市街地へ行く
目が覚めると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。夕日が沈んでいくのが分かる。子供のはしゃぐ声が聞こえて、何処からかカレーの匂いがする、同時にぐぅっと腹がなる。そういえば自分はいつから飯を食べてないのだろうか?
ん?カレー?
カレーがあるのか?
いや、臭うのだからあるのだろう。
あっても別に不思議じゃ無い。だって見た目はまんまアジアな訳だし。
そんな事を考えているうちに、いよいよ目視出来ないまでに周りが暗くなって来た。そこでようやく焦り始める。明かりになりそうな物を全く用意してなかったからだ。これから仕事に行かないと行けないのにこれでは準備も出来ない。あといい加減何かを口に入れたかった。そんな焦りなどお構いなしに日は完全に暮れ、月明かりだけの夜の世界になってしまった。
窓を開けておけば多少なりとも光が差し込む。しかし窓から外を見た途端、急に寒気がしてきた。外はひっそりとしている。子供の声はもう聞こえない。そして、女を亡き者にした凶悪犯達が次の獲物を狙ってこの暗闇に紛れている。そう考えて思わずゾッとした。自分襲う事は無いにせよ、このまま窓を開け続けるのは自殺行為のような気がしたのだ。
そしてすぐに窓を閉め、内から鍵をしっかり掛ける。扉も同様に鍵をかけ、そしてまたベットへと潜り込んだ。怖い、お腹も減っている。
だが、しばらく経ったらまた仕事へ行かなくてはならない。しかし、時間が分からない以上、何時にあそこへ行けば良いのかも分からない。分からない事だらけで迎える未知の夜は、なかなかの恐怖ショーだった。繰り返すが腹も減っている。こうなる事を予測して、何かしら準備はすべきだったと後悔した。
そうすると突然扉がノックされ、心臓が飛び跳ねるように高鳴る。神経が研ぎ澄まされ、全身に血が巡るのを感じた。
もう一度ノックが響いた、向こうはきっと苛立っている。出たとしても明かりすらない。出たら相手もこっちと同じく驚くかもしれない。一体こんな静まった夜に誰だろうか?まさか宗教勧誘のおばさんではあるまい。さすがに此処にはいないだろう...。
ベッドでじっとしてると外で声がした。
「おるかーーー!?」
その声と同時に再びノックが激しく叩かれ、自分は慌てて扉を開けた。
「おおう!居るなら返事ぐらいしろや。全く」
おっさんは暗闇からぬっと出て来た自分の顔を見てビクッとビビりながら怒鳴った。
そして、松明を掲げながらズカズカと部屋に入ってくる。
「なんでぇ明かりも付けんで。油切らしたんか?」
そう言うとおっさんは壁の上の方に固定されている皿のようなものに火を近づけた。すると、火は勢いよく皿の中で燃え始めた。それを見て思わず涙ぐみそうになったのは言うまでも無い。
そして、おっさんはこちらに振り返り、袋を投げて来た。
「サリーさんが心配しとったぞ、今日顔出してないってな」
サリー?誰?
「どうせまた記憶が無いとかだと思ってよ、ほれ」
おっさんは投げた袋を顎でしゃくる。
中には生地で包まれた小さな牛乳パックのようなものが入っている。
「サリーさんは食堂のおばさんだ、だから何も食ってねぇだろうと思って、うちのもんに作らせたんだ」
泣いても...ええんやで、と言う言葉が頭に響いたが、それよりも先に渡された品を口に運んでいた。生地の中身はスパイシーなカレーだった。正確にはカレーじゃ無いのだろうが、今はなんでも良かった。それだけ空腹の腹に収めた異世界最初の料理は美味かった。
「泣くほど腹が減ってたんか...」
違うよ、これは汗だよ。
何をするにも最初は大体失敗する。だから人は皆新しい挑戦を躊躇うに違いない。それだけにその障害を乗り越えた時の、達成感、安堵感、幸せ指数は計り知れない。明かりも付いたし、飯にもありつけた。もう自分を妨げるものなど何もない。ありがとうおっさん!
