表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/67

7日目2 森林ダンジョン一層

 洞窟に入り歩く事三分。下り坂を進んでいくと、そこには広大な森林が広がっていた。


 天井は外のように明るく光を発し、風も吹いている。洞窟の反対側に抜けたとしか思えないが、ここは間違いなくダンジョンの中だ。


 俺もオタク向けコンテンツを見ていなかったら、中々信じられなかっただろう。


 ダンジョン内の気候は外と連動しており、外で雨が降れば雨が、日が暮れれば夜が訪れ、冬になれば雪も降る。

 とはいえダンジョンの生物を傷つけるような天候にはならないので、ここの魔物は外に出ようとしないのだが。


「あっちにグリーンベアーが居る。倒す」


 ふとアイリスから指示が出た。俺にはまだ見えないが、どうやら早速魔物狩りらしい。

 新魔法を試す時が来た。


 足音を殺してアイリスが指差した方向へ移動する。何かを削るような音が聞こえたので、木の陰に隠れて覗き見ると、緑色をした熊が、大木を使って爪研ぎをしていた。

 木の抉れ方がえぐいんですけど……。


 熊の体長は三メートル程で、配色は緑の無地だ。

 ベアー種は警告色に近い程強いと言われている。これなら問題なく戦えるはず。


「始めるぞ?」


 俺は荷物をそっと置いて刀を抜き、アイリスに確認をする。


「うん」


 ここは森の中だ。枯れ葉も落ちている以上は、グリーンベアーの弱点属性である火の魔法はまずい。少なくとも資料室で読んだ本では非推奨だった。

 だから今回は覚えたての風魔法でいかせてもらう。


「ウィンドカッター!」


 放たれたのは風の刃。アイリスがサイクロプス戦で使った魔法だ。あの時はBランク魔獣の強靭な肌と魔法防御を前にダメージを与えられなかったが、今回は効果が出た。


「ヴォー!」


 胴体から血飛沫をあげ、驚きと痛みで混乱しているようだ。致命傷には至らなかったが、先制攻撃としては悪く無い。

 三メートルもある熊に、刀で接近戦を仕掛ける自信はないので、魔法で仕留めたい。


 立ち上がり、襲撃者を探すグリーンベアーと目があった。


「ウィンドカッター!」


 二発目の魔法を放ったのは、恐怖から。先ほどより魔力を込めたウィンドカッターは、グリーンベアーをズタズタに切り刻んだ。


 血煙を上げ倒れるグリーンベアー。


「カケル、緊張すると魔力を多く使う癖がある」


 なんの反論も無い。実際に二発目のウィンドカッターは、基礎消費魔力がMP3なのに対し、15くらい消費している。通常の五倍も魔力を消費しているのだ。


 俺の最大MPは現在106、八回も戦闘出来ない計算である。


「初めて戦う相手だと仕方ない面もある。次戦う時から減らせばいい」


 なんか優しいな? やさしいやつ、やさしいせかい、やさいせいかつ。


「変な事考えたないで、解体。ベアー系の胆嚢は薬の材料。毛皮も買取はあるけど、安いからいらない」


 俺、顔に出やすいんだろうが? ビリーさんにも同じツッコミをされた事がある。今度からポーカーフェイスの練習をしよう。


 さてと、気を取り直して解体だ。勉強の成果を生かす時!


 解体用のナイフで腹部の中央近くを割いた。胆嚢を切り出して皮の袋に入れる。そして魔法袋に収納すると、今度は心臓を切り裂いて魔石を取り出す。こっちは背嚢にいれておこう。


