表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/67

7日目3 一層攻略とランクアップ

 アイリスの後ろを歩くこと数分、俺たちは目的地である湖に到着した。


「おー、小さいって聞いてたけど、想像よりでかい」


 湖というモノを舐めていた。一周まわれば一キロ以上はあるんじゃないか?


「一層にいる魔物の水源のひとつ。だからここで狩りをする人も多い」


 湖の畔には、二十組近いパーティーが見える。森から魔物を釣って狩りをしていたり、火を焚いて食事の準備をしていたり……テントを張ってバーベキューをしてる人達もいる。


「キャンプかな?」


 優雅すぎる。お前らの手に握られたカップ、お酒じゃないだろうな!


「あそこ空いてる、場所取りして休憩」


 人の少ない場所にシートを広げ腰を下ろし、一息ついた。


「お弁当だして」

「はいよ」


 俺は周りに見られないように、背嚢から出すふりをして、アイテムバックからお弁当を二つ取り出す。


「あったかい。最高」

「せやな」


 実は昨日の内にアイテムバックをアイリスに渡しておき、エレクトラさんに作って貰ったお弁当を収納してあったのだ。


「この茄子の煮浸し、めっちゃうまいな」

「うん、こっちのカラアゲもおすすめ」

「ほう……」


 あ、うまい。サクッと楽しい食感。滴る肉汁がジューシーで、口の中に旨味が広がる。醤油ベースの味にニンニクや生姜の風味も感じる。お米が進むぜ。


 そうそう、異世界モノで定番のお米や醤油探しだが、必要無かった。過去に日本人と思わしき人が各国で熱心に伝えたらしく、ここクラウド王国でもそれなりに普及している。流石にメインは麦製品だけどね。


「ちょーうまいな」

「うん。これから毎日、ほかほか弁当」


 普通にうれしい。エレクトラさんの作るお弁当、日本的なレパートリーで凄いホッとする。


 ワイワイと話しながら食事を進め、


「ごちそうさまでした!」

「……ごちそうさま」


 大満足な食事を終え、狩りに戻る。


「私が釣ってくるから、この場で待機」

「かたじけない」


 問題ない、と返事を残してアイリスが森の中に消えて行った。


 一人になり周りを見渡してみると、全体的な年齢層の低さが目についた。二十歳を超えていそうなのはバーベキューをやっているパーティーのみで、他は十六歳前後だろう。


「どれだけの人間が十年後も冒険者をやってるのかな……」


 冒険者のランク分布は、F10%E20%D35%C25%B9%A以上が1%程度で推移している。Dランクまでは規定の条件をクリアすれば上がれるが、Cランク以降は試験が必要になる。上位ランクの冒険者になれるのは、ほんの一握りなのだ。


「皆元気にやれてると良いな」


 少し感傷的な気分で思考に耽っていると、森からアイリスが、魔物を引き連れ飛び出して来た。


「連れて来た、森に背を向けて魔法を撃つ」

「りょうかい!」


 感覚がぐっと現実に引き戻され、身体に熱が入る。


 アイリスが連れて来たのは、今日初戦で戦ったグリーンベアーだ。あの時は魔力を込め過ぎていた。

 森側に走りながら、今回は適切な量になるよう神経を尖らせる。


「いくぞ! ファイヤーアロー!」


 配置についた俺は、通常の三倍程度の魔力を込めて魔法を放つ。その狙いは正確にグリーンベアーの頭を捉えていた。


「ヴォオオオ」


 咆吼をあげて倒れるグリーンベアー。やったか!?

