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悪魔狩り





さて・・・、鍵も持ってきたことだし

私の仕事をこなすとしよう。

やっぱりこういうコッソリとってのはあまり好きではない。

でもとりあえずは()()領主の館に忍び込んで

直接脅すのが手っ取り早いよね。

この暗がりの中ならどれだけ護衛が居ようと何も関係ないわ。


うまく忍び込んで外、窓から領主の部屋を覗き込んでみる。


・・・これ、嫌な予感がするわ。こいつ普通に起きてる。

でも手遅れでも警告だけはしとこうかしら。

アナタの過ちをきちんと自覚してもらわないとね。


音を立てずに窓を開き侵入する。

「初めまして、領主のパルミ・フォロールさん。」

相手、領主のパルミは目を見開いて驚きこっちを見た。

「何者だお前はっ!どうやって侵入したっ!」

「そんなことはどうでもいいじゃない。

ホントは忠告をしに来るつもりだったんだけど

手遅れみたいね。この街、無くなるわよ。」

「いったい何を」

「森の悪魔、でしたっけ?討伐部隊を向かわせたのでしょう?」

「だとしたらなんだというのだ?

街を守るのが領を預かる貴族の務めだろう。」

この男は何も知らないのね・・・。

「残念だわ。何も知らないのね。

まあ最も情報はあなたの方に上がらないように

うまく回されてたようだけど。

ろくでもない男を下につけて情報収集を丸投げしたツケが回ってきたのよ。

貴方は自分が排除しようとしている森に住まう存在のことを理解していない。」

「何が言いたい?報復に街を襲うとでも言いたいのか?

我々が勝てないとでもいうのか?

奴の力を封じるための魔道具も準備したのだぞ。」

肝心なことを理解していないようね。

「説明が面倒だから断片的にしか教えないわ。まあ最終的な結末を言うなら、この街に魔族が攻め込んで来ることになるわよ。」

「あの存在が魔族と関わりがあると言うのだな?」

「バツよ。あの存在は壁。あなた、屋敷に飾ってある

絵画が何なのかよく考えた方がいいんじゃないの?