「終わったぞー」


 クリエイトウォーターで手を洗い、汚れを落とす。


「次、あっちにマッドディアーが居る。ツノが薬の材料だけど、供給過多。一欠片だけで良い」


 アイリスさんこれ、気配察知系のスキル持ってますね。サイクロプスに娘が襲われたと聞いて、買い与えたのかな? それともあの時は索敵範囲が届いて無かっただけかな。

 どちらにしても今は有り難い。どんどん狩っちゃおうねー。


「了解」


 返事をすると、先ほどと同じように忍び寄る、スニーキングミッションだ。


 しかしディアー系は気配察知能力に優れているらしい。肉眼で確認出来る距離まで来た頃には、相手もこちらを視界に捉えていた。


 木の間を器用に走り、迫ってくるマッドディアー。

 魔法を放ったとしても、間にある木々が邪魔で当てる事は難しい。


 刀を鞘から抜き、中段に構える。マッドディアーの体重は概ね六十キロから八十キロ。幸いな事に遮蔽物が邪魔でスピードは出ていない。


 それでも地球に居た頃なら撥ねられて大怪我を負っただろうが、今ならやつの攻撃も躱せる。


「ほっ!」


 木を背に、マッドディアーをギリギリまで引きつけてから、ツノの脇を潜るように避ける。すると狙い通りツノが木を叩き、深々と刺さって止まった。


「今!」


 狙うは胴体の前方にある心臓だ。後ろ足に蹴られない様に横から刀を突き刺す。


「キュイイイィ!」


 鳴き声を上げるマッドディアー。心臓の位置を見誤ったのかと、もう一突き。これが止めとなって、マッドディアーから力が抜けた。


「MP消費無しなのはとても良い。獲物の傷も少ない。次からは一撃で仕留められそう。合格」


「お褒めに預かり光栄です」


 一発合格だ。多分この階層の戦える魔物全部で合格貰わないと次に進めないからな、頑張っていこう。


「この一層目の魔物達って、倒すコツはあるか?」


 調べた限り、第一層は動物系の魔物しか出ない。


「んー、ここら辺の魔物は、首を落とすか心臓を止めればいい」


 それは、そう。


「ウィンドカッターがかなり有効、刀も特攻」


 鹿の太い首とか、落とせる気しないんだよな。日本に居た時の常識に縛られてるんだろうか? 次は試してみるか。


「この先に開けた水場がある。火の魔法が使えるけど、他のパーティーも居るから、効率が落ちる」


 あーね。火魔法がどれくらい効くのか試してみたいから、一回行くのはありかもしれない。他のパーティーが居るなら休憩も出来るだろうし。


「後で一度、火魔法を試しに行って良いか?」


「うん、そうと決まれば次はあっち。多分フォレストウルフのはぐれ個体」


 ウルフ系は群れる魔物だ。それが一匹しか居ないなら、運が良いか? 三十秒ほど指示された方向に歩くと突然、緑がかった黒色の狼が飛び出してきた。


 ディアー系やベアー系と比べると小さいので、恐怖を感じない。相手の武器は爪と牙のみ、間合いは俺の方が圧倒的有利。


 けど焦らない。相手の踏み込みに合わせ間合いに入ったところを、斬る。


「ギャンッ」


 頭に入った一撃は、大きなダメージになったようだ、フラフラとしているところに止めを刺す。


「群れれば違うんだろうが、一匹だと余裕だな」


 魔石を取り出しながらアイリスに話しかける。この作業も慣れたもんだ。


「そう、低ランクの狼は群れなきゃ弱い。けど二メートルを越してくると一匹でも厄介。油断は禁物」


 やべーよな、クソデカ狼。けどモフモフしてて可愛いなら、一緒に旅するのもやぶさかではない。さっきのはダメだ。目が血走って、涎をだらだらと垂らしていた。


 魔石を取り出す作業が終わり、血も洗い流した。


「アイリス、終わったぞ。次はどうする?」


「あの辺、ポーションの材料になる薬草。採集する」


 お、ラッキーだ。一層は人の往来が激しいからか、薬草類は採り尽くされてる事が多い。全部とってもどうせ生えてくるからと根こそぎ持ってく、けしからん奴が多いんだよな。


 群生していた白い花の咲く薬草、百薬花。HPポーションやMPポーション、毒消しポーションなどの材料にもなることから、需要は高い。


「こんなもんか? 一帯にいくつか残すのがマナーなんだよな?」


「そう、これだけ残してれば平気。次はあっち、ボアが居る」


「あいよ」


 このイノシシ戦、ウィンドカッターで目を潰したは良いが、目が見えなくなってから無茶苦茶に暴れ回ってしまい、体力切れまで待たねばならず、アイリス先生チェックで不合格だった。


 その後オウル系の魔獣と小さい毒蛇の魔獣をウィンドカッターで倒したところで、休憩の合図が出た。


「さっきの水場に行く、小さい湖があるところ。火魔法も試す」


 俺が先頭になり自分たちが通ってきた道を戻っていると、歩く方向の間違いを指摘をされてしまった。


「そっちじゃない、あっち」

「まじ? あの木の形、見覚えあったんだけどなぁ」


 自分なりに目印を決めていたから、ショックだ。


「それは一個前のあそこ、似た様な木がある」


 むむむ、独創的でツッパってるなと思っていた木が、まさかこんな近くにもある没個性ボーイだったとは……。

 簡単に出せる個性は他の誰かもやってるもんだな。


「また変な事考えてる、あっち行く」


 またバレてる。顔をペタペタ触って確認するも、自分では良く分からん。


 今は気にしても仕方ないかと、置いて行かれ無いよう、先を歩くアイリスを追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