 フラグを立ててみたものの、倒れたまま動かない。


「うん、いい魔力量。狙いも完璧」


 やったぜ。しかし弱点属性って凄いな。Eランクに分類されるグリーンベアーが、初級魔法で一撃とは。

 ファイヤーアローは消費魔力が低く、MP2で使える魔法で、三倍込めてもMP6だ。非常に燃費が良い。


「ゴブリンは属性が無いから相性を気にしないで良かった。このダンジョンからは意識する」


「了解。戦う場所さえ選べばかなり有効そうだ」


 その殆どが森、それ故に火魔法は使いづらいが、うまく工夫してやっていこう。


「一回層にいる魔物の種類は後二種類。ブラッディキャットとフォレストラット」


 資料室の本にも載ってたやつだな。


「この二匹は隠れながら奇襲をかけてくる。カケルが前を歩いて警戒の練習」


 という事らしい。俺たちは荷物を背負い直し、湖から離れていく。


「警戒のコツってあるか?」


「んー。自分ならどんな所で奇襲するか、考える」


 俺ならか。木の影に隠れるなんてのは安直過ぎるし、後ろから忍び寄ろうにも、落ち葉を踏む音は誤魔化せないだろう。


 森は薄暗く、木の葉や枝の揺れる音はいつでする。ということは……。


「上っ!?」


 何かが飛びかかってくる気配に気づき、咄嗟に身を屈める。次の瞬間、キャン! と矢を放つ音がし、上から襲いかかるブラッディキャットを射抜いた。


「び、びっくりしたぁ」


 肝が冷えたぜ。しかし飛びかかってくる大山猫サイズの魔物を一発とは、すごい。


「上からと気づいたのは良かった。ただ考えてる時、警戒が疎かになってる。要注意」


 うーむ、考え込むのが悪い癖だ。集中しよう。


 気合いを入れ直してからの狩りは、順調だった。フォレストラットも早々に見つけて倒したぞ。木に穴をあけて、奇襲のため待機をしてるところを、逆に奇襲してやったぜ。


 他の魔物に対しても、魔法を外すことはあれど、安定して狩れた。込める魔力量を最少にして、刀で止めを刺したりもした。


 長いこと歩いてると採集対象もそれなりに見つけ、MPポーション向けのキノコだと思って採取しよとしたら、毒キノコだと注意を受けたりもしたな。


 途中休憩を挟みながらも狩り続けること五時間ちょっと、狩りの終わりをアイリス先生が宣言した。


「今日はここまで、一層はもう大丈夫。明日は二層」

「ういー」


 ふぅ、相変わらず超疲れるぜ。ここ二年は運動なんて学校の授業以外、して無かったからな。

 筋肉痛はヒールで治せるとはいえ、超回復で筋肉が大きくなるのを阻害してしまうから、出来る限り使いたく無い。


「戻る、あっち」


 正直今どこら辺にいるのか、かなり怪しい。一応、気をつけて周りをみてたんだけど……要訓練だ。今はついて行こう。


 ロッジで帰還報告をし、無事に乗合馬車の席も確保して、十九時にはギルドに帰る事が出来た。


 今は薬草とグリーンベアーの胆嚢、MPポーションになる活力茸というシイタケみたいなアイテムを、常設依頼として納品する手続きをしている。


 今日はカインさんが居なかったので、ふくよかなおじさん受け付けの列に並んだ。


「アイテムはこちらの木簡と共に、買取カウンターにお持ちください。納品が終わり次第、クエスト完了になります。本日中にランクアップされる場合はお手数ですが、もう一度こちらの受付までお越しください」


 ということらしい。


「行こうか」

「うん」


 若めのお兄さんが担当する買取カウンターで、今日確保したアイテムと魔石を出すこと、三分。


「こちらの買取で23400ラウになります。こっちが依頼完了の証明になる木簡です。先ほどの受付で担当者に渡すと、今日中にランクアップが可能になります」


 やっぱ収集アイテムあると収入が全然違うな。お金の余裕は心の余裕だ。


 ありがとうござましたー。と互いにペコペコ挨拶した後、


「これ、お金半分。今からランクアップしに行くけど、先に帰るか?」


と確認を取ると、


「パーティーメンバー、当然見ていく」


 という事らしい、嬉しい事言うね!


 先程のふくよかおじさんのところへ戻り、木簡とギルドカードを提出すること、およそ二分。


「ギルドカードの更新手続きが終了しました。ランクアップ、おめでとうございます」


「ありがとうございます!」

「カケル、おめでとう」

「ありがとう、アイリスのおかげだ!」


 今日俺は、異世界で一歩前進した。アイリスを筆頭に、多くの人々に助けられて。


 人の本質は言葉ではなく行動に出るという。だからこそ俺は、これからたくさんのモノを返して行く。


「今日はお祝い。三十分くらいだけど、酒場で乾杯」


 時計の針は十九時二十分を差し示している。アイリスの門限まで後四十分だ。


「よし!じゃあ急いで席の確保だ!」

「そうする」


 この日、この短い時間にワイワイとはしゃいだ事は、一生忘れ無い。

 そう思えるくらい、胸がいっぱいになる時間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