確実に後悔することになるわ。」

事前調査で屋敷の全体を見て回ってたのだけど

パルミとよく似た顔立ちの歳の行った男と並んで描かれた

和装の女の絵画が飾ってあった。

見たことある”ツノの生えた女”の絵・・・。それが誰かは言うまでもない。




そんなことを話していたら窓をぶち破りながら

目元の穴だけが開いた白仮面を被った男が入ってきた。

その恰好は仮面から蓑のような膝まで掛かる程の

赤の長髪が生えだしたような奇抜なものである。

その男にかける言葉はすでに決まっている。

「急ぎなさい、手遅れよ。」







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それでも一度確認をと思い領主の館に向かおうと思った。

手にした仮面を被ると仮面から赤茶けた髪が伸びて蓑の要領で体を覆う。

俺は宿の窓から飛び出した。


だがそこに邪魔が入る。


「待ちな。」


仮面を被り窓から出た俺を止める集団が居た。

完全に囲まれてしまっている。

恐らく俺の監視役だろう。

認識阻害が可能な仮面ではあるのだが

怪しさや出てきた部屋から俺だという目星くらいは

簡単につくのだろう。

「時間がない時に勘弁してほしいな。」

発した声はくぐもった声だ。仮面の持つ効果のうちの一つ。

俺は無詠唱にて土魔法を行使、土蛇を地面から生やし

全員をその場に固定した。ついでに体が軋むくらいに締め上げておく。

「アガッ!」

「なんだよこれ、ありえねえだろっ!」

とりあえずそのまま動かないでくれ。


俺は周りの家の屋根ずたいに移動することにした。

飛び乗り、急ぎその場を後にする。








領主の館に侵入したが

シーによる確認はすでに終わっていたようだ。

「急ぎなさい、手遅れよ。」



「投げてあげるわ。」

その言葉に答えるように体を宙に浮かせ足をたたみ姿勢を作る。

シーは俺の足をつかむと砲丸投げの要領でぶん投げようと振りかぶる。

しっかり腕をストロークさせ互いに足、手をはなす瞬間に力を集中させ発散。周囲に爆発音をとどろかせながら一気に俺をカタパルト射出させた。

領主の館から夢陣幻影城へと空から一直線に向かう。


頭から()()()()()が消えていく。

より機械的に、目的を淡々とこなすように。

すべてを飛び越え彼女の元へと向かう。





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「ねえ、あなたも知ることになるのかしら?」

きっと、今の私はとても残虐的な笑顔をしているのだと思う。

「さっきから一体何なんだっ。いったい何が目的だっ!」

あなたに同情はする。少なくとも私はそう思っている。

領主として不足と言えどもどうでもいい。

けれでも、アイツの心を傷つける奴は絶対に許さない。

「大切な人を、恩義ある存在を自らの采配にて下す。とても愉快な話ではないかしら?」

「・・・一体、何を言っているんだ。」

「貴方たちが悪魔扱いした者の正体、知りたい?」






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上空から城を見渡した。

周りに敷かれていた彼女の結界は消え去り

別の結界術が形成されていた。

六芒星にて六点の繋がりを持たせてあるようだ。

真ん中にはすっぽり城が入る格好になっている。

さて、目と耳・・・ではなく自身の感覚の鋭敏化にて索敵。

とりあえずは城の外には結界術の五点にそれぞれ密集している。

「・・・時間が惜しい。」

負荷が厳しいが力を一部使う。

仮面の中から右目の赤と左目の青の鈍い光が漏れだす。

「・・・陽炎(カゲロウ)。」

体の周りが力の熱量で歪みだす。その様はまるで陽炎を発するかのような。

身体能力を向上させるシステム、陽炎。この赤と青のオッドアイの力の一部だ。

まずは近くの一グループへと突っ込む。光る石を持つ1人とそれを囲む5人。

奴らに知覚はさせない。一瞬で片を付ける。

「練成、傀儡(くぐつ)人形。」

地から傀儡人形(分身体)を二体生やす。

「道化ノ刈取傀儡演武(かりとりくぐつえんぶ)。」

作り出した分身体と共に

指先から魔力で生成した刃を伸ばし舞い切り裂いていく。

対象それぞれの視線の外から一気に詰め寄り

一瞬で6人ほどの集団の両足と片手の筋を切り行動不能にする。

一人が手に持っていた結界術の媒体と思える石も砕いておいた。

切り裂いてやった6人は動かなくなった手足の痛みに叫んでいた。

もちろん無視だ。かまっている暇は無い。

残りは5グループ。()()()()()()()()だと正直キツイな。

時間が掛かりすぎるし傀儡人形も形を保つのが厳しい。

仕方がない、呼ぶ以外ないな。

「・・・頼む。」


黒フード(シー)が転移してきた。

「屋敷から直接来させてもらったわ。」

すまないね、超特急で来てもらって。

・・・魔法ではない転移。久びさに見る技術だな。

「すまないが頼む。多重思考(マルチタスク)始動、使役術法傀儡使肉(かいらいしにく)。」

情報伝達、破壊すべきポイントに順番、力加減。

伝えるロスを考えるならこの方が早いのだ。

「承知。」

シーがガクッと操り人形が吊られているかの如く脱力した状態になる。

体から紫色のオーラが噴出し、フードが脱げるも顔は長めの髪で隠れている。

鮮やかな紫色の髪、紫に輝く両の眼。しかしその放つ雰囲気が彼女の意識が虚ろである事を思わせる。

「顕現セシハ天翼、染マルハ紫雲。白雷紫電ヲ奏デ唄ウ。我ラ、傀儡ヘ成リテ。」

彼女の体から幽体離脱するかの如く白い体が現れた。

一対の翼、鳥の羽根の様な白い外套、漆黒の肌に開かれた青き片目。

出現したその"天翼"とシーにかわり分身体を消し去り、2体をセミオート運航(半分操作)した。

「結界術の構成、他4グループの無力化まで使役。

各位置は確認済み。対象の処理完了後、接続を解除。

以後状況に応じ判断求む。」

今の俺自身はもちろん、分身体を使うより速さも力もある。

彼女の視界情報から各攻撃への処置、破壊対象の順序と効率的な破壊を行わせれる。

「これで今の俺以上の速さで処理できるな。しかし・・・」

頭が割れそうに痛む。今の体では長時間は耐えれそうにないな。

早めに片を付けないと・・・。

