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4日目3 雑貨にて

 武器を購入すると、そのままアイリスおすすめの雑貨屋に入る。


 歯ブラシや石鹸などの日用品を購入している時、丁度良いタイミングだと思い、風呂の悩みについて相談することにした。


「アイリス、ここら辺に公衆浴場ってあるのか?」


 真剣な表情でキツネの人形を見つめているアイリスに問いかける。


「ある、各地区毎に設置するのが義務」

「あるのか!」


 やったぜ。町やギルドで酷い臭いのする人と出会わなかったので、もしかしたらと思っていたが。


「火魔法と水魔法で作ったお湯を、天井の穴から流すシャワーの時間もある」


 まじか!流石ファンタジー世界、便利に工夫してるな!


「アイリスも良く行くのか? ルールとかあるなら教えて欲しいんだけど」


「わたしは家にお風呂があるから滅多に行かない。体を洗ってからお風呂に入る。走ったり泳いだり禁止。平日は300ラウ、光の日は無料」


 日本の温泉マナーと変わらなそうだな。この世界の曜日は属性と同じで、火、水、風、土、闇、光の日があり、無の日が加わって一週間を構成している。


「へぇー、家に風呂あるの良いな! おれも今日早速、公衆浴場に行ってみるわ」


「うん。二十三時までやってるけど、シャワーがあるのは三時間毎、十三時からの四回」


 ちなみに地球と同じ二十四時間で年三百六十五日、四季もあるから地軸の傾きもある。これ別次元の地球とかじゃないのか? 月の色が変わるのは気になるけど。

 星は金星が無いのはわかったが、そもそも知識が無さすぎて無理だった。


「タオル買った方が良い。あと荷物用の桶」


 ああ、盗まれないように衣類は目に見えるところに運ばないとか、盲点だった。


「さんきゅー、助かるよ」


「うん。カケルは時々ぼんやりとしてる、気をつけないとだめ」


 駄目に該当するルールのあるゲームがこの世界にもあるのかなと思考が逸れていると、


「ほら、ぼーっとしてる」


 確かに、注意散漫だったかもしらん。敷居を跨げば七人の敵ありと、昔の人は言ったらしい。気を引き締めていこう。


「気をつけるよ。さて、他にこれから必要になるモノあるかな?」


 俺の頭と知識では、日用品とポーションなどの消耗品以外に、アイデアが浮かばない。ここは幼少期より冒険者を志望していたアイリス先生にご意見賜ろう。


「基本的には初心者セットの中身を真似すればいい。個人的には深めのスキレットと、香辛料がおすすめ」


 あー野外料理用か。確かに初心者セットに小さめの鍋と塩はついていたけど、フライパンと香辛料は無かったな。アイテムバックもあるんだ、ちょっと大きいモノを買っても良いだろう。


 アイリスに礼を言って、大きめのスキレットを選んでいると、店主の親父さんが声をかけてきた。


「坊主、冒険者をやっているなら、そのサイズだと持ち運びが不便だぞ」


 突然声をかけられてアワアワしつつも、誤魔化す。


「いえ、これは持ち歩かない用なので大丈夫です」


 実は魔法袋マジックバッグ、この世界で使ってる人を未だ見ていないのだ。


 時空間魔法が失われている事を考えると、現存するのは古代の遺産か、ダンジョン産あたりだと思われ、貴重品の可能性があるので隠しているんだ。


「ほーん、そうか。普段から自炊をしておくのも悪くない。それならこっちの道具もおすすめだぞ」


 話が変わった事にホッとする。親父さんのおすすめを一通り聞いた後、アイリスの元へ戻った。


「宿で料理するの?」


 うん、しない。アイリスなら別に話しても良いかと、マジックバッグの存在について説明する。

 世の中のマジックバッグ事情も知りたいしね。アイリス先生、解説お願いします。


「マジックバッグはCランク以上のパーティーなら、持ってる事が多い。けど大概は容量が少ないし、時間も止まらない」


 へぇ、けど持ってるだけですごい目立つって事は無さそうだな、安心した。


「A級以上の冒険者は大容量のバッグを持ってる事が多いけど、中の時間が止まるなんて話は、聞かない」


 この時間停止もの、凄い貴重かもしれない。


「国や貴族、大商家なんかは輸送用に沢山かかえてるけど、時間が止まるなんて話は、王家のだけ」


 めっちゃヤバいやつやん!


 おおお、雑に内ポケットに入れてるの怖くなって来た! 四十五リットルの容量とはいえ、大変貴重なものらしい。出来るだけバレないようにしよう。


「入る量が少なくても貴重、二人でひみつ」

「あ、あぁ、頼む」


 なんだろう、二人だけの秘密ってちょっとドキッとするな? 将来仲間が出来れば、共有する相手も増えるんだろうけど、少し寂しい気もする。


「後でわたしの魔道具も入れとく」

「そうなの!?」


「うん、便利なのたくさんある」


 そういう問題なんだろうか?


「いや、正式にパーティー組んでるわけじゃないし、普段組んでる奴とかいるんじゃあないのか? そっちと行動する時大丈夫か?」


 出会って間も無い俺に、これだけ親切に色々教えてくれるのだ。大人気生物、引っ張りダコさんだろう。


「誰とも組んで無い。カタナ買わせたのもわたし、カケルと組む」


 なんという事でしょう。女の子にパーティーのお誘いを受けてしまったではありませんか。いやお誘いっていうか決定事項の報告か? なんだって良いんだ!人生初めての経験、心が浮つく、有頂天だ! けど。


「良いのか? レベル差もあるし、ランク差もあるだろ? 知識も不足してるし、迷惑かけると思うぞ」


 組んでくれるのなら嬉しいが、力量差がありすぎてもはや保護者だ。


「良い。ビシバシ鍛える。あとランクはEランクだから、あまり変わらない」


 鬼軍曹アイリス再び! こわいぜ。

 冒険者ランクがEなのはちょっと以外だ。Bランクの魔物を倒せるレベルだからな。


「十五歳になるまで冒険者にさせてくれなかった。まだ一ヶ月の新人、お似合い」


 あぁ、過保護な両親の事だ。強く育てつつも目の届く範囲からは出さなかったのだろう。気持ちはわかる気がする。


「じゃあ、パーティーお願いして良いか? 出来るだけ早く追いつくために頑張るわ。よろしくな!」


「うん、よろしく。倒れてもヒールするから大丈夫」


 最後にくっそ不安になるような言葉が聞こえたんだが。

 何はともあれ、この世界で初めて心強い仲間を得た。内心嬉しさでニヤニヤしている。


 異世界に来て、ちょっとだけ感じていた心細さを忘れるくらいには、喜んでいる俺であった。


「さっそく登録、ギルドに行く」


 そういって歩き出すアイリスに、俺は慌ててついていく、少し胸が温かくなるのを感じながら。

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