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蓼食わぬ犬

作者: blue_almond

 私は言うなれば、気の抜けたビールであった。それがどこぞの誰かさんの飲み残しであったならばまだ同情の余地もあったろう。―――同情? 憐憫。見下げてくれるな。それはほかでもない、私が捨て置いたビールである。

 私が私の残したビールを飲んだ。その何がおかしいというのだ。責任、を果たしたまでだ。―――自業自得? また上手いことを言う。美味いのはビールだけにしておきたまえ。―――そんな顔で見てくれるな。何も君に飲ましたというわけでもあるまい。お目汚しは、それは、失礼しました。だけど君も人が悪いよ。君と離れたくない。その私の気持ちを、知らないとは、言わせないよ。もやは私が好むと好まざるに関わらず、それはそうなのだ。離れられない。

 飲み直す? ああ、それは、いいね。

 乾杯。

 宴もたけなわ竹中直人。いやあ、飲んだ、飲んだ。親しい友と、話をして、酒を酌み交わす。最高の夜だ―――おい君。おい、君。それは、やめておきたまえ。そのビールはもう、気が抜けて―――。

 君―――。君。

 あんまりじゃないか。

 どういう心積もりだい。からかっているのかね? 苛立って、いるのかね―――?

 兎にも角にも。それは、私が飲もう。気の抜けたビール。私の専売特許だ。くれてやらない。

 飲み足りないのならばそこ、そうまだ冷蔵庫に入っているよ。それを飲みたまえ。エビスか? え? サッポロ? そうら。

 ゴク、ゴクン。

 ―――うん。あまり美味いと言える代物ではないことは、確かだね。悪かったよ。悪かったけども。便所に捨てるなんてそんな、勿体無い。それこそ愚の―――ああ、そんなに掻きむしっては、いけないよ。―――本当に。本当に、申し訳無く、思っているのだ。虫刺されに関しては、後日―――。

 だから、そんな顔で―――いや。悪かった。だけどそれは虫が、良くない。

 ―――なんですって。飲み直す? いや、もう、堪忍。

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