな教育をしてるんだ」


 ドヤ顔でアイリスを抱き締めながら、頭をナデナデするエレクトラさん。


「カケルと一緒に倒した。作戦勝ち」


 ふへへ。ドヤ顔をしようとしたが、顔がニヤけちまうぜ。


「戦闘の詳細は後日ギルドに提出しろ。素材は回収したんだな?」


「眼と魔石、あと真ん中の真樹は取った」


「素材として価値が高いのはそれであってる。じゃあ帰って良いぞ」


 帰還のお許しが出た。やったぜ。一日中走り回ってヘトヘトなんだ。

 けどこの階層で何が起こっていたのかも気になる。


「調査の結果なら後日説明してやるから、今は気にせず帰れ」


 それは有り難い。お言葉に甘えてさっさと帰ろう。


「なら、私が送っていくわね」


 エレクトラさんが保護者を名乗り出る。


「はぁ……。まあギルドに報告する人間も必要か、仕方ねぇ」


 ため息混じりに了承するテリーさん、苦労人だ。


「じゃ、みんな帰りましょ」


 エレクトラさんと共に、総勢十名と一羽が地上へ向かう。


「帰還届けを出したら、私が乗ってきたギルドの馬車で帰るわよ」


 そうだった。帰還届を普通に忘れそうになったわ。危ないぜ。


 脱出時は特にトラブルも起こらず、順調にブラウンの町まで帰ることができた。


 ギルド前で馬車から降りると、それぞれが別れの挨拶をしていく。


「本当にありがとうございましたー。今度みんなでお礼に伺いますねー」

「ピヨピヨ」


 最初はライアとぴーちゃんだ。

 お辞儀をするライア頭で、ぴーちゃんも一緒にお辞儀をしている。可愛すぎてやばい。動画投稿サイトにアップロードした日には、天下を取るレベル。


「助かったっす」

「感謝致します」


 お次はプロシネとタリア。

 三人娘たちはそれぞれ感謝を述べた後、帰路に着いた。


「俺たちも世話になった。今更かもしれないが例の件、聞こえなくなった事を知り合いに伝えておく」


「ありがとう、気にしないで良い」


 ツッパリリーダーは心のリーゼントを辞めたようだ。とても丸くなっている。もうマル◯メくんだな。


「――俺は心を読めないが、お前が変なこと考えてるのはわかるぞ」


 !?


 全人類にバレるじゃん。ポーカーフェイスのスキルとか、ダンジョンから出ないかな?


「顔に出るのが長所。伸ばしたほうがいい」


 アイリスに自己肯定感を上げて貰っちゃったぜ。


「そ、そうかな?」

「うん」


 個性として、大事にした方がいいのかな?


「騙されて……いやいいか。とにかく世話になった。ではな」


 何かを呟いた後、感謝を伝え去っていくマル◯メリーダー。


「アイリス、ありがとう。またね」

「手間かけさせたな。礼は必ず」

「命の恩人よ。ありがとう」


 他のメンバーもお礼を言って、リーダーの後を追いかけていく。

 うーん、今日は良いことをしたぜ。


 感慨に耽っていると、アイリスと幼馴染達のやり取りを見ていたエレクトラさんが口を開いた。

 

「あの子達と、仲直りできたのね」


 万感の想いが籠ったような、静かに、しかし心に響く声だった。


「うん。もう大丈夫」


 そう言ったアイリスの言葉に、顔を逸らすエレクトラさん。

 アイリスは、そんな母親に近寄っていく。


「そう、良かったわね」


 振り絞った声は、少し湿って聞こえた。


「うん、良かった」


 小さい頃から、ずっとそうしてくれた母と同じように、今度は自分から、母親を抱きしめるアイリス。


「今までありがとう。お母さん」


 その言葉を聞いたエレクトラさんの肩は、もう隠せないほど、大きく震えていた。


 この日、この星で起きていた小さな悲劇が、ハッピーエンドで終わりを見せた。


 俺は願わずにはいられない。これから先に訪れる彼女達の人生が、スパイスの効いた幸福な物語である事を。

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