4 似た者同士? ※ 水無月啓一視点
顔合わせを済ませたので二人を俺の実家へと案内した。
サヤちゃんはちょっとまだ状況が呑み込めていないのか俺たちの後を黙ってついて来るという感じだった。
家に着くとばあちゃんに二人を紹介してお互いに挨拶を終えたところで二人を部屋へと案内した。
うちの実家は以前は盆暮正月には多くの親戚が集まっていたこともあって客間もそれなりの数がある。
客布団も一式揃っているので急な来客にも対応できるとはばあちゃんの談だ。
「それにしても立派な家ね」
客間に案内するため廊下を歩いていると紗良さんがそう零した。
紗良さんも撮影で全国色々な所へと行くことがあるという話だからそれなりのモノを見てきてそう言うのだろう。
「日本家屋ってそういうもんじゃないの?」
慎吾がそう言うが実は俺も同じ意見だ。
木造で畳があれば日本家屋じゃないの?
そんなに違いってある?
っていうのが正直な気持ちだったりする。
「慎ちゃんはともかく水無月くんはそれじゃあダメよ。いい? まずはこの柱、最近ではなかなかこのクラスの柱はお目に掛かれないわ。今はもう市場に出ないんじゃないかしら」
どこかで聞きかじったのかそれとも勉強する機会があったのか、紗良さんによるうちの実家がいかに凄いかについての説明が始まった。
柱、梁、板から欄間の彫刻と正直これまでスルーしてきた細かいことを次々と指摘される。
というか何で俺は初めてここに来た人からそんな説明を受けているのだろうか。
ここって俺の実家なんですけど……
そんなことを思いつつ、俺は二人を客間に案内してしばらくゆっくりするように言い残してその場を離れた。
「啓一さん、お話があります」
ばあちゃんに言われて慎吾たちにお茶を出した後、サヤちゃんと一緒に俺の部屋に入ると直ぐにサヤちゃんからそう切り出された。
これまでに感じたことのない迫力に思わず正座をしてサヤちゃんと向かいあった。
「なっ、なんでしょうか?」
「どうして先に言ってくれなかったんですか?」
「なっ、何をでしょうか?」
「慎吾さんの彼女さんがその、神女優の藤嶋紗良さんだってことをです!」
あー、やっぱりサヤちゃんも知ってたんだ。
紗良さんも自分のことを大女優と言うことはあっても神女優とは言わないし、それはちょっと恥ずかしそうだったりするので俺たちもその呼び方はしなかったりするのだ。
しかし、世間一般では藤嶋紗良は神女優という認識なのは間違いない。
「いや、サヤちゃんが知っているかどうかも分からなかったし、もし知らないなら知らないでそのままの方がお互いにとっていいかな~、なんて……」
「神女優の藤嶋紗良を知らない人なんているわけないじゃないですかっ! 知らないのは凄くお年の方か小さな子供、あとはよっぼど社会常識のない変な人くらいです」
俺、最初に慎吾に紹介してもらったとき知らなかったんだけど……
「……社会常識のない変な人」
「そうですよ、ってひょっとして啓一さん?」
「俺、最初、知らなかった……」
「あっ、ああ~~~」
サヤちゃんがバツの悪そうな顔をして明後日の方を向いた。
すまないサヤちゃん。
きみの婚約者は社会常識のない変な人だったんだよ……
しかし、これはチャンスだっ!
ここだっ、ここで中央突破を図るっ!
「まっ、まあ、そういうことで今回のことはお互い不幸な事故だったということで」
「そっ、そうですね。そういうこともありますよねっ」
あははははは、うふふふふふとお互いに笑い合う。
ふう、なんとか切り抜けたな。
よし、ここでダメ押しで話題転換だ。
「そういえば、明日は前日のリハーサルをやるんだよね? 他の参加者の人たちには紗良さんのことを先に伝えておく?」
「……いえ、伝えなくてもいいんじゃないでしょうか? その方が面白そうですし」
「……ソウダネ」
俺の婚約者はやっぱり俺によく似ている様な気がした。




