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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

天國で結ばれた戀

作者: 金平羊(金平糖と羊羹)

 私は某所の大学に通う学生で、ただの青年でした。強いて言うならば私には友人が少なかったのです。なので私は大体の生活は一人でした。なので私は誰かに縛られる事無く、私は私なりの楽しい生活を送っていました。

 それは秋終わりの寒い日でした。学校が終わった私はさっさと下宿先に帰り火鉢に当たっていました。

 ですがどうもつまらない。なので私はもう一度外にでも出ようと思いました。私は先程まで着ていた外套を手に、外へ行きました。

 目的が無いので私は適当に歩いていました。すると、ふと見知らぬ神社に出ました。この辺りに住み始め二年ほど経ちますが、それまでここに神社があるなんて聞いたことがありませんでした。

 私はとりあえず参拝しました。別に神道に興味があるわけではありませんでしたが、神社に訪れたのならば参拝するべきでしょう。

 参拝を済ませた私はその神社で足を休めていました。ある時、一人の少女と言っても同じ歳くらいの女の人でしたが参拝に来ました。彼女は参拝を済ますと私の方に寄ってきした。私が何か気に障るような事をしたのか不安になりました。

「初めてお会いしますね」

 彼女は私にそう言いました。どう言った理由でそんな事を言うのか彼女に尋ねると、彼女からこの神社には人があまり来ない事を聞きました。なので、彼女は自分以外の人が訪れた事が嬉しかったと言っていました。それは私も合点がいきました。そして私はその日から学校終わりに毎日、そこへ訪れる事にしました。

 同じ下宿に泊まる数少ない友人は毎日何処かへ行く私を不思議がって跡をつけて来た事もありますが、神社に着くと大抵、「信仰心の強い男」だと思い元来た道を戻って行きました。私の行き先は神社に間違いではありませんでしたが、目的は彼女でした。彼女と話すことが楽しく、寒さなんて忘れてしまうほどでした。

 彼女は女学生で私の一つ下でした。また、彼女の学んでいることは私と似ており、学問の事も話ができました。また、彼女は可憐でおりました。

 来る日来る日と私はいつしか彼女に恋心なんと言うものを抱いておりました。ですが、彼女は私をなんと思っているかなんて分かりません。さらに、何と切り出せば良いのか、それも分かりませんでした。私はこう言った事に幾分奥手だったので、伝えようにも伝えられませんでした。

 年が明け、いつしか春が顔を覗かせ始めていました。私は未だに何を伝える事もせず、ただただ時の流れに身を任せていました。

 ある時、彼女と話している間に私は自分自身が情けなくなり、いつの間にか泪を流していました。そんな私に彼女は手巾(ハンケチ)を当ててくれました。私はさらに泪が止まりませんでした。

 酷く泪を出す私。彼女は一寸戸惑っていました。ですが彼女は私を抱きしめて、頭を撫でてくれました。今思うと、この時に伝えていればあんな事にはならなかったのでしょうか。しかし私は臆病でした。

 神社にある桜がそろそろ満開になると言う時を境に彼女は来なくなりました。これまでそう言った事はありませんでしたので、私は困惑しました。待てども待てども彼女は来ませんでした。

 翌日、私は学校から帰ると数少ない友人が新聞を渡して来ました。

「おい、天國で結ぶ戀だと。面白そうだから読むといい」

 訳もわからず私は兎に角、新聞を受け取り読みました。

 どうやら、うら若い男女が山中で心中したと言う事が書かれていました。私はこう言ったものにあまり興味はありませんでしたので適当に読んでいたら、手が震え始めました。心中したのは彼女でした。私は手の震えからいつしか呼吸が難しくなりました。そんな私を気遣い、友人は水を持って来たり布団に寝かしたりしてくれました。そして何よりすぐに謝ってくれました。友人に罪はありませんでしたが、彼は責任感の強い人でした。

 彼女の死を知った私は虚無に襲われました。私が生きている理由というものは彼女にありましたから、衝撃が強かったんです。私は布団に横にはなっていましたが、寝る事など出来ませんでした。そして私は冷静さを失って行くのでした。

 彼女の死を聞き翌日。私は学校をサボタージュし服と化粧品を買いました。そして彼女への手紙を書きました。

 夜。ほとんどの人間が寝静まった頃に私は下宿先から抜け出し葬式屋へ向かいました。この辺りに葬式屋と言うのは一つしか無いのでそこへ行きました。無論、彼女に会いに行ったのです。

 葬式屋に忍び込むのに特にこれと言って難しい事はなく、何故か簡単に入れました。私は彼女の棺を探し、見つけました。なので、買っておいた服を着せてやり、私の慣れない手つきで化粧もしてやりました。心なしか少し微笑んだ気がしました。私はあの時と同じようになっていたのかも知れません。

 彼女の体と言うものは強張ってしまっており、服を着せてやるのは特に大変でした。そんな彼女を抱えて、私は神社に行きました。

 誰もいない神社で私は彼女と二人だけでした。それが良かったのかどうなのか分からなくなってしまいました。

 彼女は天國で幸せなのでしょうか。彼女の肉体に聞いても答えが出る事はありませんでした。

 私は場所を移し、少し広い所にやってきました。そこで私はあらかじめ集めていた木材で棺を作り、彼女を入れました。ここで言うのもなんですが、私は正直、彼女が死んでいるとは思えませんでした。それは彼女の顔がまだ寝ているようにしか見えなかったからでしょう。

 彼女を棺に入れた後、私はポケットからマッチを取り出して棺に火を付けました。ですが、マッチの火では燃え難く、苦労しましたが何とか燃えました。

 骨だけになった彼女。私は骨壺になるような壺へ入れ始めました。ですが私は「ふと」思い立つとおもむろに彼女の骨を一つ、口にしました。音を立てて骨を食べました。こうする事によって彼女と一体化できると思いました。また、彼女の肉体と結合される気がしました。

 私が食べる事によって彼女の肉体は私の中に生き続ける。

 あらかた骨壺と私の中に入れ終わったところで私は下宿に帰り、今日も学校を休みました。

 翌日。下宿には警察が来ており、私は連行されました。理由は簡単です。彼女を連れ去ったからです。私は気がつきませんでしたが、どうやら私の他にも彼女を狙う輩がいたようです。


 冬の刑務所は寒いもので、鉛筆を持つ手が強張ります。でも私の中は暖かい。彼女は私の中で生き続けているから。

 相手の方には少し悪いことをした気がします。何せ彼女の肉体は私の中に生き続けている。つまり天國にはまだ完全には行けていないから。


 彼女は私の中に。天國で戀は結ばせまい。

手付かずの短編小説を無理矢理終わらせたので、終わり方は雑だったと思われます。

大変申し訳ございません。

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