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そこから非番までは毎日が変わらぬルーティンだった。夜仕事行く、おっさん迎えに来てくれる、交代しながらの見張り&巡回、朝帰宅。これを数日繰り返す。
仕事が暇だけに、おっさんとの雑談は十分に知識として頭に入れている。おっさんの話によれば世界には大きな大陸が二つあり、そのうちの一つがガルバギアと言われているそうな。そしてこの国はガルバギアにて最古で最大の国、ハビンガム王朝だと胸を張って言っていた。そしてこの街はシャリーブと言った。世界でも有数の奴隷市場の街らしい。
奴隷、朝もそんなワードが出たが実際改めて口に出されると重い感じを受ける。歴史で習った黒人の奴隷が、舟の隙間もないぐらいに押し込められ、運ばれる絵を思い出した。奴隷が存在していると言う事は、それだけ人間の扱いも酷なのだろう。そしてこの国にはカースト制度があると聞き、余計に重い気持ちになる。インドのとは若干の違いがあるものの、最下層が人間以下の扱いである事は変わりないようだ。
最上級はこの国の王、次に祭事を行うと司祭、
各勢力の武将に領主、豪商や豪農。と、その価値に倣って身分が分類されていく。意外だったのは自分とおっさんは同じ身分、つまり「軍人」だと言う事だった。
「軍人の家に生まれたら、その一族はずっと軍人。女子供は軽い内職程度なら良いが、基本はずっと家の中だわな。結婚も軍人なら軍人同士って訳だ」
つまり、職業選択と婚姻の自由もなければ女は職につくことさえ許されない。あと、不貞を働いても男が悪い場合は泣き寝入り、女の場合ならその場で間男共々処刑だと言う。
これがさらに下のカーストだと、男女関係なく職業持つ事が禁じられる。生まれながらにして奴隷になるか、放浪しながら施しを受けるでしか生きる道はないと言う。五体満足なのにかかわらず、四肢の一つをわざと切り、ひたすら物乞いするのはそう言う背景があるからだ。
初めて見た時は、のんびり平和的ななんくるないさーと思っていたが、全くもってなんくるじゃ無かった。原始的な弱肉強食の序列が支配する血も涙もない世界という訳だ。
そんな重い話に思わず沈黙していると、おっさんが辛気臭いのを払うように思いっきり自分の肩を叩いた。
「なーに、今は長らく大きい戦も無いんだ。色々あるけどよ、やることやってりゃ何も気にする事はねぇ」
うーん...
果たして本当そうだろうか。
いつだって大きな戦争は、弱者と罵られた者達が自由を求めて起こして来た。こんな制度がまかり通っていれば、いずれ大きな反乱が起きてもおかしくはない。
んー…でもそれはさておき、論理的な観念を無視すれば奴隷と言うのはなかなかに魅力的な商品ではある。中でも女奴隷と言うカテゴリーは好きものなら黙っちゃいないに違いない。今の現代では絶対不可能な妄想を実現しようと思えば、それは可能である。若い女奴隷を買い、ありとあらゆる方向からパンツを眺め...
「...何ニヤついてるの?」
いけない!すっかりスケベが顔に出てしまっていたらしい。ゲへヘ、サーセン。
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そして、いよいよ待ちに待った非番の日が来た。
武装は(正確は身分と言う事らしいが)解除するなと言われたので、休みと言っても仕事着のままだ。ま、おしゃれするための服なんてそんな贅沢なもんは無いしね。
市街地に行くのは前から楽しみにしていただけに、朝からすこぶる調子も良かった。文明が後退してると言う事は、きっとムフフなラッキースケベもあるに違いない。勿論そんな不埒な事が目的では無く、ただ診療所に行くだけなのだが...。
そして、ついに市街地へ降り立つ。
正直に言って自分は舐めてた。この生きるか死ぬかで暮らす人々の熱気を。怒号なんてものじゃ無い。商人は声を枯らすまで必死になって物を売るわ、客引きが強引に変な所へ向かわせようとするわ、とにかく、人人人アンドオブヤギで、常にメインストリートは混雑しており、じっくり観察とかマジで無理だった。そこには確かな弱肉強食があった。おっさんが武装解除するなと言った理由が分かった気がする。何も準備しないでこんな所に来たら、その辺売ってるスープの具材にされてたかもしれない...いやマジで。
