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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
最終章 冒険者ランクB

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325.施策実行(3)

 翌朝、宿屋に着くと難民たちは食事を終えてまったりとしている様子だった。食事当番に当たった人たちは、食器の片づけや食器洗いをしている。うんうん、ちゃんと当番を守っているようだね。


 食堂でゆったりとしているところに私はみんなに話しかける。


「みなさん、おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」


 そういうと、数人の人が頷いてくれているのが分かった。


「今日のお仕事は宿屋の掃除です。一日をかけてこの宿屋を綺麗にしたいと思います。なお、今回のお仕事には一万ルタが出ますので、張り切って仕事をしてください」


 難民たちにも先立つものが必要だ。その先立つものとして、宿屋の掃除に一万ルタを出すことになった。ちょっと高い金額だけど、所持金がない今、支援金という役割も含めているので高めに設定した。


 お金が貰えると知った難民たちは驚いている。お金が貰えるのは冒険者ギルドで働いてからだと思っていたからだろう、その前にお金が貰えるとあってみんなが喜んでいた。


「まず、この食堂を綺麗にしましょう。あの掃除道具はどこにありますか?」

「それなら廊下の納戸のところに置いてあるよ。今回の支援金で買っておいたものばかりだから、みんな新品だよ」

「じゃあ、ここからここまでの人たち、一緒についてきてください」


 一緒に道具を持ってくる人を選定して、廊下へと出ていった。廊下をちょっと進んだところに納戸があり、そこを開けると真新しい道具が沢山置かれてあった。


 その道具を出しては難民たちに持たせていく。納戸の中に入っていたほとんどの掃除用具を出すと、食堂に戻ってくる。


「水汲みをしましょう。力のある人はおばあさんに付いていって井戸から水を汲んできてください」


 指示を出すと、男性たちがバケツを持って老婆についていった。


「掃除を始めましょう。まずは天井や壁についている埃を床に落とすところからです。高いところから掃除をすることで、ゴミを効率よく集めることができます。はたきやほうきを使ってゴミを落としてください」


 残った人に指示をすると動き出す。数人の人がはたきやほうきを使って、天井や壁に付いている埃や蜘蛛の巣を取り除く。それをしている間に、数人の人を集めて食堂に行った。


「あなたたちは厨房の掃除をお願いします。厨房についてはおじいさんの指示に従って、隅々まで綺麗にしてくださいね。おじいさん、後はお願いできますか?」

「あぁ、もちろんだ。じゃあ、水が来たら掃除を始めようか」


 そうしている内に男性たちがバケツに水を入れて戻ってきた。勝手に動き出す前に、私は指示を飛ばす。


「まずは食堂の中にあるゴミを全部かき集めます。それから、綺麗に水ぶきを開始しましょう」


 そうすると、はたきや箒を持った人は忙しなく動き始める。そうそう、動きは素早く、でも丁寧にね。私は今までの経験を元に色々と掃除のアドバイスをした。


 ◇


 三十八人の難民たちで薄汚れた食堂を綺麗にする。人数がいるから楽勝だと思ったけど、汚れはかなり頑固にこびりついていて落とすのに苦労した。それに、あまり掃除に慣れていない人もいたので、その人たちに指導をしながらの掃除も大変だった。


 掃除は大切だ、これからする仕事にも通じることだ。だから、掃除の仕方が分からない人には懇切丁寧に教えてあげた。はじめはぎこちなかった手つきだったけど、時間が経つと慣れてきたのかぎこちなさがなくなった。


 そうやって掃除の指導もしながら食堂を綺麗にしていく。すると、食堂は見違えるように綺麗になっていった。蜘蛛の巣の張った天井、埃がこびりついた壁、色んな汚れがこびりついた床はゴミ一つない綺麗な仕上がりに。


 長年の汚れがこびりついたテーブルとイスも隅々まで綺麗になって、木目の綺麗な家具に変身した。厨房にも長年の汚れがあったけれど、みんなで力を合わせてとても綺麗な状態に仕上がった。


 食堂の掃除が終わり、みんな食堂を見渡して驚いていた。こんなに綺麗になるとは思わなかったのか、信じられないような目で食堂を見ている。


「すごい、綺麗になったわ」

「こんなに変わるものなんだ」

「なんか、達成感あるよな」


 そんな声が聞こえてきた。うんうん、掃除は大変だけど達成感を目で感じられるものだから、分かりやすくて気持ちがいい。


「食堂が終わったので、次は各部屋を掃除します。あ、今日の食事当番の人は昼食を作るのを手伝ってください」


 指示を出すと、食事当番の人たちは厨房に行き、それ以外の人たちは食堂を出た。


「まずは一階の部屋の掃除から始めましょう。やり方は先ほどと同じようにしてください。もし、何か困ったことがあったり、分からないようなことがあれば質問してくださいね」


 指示を出すと、難民たちが動き出す。掃除道具を持ち出して、各部屋に入っていき、始めにやった通りゴミをかき集めるところからだ。掃除のやり方を守ってくれて良かった。


 手伝いたい気持ちをグッと堪えて、私は難民たちの仕事を見守った。


 ◇


 その後、一階の各部屋の掃除が終わる頃には昼食の時間になっていた。綺麗になった食堂で食べる昼食は以前のより比べると、美味しさが上がっていると感じた。


 やっぱり、綺麗な場所で落ち着いて食べれるのが一番いいね。難民たちの表情も明るいし、このままこの生活に慣れてもらえるといいな。


 食事が終わると今度は二階の各部屋の掃除、それが終わると共用部分の掃除を行った。人数が沢山いても長年こびりついた汚れは中々落ちず、みんな苦労して綺麗にしていった。


 共用部分が終わると、今度は宿屋の正面の掃除をした。毎日帰ってくる場所だから、見た目も綺麗にしたほうがいい。みんなの力で正面を綺麗にすると、宿屋が見違えた。


 その部分を終わる頃には夕方になっていて、宿屋の掃除は本当に一日がかりだった。でも、今日一日かけたかいがあって宿屋はとても綺麗になったし、住むのに丁度いい場所に生まれ変わった。


 夕食時、食堂は昨日よりも比べて賑やかになっている。宿屋が綺麗になってみんな気持ちがいいのだろう、気分が上向きになったみたいだ。その光景を見ていたセロさんが話しかけてきた。


「あんなに汚れていた宿屋がここまで見違えるとは……すごいな」

「みんなが頑張ってくれたお陰ですね」

「それもあるが、リルが的確な指示を出していたからだと思う。お陰で掃除は滞りなく進んだし、宿屋もここまで綺麗にできなかっただろう」

「まぁ、掃除は働いている時に何度もした仕事ですから。その経験を生かすことができて良かったと思います」

「リルは一体何者なんだ。仕事の幅が広すぎて、信じられないくらいだ」

「あはは。まぁ、今まで本当に色々やってきましたから」


 私は指示を出していただけだけど、実際頑張ったのは難民たちだ。私一人の力ではどうすることもできなかったから、ここはみんなのお陰にしておこう。でも、私の経験が生きて良かったな。


 そうして、食事が終わった頃を見計らうと明日の予定のことを話した。そして、お待ちかねの給与の支給。一万ルタを渡すと、みんな嬉しそうな顔をしたり、どこかホッとしたような顔をしていた。


 手元にお金があるのって安心するよね、分かる。なんだか懐かしい気持ちを思い出すと、今日の仕事は終わった。

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