第1話
戦いのスキルを極めた者だけに与えられる称号、それが、『バトルマスター』。
そんな、『バトルマスター』の中でも、さらに選ばれし者だけに与えられる称号、それは、『バトルマスター・オブ・バトルマスター』だ。
剣が振り下ろされる。血が飛び散る。
魔法の炎が放たれる。地獄の業火が、敵を焼き尽くす。
一人の男が笑う。その男の名は、
ケーニヒ帝国 第6代皇帝
最強の、そして最凶の暴君 ゲオルグ
『バトルマスター・オブ・バトルマスター』というゲームの世界に似た世界に迷い込んだ、主人公、碧。
その戦いの物語が、今始まる。
舞台となるのは、ケーニヒ帝国。中央帝都ガイウスを中心とするミッテ・ケーニヒ地域と、いくつかの地域に分かれる。
そのうちの一つ、ベルン地域にある辺境の村から、物語は始まる。
人々はよそ者を受け入れず、ひっそりと生活していたのだった。しかし、そんな小さな村にも、帝国の支配の影響が・・・。
俺は今、戦いの旅に出る。
この世界は弱肉強食。戦いに勝たなければ、明日は無い。
戦いのスキルを全て究めた者に与えられる称号、
『バトルマスター』
全ての武器、魔法、技のスキルを究め、なおかつ全ての対戦相手に勝利し、最強となった者にのみ与えられる称号、
『バトルマスター・オブ・バトルマスター』
しかし、その称号を手にした者は、いまだかつて、誰一人いないという。
なぜなら、戦いに負けることは『死』を意味するからだ。
俺の名前は、俺の名前は・・・。
どこで生まれたのかも定かではない、素性の知れない孤児として過ごしてきた。
「本当に謎めいているな。この国ではなく、別の国で生まれたという噂もあるし。」
別の国、と聞いて、日本という国名が思い浮かんだ。そして、『碧』という名前が思い浮かんだ。
日本の、都内某所で、俺は生まれ、碧と名付けられた。
小さい頃からゲームが好きで、小学1年生の誕生日プレゼントにゲーム機とゲームソフトを買ってもらった時は、嬉しかった。
それ以来、ゲームの面白さに、すっかり取りつかれてしまった。暇さえあればゲームをしていた。
新しいゲームソフトが発売されると、すぐ飛び付いた。そしてまた、他の趣味などには目もくれず、ゲームで遊びまくっていた。
中学に入ると、ますますゲームに夢中になり、毎日ゲームのことばかり考えるようになる。
そんな中で出会ったゲームのタイトルが、
『バトルマスター・オブ・バトルマスター』だった。
今までで一番ハマったゲームが、このゲームだ。
そのおかげで、勉強にも、運動にも身が入らなくなり、友達との話題も、ゲームの話題ばかり。
ちょうど思春期で、女子との恋愛にも興味を持ち始める時期だというのに、女子と話をする時も、ゲームの話題ばかり。
そんな俺を見かねた両親が、カウンセラーに相談するというところまで深刻化した、俺のゲーム依存。
カウンセラーのところへ行くことになった。
「あなたは、ゲーム依存症ですね。」
ゲーム依存症、という診断を受けたのだった。
「ゲーム依存症は完治はしません。ですが、まずはゲーム以外の、別の楽しいことを考えるようにすることです。」
はあ?ゲームよりも楽しいことなんてあるのかよ、と、その時は思っていた。
とりあえず、近くのコンビニに買い物に行くことから始めることにした。
コンビニには、何でも売っている。ゲームの攻略本や、ゲーム雑誌の方に目が向いてしまうこともあったが、有名人が表紙になっている雑誌などがあると、読みあさるようになった。
次に俺は、買い物という楽しみを手に入れた。
ようやく落ち着いてきた矢先、いつものように買い物に行ったコンビニに、暴走車が突っ込んだ。
くそっ、なぜだ、俺の人生は、こんなところでおわるのか・・・。
覚えているのはそこまでだ。その後のことは記憶にない。気がついたら、あてもなくさまよっていた。
次に気がついた時には、俺はとある辺境の村にいた。
持ち物は、コンビニで買った、シャケとツナと昆布のおにぎり、それとペットボトル入りのお茶、それから、リュックサック、それから、『バトルマスター・オブ・バトルマスター』の公式ガイドブックと、攻略本の2冊の本。
何か店とか無いか?と思っていたら、なんと、いつも行っていたコンビニと、全く同じコンビニが!?しかも、売っているものまで、全く同じ!?これはまさか、店ごと転生してきたとでもいうのか?
『バトルマスター・オブ・バトルマスター』の世界概要
この世界の舞台は、ケーニヒ帝国。
首都は、中央帝都ガイウスで、ミッテ・ケーニヒ地域の中央部にある。
ミッテ・ケーニヒとは、現地語でミッテは『全ての中心』、ケーニヒは『偉大なる皇帝』という意味で、直訳すると、『全ての地を支配する偉大なる皇帝の治める、全ての中心となる土地』という意味なのだそうだ。
ケーニヒ帝国の建国の祖、初代皇帝アルバが命名したという。今のゲオルグは、そのアルバから数えて6代目。
ケーニヒ帝国の各地域
ミッテ・ケーニヒ地域
中央帝都を中心とする地域。中央帝都に住めるのは、貴族、軍人、上級民。
6代目のゲオルグの代になり、絶対王政、恐怖政治が行われるようになり、中央帝都以外の周辺地域では、帝国兵が皇帝ゲオルグの威光をかさに、無法をなす。
コロッセオでは、武術大会の決勝大会が行われる。全国の予選を勝ち抜いた猛者たちが集まり、優勝を競う。
この武術大会には、なんと皇帝ゲオルグ自らが選手として参戦し、決勝まで勝ち上がると、皇帝ゲオルグが自ら対戦相手になるという。
そして、皇帝ゲオルグに勝利した者には、
『バトルマスター・オブ・バトルマスター』の称号が与えられるという。
ただし、いまだに皇帝ゲオルグに勝てた者は一人もいない。
ノイシュバンシュタイン地域
東方の、信仰に厚い地域。
ヘルムート地域
西方の地域。領地運営に長けた領主がいる。海運業のほか、商業全般が盛んな地域。
ベルン地域
最南端の辺境地域。のどかな山奥の風景と、豊かな自然がある。農業が盛んではあるが、代官による年貢の徴収があり、それらの年貢は中央帝都などの都市部へと送られる。
フリッツ・バルター地域
ベルン地域より北に位置するが、南部地域。
ある球技の伝説の選手の出身地であり、現在はその名を冠する地域。
ケーニヒ帝国の各地域の中で唯一、格闘技などよりも球技が盛んだという。