それにこれまた臭いも強烈だ。食事中の人は申し訳ない。だがどう表現してもこうなるから仕方ないと断っておく。簡単に言うと、カレーカレーワキガうんこカレーと言う感じ。それらの臭いが盛大に喧嘩しながら街中に漂っている。はっきり言ってヤギ臭は癒やしだ。具体的に言うなら、食堂から香ばしいスパイスの香りがしたと思ったら、強引に横切った男から強烈なワキガ臭がして、そのスパイス臭と合体する。そして、路上にはうんこ思しき残骸が至る所で放置され、全てが一つになった後、最終的カレーに戻って行く。ある意味人間のメカニズムの一貫性を、街そのもので体現しているかのようにも見える。アンモニア臭さえ懐かしく感じる。トイレ?何それおいしいの?たぶん永遠にそんな感じ。
そして、そんな感じで圧倒的に疲れた為、この街一番の見どころでもある奴隷市場へ行くのはやめにした。おそらく無理やり見に行ってもロクな事はなさそうだ。野次馬よろしく、見学しただけで何かに巻き込まれそうだしね。実際、人混みの中、鎧だの剣だのでゴツゴツしていたから、通りすがりに怒鳴られまくったって言うのもある。あんな喧騒じゃ身分もクソも関係ないのだろうな。
それでも診療所は町外れにあったらしく、歩くにつれてようやく人を観察するぐらいの余裕が出てきた。やはり人混みから外れると、改めて貧困の差が浮き彫りになる。ひたすら物乞いに励む老人、子供。汚い水で選択する女性。踏まれてないうんこ。踏まれてペシャンコになったうんこ。それに鼻を近づけるヤギ。ショッキングだらけだが、それ中でも一番目に入ったのがうんこを顔に塗りたくっている少女たちを見かけた時だ。おそらくだが自らを汚く見せる事で、男の性暴力から身を守っている。と、言うことなのだろう。驚きもや嫌悪感もあったが、何よりバイタリティが違いすぎて生きる事の凄さを改めて感じてしまった。
治安も秩序も未熟な社会での生きる術が、そこにはあった。
あまりの衝撃に色欲なんて吹っ飛んじまった、と言う事は無く、やはり心の何処かでムフフなラッキースケベを期待するのが煩悩と言うものである。でも正直、それも結果から先に言うと幻滅しただけだった。この世界の女性には、服の中の身だしなみというものが存在しなかったからである。おっぱいを見れる頻度は格段に上がったしそれは素晴らしい事だが、逆にパンツを見る事は全く叶わない。
何故なら『パンツを履く』と言う概念すらなかったからだ。
と言う事は、アレやナニが見放題なのかと聞かれたのなら答えは「YES」である。何度も見てると流石に恥ずかしそうに隠すが、基本見放題だ。それだけで昇龍拳して壁を突き破る人もいるだろう。なにせ秘密の花園のバーゲンセールである。あ、タダだからセールですらないのか。
違う、違う、そうじゃ、そうじゃない。
自分が見たいのはパンツであって具じゃ無い。パンツなのだ、それも純白で素朴の、なんならちょっと汚れているパンツが見たかったのだが文明がほんのちょっぴり遅れていた。それだけの事だ。でも服で隠れているから問題ないなんて、それで本当に良いのだろうか。そうじゃないだろ、パンツだよ、自分が見たいのはパンツなんだよ!検索したら出てくるズボンの方じゃない、下着の方のパンツ、あの三角形のリボンがついたパンツだ。
あまりにもショックだったので、頭の中がパンツでいっぱいだ。ちなみにパンツであればパンチラでもパンモロでもどっちでも良い。そしてぶっちゃけ顔なんぞ不必要である。パンツであれば大体5歳ぐらいから40歳程の熟女でも全く問題ない。ただ単純にパンツと言うと、あの小さい下着だけを考える人にいるが、しっかりと装着されてデリケートゾーンを薄布一枚で隠されている状態が「パンツ」だと自負してしている。日本だと現代ではコンプラがどうのこうの子供の悪影響だの、性的なコンテンツだのと、もはやそれを口に出すのも憚れる程にパンツを見る事は衰退している。性犯罪を助長すると言う言い分も分からなくはない。しかし、あえて言わせて貰えばパンツが見えない女なんてパンツじゃない。間違えた女じゃない。女性としての魅力すら感じない。パンツが見えない女なんて道端の石こと一緒である。jkがおっさんに何一つ興味がないのと同意語である。パンツ見えない女が増えたからこそ日本は衰退し、少子化になり、いずれは滅びの運命を辿る。そこまで考えた時、大きな危機感を感じた。
この世界を日本のように、パンツを見せない女が溢れるような世界にしてはならぬと!!!
それがのちに自分の生きる原動力となって行く訳だが、その前に病院行く話だったね。
そう、頭のね。




