第二十三話「巨大化とロボットはヒーローの定番」
「お待たせ。とりあえず色々とゲーム持ってきたよ。うーんと・・・これと、それと、あれと、それと…後まだ廊下にも置いてあるんだけど・・・よいしょっと。」
「ウフフ。あひりさん欲張りですわね。」
「おいおい!まさかそれ、今日で全部やるわけじゃないよな?」
TVゲームやら携帯ゲームやらボードゲームやら何やら、お引越しの荷物のように次々と自室へ積み上げていくあひりさん。一人娘の家庭だからか、物だけ溢れかえって一緒にプレーを楽しむ相手がお家に来るまで、ずっと押し入れの奥にでも熟成させていたのでしょうね。にしてもこの量・・・私と同じ、買って満足するタイプの生き物らしいw
「ん?ちょっとあひちゃん!あひちゃんと一緒に写真に写っているこの筋肉ムキムキ鳥人間みたいなヤツとオノロケ姫の山犬みたいなヤツ何?」
二人と会話をしながらも部屋をウロウロと物色していたほまれさんがコルクボードに飾られていた数枚の写真を発見。ニコニコ笑顔のあひりさん、カッコ良く右手でサムズアップしている筋肉ムキムキ鳥人間、カメラ目線であひりさんにモフモフされている白い山犬。・・・いつの間に記念撮影なんてしていたのか!モモサキンよ。」
「あっ!それギャル子ちゃんっていう、私のお友達だよ。ウチに送られてきたんだよ〜。」
「えっ?こ、これがギャル?友達…ウチに送られてきた?・・・どゆこと???」
流石に困惑のほまれさん。そりゃそうだ。鳥人間と山犬がギャルでしかも友達なのに桃咲家に送られてきたって。関係者以外が聞いたら意味不明ですわなw
「ウフフ。トランスフォーム型アンドロイドの娘、ですわよね。」
「そうそう、たしかそれ!!」
「トランスフォーム型アンドロイドってことは・・・もしかして、研究者ネーム『マロン』?あ、あの最高名誉技術士の!?」
「あれ?ほまれちゃん知ってるの?」
「知ってるもなにも、めっちゃ凄い人でめっちゃリスペクトしてる人だし!!有用な数々の技術を開発・製造し、全世界に貢献している神のような存在だよ。・・・そこの憎たらしいお嬢様とは違ってね。」
「あらあら、酷い言われようですわね。そのお方も大財閥のご令嬢の出自でワタクシと境遇は同じですのにね。」
その最高名誉技術士が自分の妹だと明かさず、勿体ぶった匂わすような言い方をするこまろさんね。妹の手柄で自分を持ち上げるような真似をしないところは栗宮一族の長女としてのプライドなのかしら。まあ、そんな事情も知らないほまれさんは興奮した勢いで栗宮の人間を神だと崇拝しておられるご様子。・・・あれ?これもう実質的には栗宮に従属する柿木という構図が完成してね?ま、いいかw
「ねえねえ、マロン大先生の大傑作『トランスフォーム型アンドロイド』は今どこにいるの?」
「それがね、事故に巻き込まれちゃって壊れちゃったんだ。ギャル子ちゃん。しばらく修理で戻って来れないみたいなの。こまろちゃんはあの世からどうにか戻って来れたんだけどね。」
「いや、ですからワタクシは元から生存しておりますの。死者蘇生していませんの。」
「あ〜、その事故が二人が学校遅れてきた時にあった事故か。うーん、しかしマロン大先生の作品をこの目に収めることができないのは残念っすな。」
そういえばそんな事件ありましたね。影の薄かったほまれさんはそのイベントに参加できなくて残念でしたが。桃咲さんと栗宮さんとの紛争?に巻き込まれた可哀想なギャル子ちゃん。またいつか戻ってくるといいね。
※
ギャル子との思い出話で忘れ気味になっていましたが、そろそろ閑話休題。桃咲さんがそこら辺に放置したゲームの中から今回のデスゲームに使用される物を選ぶ時が来たようです。
「ってなわけで、まずはTVゲームからやろう。ええっとプレーするソフトは・・・」
「こちらのガンシューティングゲームとかいかがでしょうか?三人で同時プレーできて、勝敗も決めやすいですし。」
「あ〜それ、前にちょっとだけやってて、一応データも作ってあるんだよね。いいね、それにしよ!」
こまろさんが提案したゲームは所謂FPSってやつです。VRゴーグルとガンコントローラを駆使してやるタイプっぽい。だけどさ、プレーするにしても三人分のVRゴーグルとガンコントローラーが必要だろ。そんな都合よくこの家にあるわけ・・・おや?あちらにむき出しのVRゴーグルがちょうど三つ。あれ?向こうの方にはアサルトライフル型のコントローラーが三つ。
・・・さ、流石はあひりさん。人をおもてなす心に満ち溢れていて準備も抜かりないという。お見逸れいたしましたw
「おっ!FPSか。そのソフト自体はやったことないけど、別ゲーのFPSは私結構やりこんでいるよ。でもそれでいいのかい?圧勝しちゃうよ私。大丈夫かい?」
「ええっと。この配線はここに繋いで、これはこれ…だったっけ?」