とりあえず城の外はシーを動かし一刻も早く琴音の元へ行かなければ。








急ぎ幻影城へ向かいたいところなのだが

邪魔が入ってしまったようだ。

後ろから来る気配には覚えがあった。


その方に注意を向けると俺の足をめがけて矢が飛んでくる。

掠めるように避けるとドワーフが大振りで斧を向かわせてくる。

それもバックステップにて避けると

今度は人族が両手持ちであろう大剣を

片手で縦振り、俺を切り裂こうとしてくる。

いくつかの能力の補助を掛けた左手の指で

つかむようにして剣を止める。

今度はピンポイントで俺だけに大量の矢が降り注いでくるが・・・

「フレアウォール。」

魔法にて超高温の障壁を生成。すべてを気化、散霧させる。


「・・・噓でしょ。ありえないわ。」

ルカは思わず口にしていた。

そりゃそうだろう、金属製の鏃まで

消し飛ばされてしまったのだ。

空間干渉系の魔法を使ったようにも見えないなら

驚いて当然であろう。

「いったん下がれっ!カール!」

ドワーフ、ドックは叫んでいた。

「・・・無理だ、下がれねえよ。」

カール・・・、こと人族の串肉屋のあんちゃんは

俺を押さえ込もうと力を加えてくる。

・・・いや、そうするしか無くなっている。

俺がガッチリと剣をつかんで止めてしまって動かないからだ。

もっとも、余裕そうな格好で剣を片手つかみしてはいるが

こっちもかなりの力でつかんでいて他の行動はとれない。

「・・・ここは、引いてくれませんかね?」

俺は静かに口にする。

「じゃかましいわっ!」

ドックは土魔法を発動、俺の腰下くらいまでを

地面を盛り上がらせて埋めてしまった。

「今、あなた方にはここに居てほしくないのです。」

盛り上がった地面に魔力を込め分解する。

「愚かなる者達の手により災厄の蓋が解き放たれようとしています。」

「どけてっ! シャインアローっ!」

カールは何とか俺を振り払ってその場を避ける。

そこにルカが放った超高熱の発光した矢が

俺に向かい飛んでくる。

火だなんて生易しい次元ではない熱量だ。

俺は右目に力を込める。その赤い右目は鈍く光り

高熱の矢に力を当て空間圧縮して相殺、消しさった。

「ウソッ!? これまで通じないなんて!!!」

「このままだと不測の事態が起きかねないのです。」

ドックが無詠唱にて様々な魔法を撃ちつけてくるが

虚空より一振りの刀を呼び出し鞘に納めたまま握りしめ左手で払う。

深紅の鞘を3振りもすればすべての魔法を消し去った。

「これではらちがあかん!」

カールが急接近して剣を振りかぶる。

恐らくすべての、魔力をも込めた一撃だ。

紅に輝く刀身を鞘から軽く覗かせ

両の手で支えそれを受け止める。

「くっ・・・。お前は・・・。」

「・・・彼女が望む物は、何なのでしょうね?」

カールの剣を弾くと俺は一気に後退し刀を構え体制を整える。

三人が止まる。次の一手を探して。

だがこれ以上は構っていられない。

「杞憂であって欲しい事があります。街を・・・街の防衛をお願いします。」

「おいっ、待ちやがれっ!」

俺は答えを聞かずに地面を蹴り

飛ぶように一気にその場を離脱した。









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幻影城の前まできた。

何十人かの雇われでごった返してる。

相手にしている間もないので大量の魔力と殺気を込め大声で叫ぶ。

「邪魔だっ! 死にたく無い奴はこの場を立ち去れっ!」

強制的に格下の障害物を停止させる。幸いにも全停止だ。

左目の力を使い(青い目を鈍く光らせ)軽負担にて身体能力を強化する。

琴音の居所を感知しながら人だかりを一気に駆け抜けていく。

恐らく一番力が密集している場所・・・。

急ぎたいがやはりこれでも邪魔は入る。

ある程度は威圧が効いたようだが離れたところに居た奴には

効果は今一つだったようだ。

「おいおい、手柄を独り占めする気かよこいつぁ。」

大柄な男三人組が突っかかろうとしてきた。

しかもこっちに対して斧、剣、槍をそれぞれ振りかぶっている。

俺は仕方なく左目を突き出すように相手を見る。

「・・・抜け殻。」

仮面の左目の穴から青い光が射す。

「俺たちの邪魔をすんじゃねえよっ。」

報酬の独占狙いか? 実にくだらない。

人数減らしのつもりで俺を殺そうとしてるようだ。

こんな粗暴な奴を雇っているだなんて

人選に関わった野郎のガラの悪さがよくわかる。

「なんだとっ!」

三人それぞれがそこに居た俺に刃を当てたわけだが

まったく感触はなかっただろう。ソイツは質量のある残像だ。

「・・・邪魔だよ。」

俺は左目で残像を発生させつつ相手を軽い催眠状態に落とし

残像を注視させ俺を誤認、かつその死角となる

後ろへと抜け出しうまく回り込み相手の懐に入り

爪から延ばすように魔力の刃を生成、全員分の足の筋を切った。

男たちは痛みに叫んでいる。

ポーションなり回復魔法なり使われる前に一気に離脱する。

そして同時に・・・

「結界術の方は終わりだな。」

シーを操って結界術と行使者達を完全無力化した。

傀儡の使役をしない分頭の処理が少し楽になる。

だが・・・、それでも通路に結構な(障害物)がある。

「・・・チッ、クソ共が。」

陽炎を使うと共に両の手を合わせ体に力を練りこむ。

体表に呪印が浮かびだす。

「呪樹侵力、呪装展開。」

呪印の力にて天女のような薄い羽衣上のオーラを身に纏う。

それに付随して身体能力にブーストが掛ける。

体がミシミシと悲鳴を上げだすが無視する。

一気に駆けてすべて追い越して行く。

叫び声が聞こえてくる。

「逃げたぞっ。こっちだ!」

その叫びがした人だかりの先に離れていく力を感知する。

「死にたく無くばっ! そこを退けぇいっ!」

俺は叫び左手を伸ばす。

意志に呼応して纏った羽衣のオーラが伸び人だかりを薙ぎ払う。


俺は走りに走り、反応が逃げ入った部屋へと向かった。

「入るぞっ、琴音!」







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[良い点] 西洋ファンタジーと吸血鬼の風味があります [気になる点] 彼は空間を圧縮することさえできる! [一言] 悪魔祓いの神!
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