「それはこちらですわ。ささ、早いところ戦闘準備に入りましょうか。」
「・・・聞けや〜!おのれら〜!!」
鼻高で意気揚々と語っているほまれさんガン無視で戦闘準備を始めているあひ・こまコンビ。ゲーム機本体の電源を入れ、VRゴーグルを着用。手には桃咲家の武器庫(押し入れ)から調達したアサルトライフル型のコントローラーを装備。やや遅れをとったほまれさんもそれに倣った。
こまろさんとほまれさんはキャラメイク等を適当に済ませた後、桃咲さんが建てたルームで合流した。
※
「よし、みんな準備OKだね。後はルールとステージ選択かな。」
「ただ三人だけで戦っても寂しいからさ、味方NPCも含めた3チームに分かれるっていうのはどうかな?桃咲チームと柿木チームと栗宮チームって具合に。」
「ウフフ。ワタクシは別にそれでもいいですわよ。対戦ステージ選択はこのワタクシが選んでもよろしいですか?あまりこういったゲームは嗜んだ経験も薄いもので。」
「どうせ私が勝つんだし、ステージなんてどこでもいいよ。君たちのお墓の場所が変わるだけなんだからさ〜、あはは(笑)」
桃咲のオンラインルームでルールとステージを選択後、いよいよ戦場へと駆り出されるいつもの三人組。ワクワクとドキドキが入り混じった少し硬い表情をしている桃咲あひり、自信に満ち溢れた余裕綽々としたご様子の柿木ほまれ、不敵な笑みを浮かべていつも通りになにを企んでいるか分からない栗宮・モンブラン・こまろ。
やがて、彼女らが放り込まれた戦場が明らかになった。見た感じ、近未来感のある市街地のようだ。
開始早々、『ガガガガッ』と銃声が聞こえた。音のする方を見ると五人ほどのNPCがすでに地面に横たわっているではないか。
「イヒヒ。軟弱じゃのう、貧弱じゃのう。かつて『不可視の暗殺者』の二つ名でFPS界隈を轟かせたこの私を甘く見ないでほしいなあ。もう一人の伝説『プリンセス無課金』と双璧を成していた逸材だぜ〜!!」
「あわわ。私の味方がゲーム始まってすぐに五人もやられちゃったよ。急いでここまで逃げてきたけど…たしか、攻撃してきたのほまれちゃんだったのは見えた。どうしよう、今絶対こっちに近づいてきてるよね。もう私、やられちゃうのかな・・・あっ!そういえばこのゲーム、これがあったんだ!!」
桃咲さん、ゲーム始まってまだカップラーメンもできない時間しか立っていないのに、すでに追い込まれているご様子。他方の柿木さんは桃咲さんの逃げ隠れている場所をすでに把握しているのか、目の前に立ちはだかる桃咲チームのNPCを一人、また一人と撃ち倒しながらゆっくりと歩を進めている。そしてその足は気がついた頃には、桃咲さんが身を隠しているビルの一角まで到達していた。・・・ほまれさんは大きく深呼吸を一回し、軽く微笑を浮かべた後、銃を構えて一気にその一角に姿を現した。
「アヒル〜!残念だったな。ここが貴様の墓場だ〜!!」
ほまれさんは容赦なしに銃弾をブッ放つ。事前に指揮していたのか隠れ潜んでいた柿木チームのNPCたちもあらゆる方向から一斉射撃を開始。あ〜、全方位からの射撃でこれは確実に桃咲あひりさんは蜂の巣になりましたわ。・・・って誰もが思うじゃん。しかし、期待の主人公はこの程度ではへこたれなかったらしいですよ。
「ふ〜。危ない危ない。転送が遅れていたら間に合わないところだった。ほまれちゃん、どうかな?私のマッスルダンディ君3号の性能は!」
「は?ナニソレ。このゲームにロボット兵器とかありなのか…」
「さーて、次はこっちの反撃だよ!えーと…どっかにボタンがなかったっけ?・・・あっ!これかな。(ポチッ)」
「ん?(なんかイヤな空気がよぎった気がする)・・・あ、あひちゃん。一つだけ尋ねるけどさ、マッスルダンディ君1号と2号はどこいったのさ?」
「あっ。1号と2号はね、このゲーム初めてプレーした時に、なんか適当にボタン押しまくってたら、勝手に自爆しちゃって跡形もなく消えちゃったんだよね。今回転送してもらった分で三回目だから、マッスルダンディ君3号なんだ。」
「!?・・・NPC急げ!撤退だ。早くしないとヤバいことに・・・」
『ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!』
創作物でよくある、主人公の燃える展開とはまさにこの事ですね。←違う!!
あとがき
・特撮ものの何とかレンジャーが搭乗するロボットって、操縦の役割どうなってんだろうね。攻撃を同時に複数手段用いているわけでもなさそうだから、武器担当別ではないはず。
じゃあそうなると・・・レッドは頭部担当で、イエローは右腕、ブルーは左腕、グリーンは右脚、ピンクは左脚みたいな?
・・・色々もつれて横転しちゃいそうw
ほなら、もう搭乗者も操縦もレッド一人でも良くね?とも思ったり…
ここまで読んでいただきありがとうございます!




