夕暮れの部室 【月夜譚No.137】
掲載日:2021/04/18
忘れ物を取りにきただけなのに、どうしてこうなったのだろう。険悪な雰囲気で向き合う先輩二人を前に、彼女は困った様子で立ち尽くしていた。
映像研究部の小さな部室。窓から夕陽が差し込むその教室は、パソコンや撮影に使う機材が所狭しと並んでいる。ほぼ物置きと化している教室は、いるだけで圧迫感を感じる。今は更に居心地が悪くて、彼女はそっと足の位置を変えた。
映像研究部では、映画観賞や意見交換の他に、短い映画の撮影も行っている。脚本から出演者、スタッフに編集と、少ない部員でどうにかやりくりしていた。
どうやら、次の脚本について話をしていた先輩方の意見が食い違い、この状況に至るという。
彼女は出そうになった溜め息を飲み込んで、目の前にいる二人を見遣った。巻き込まれるこっちの身にもなってもらいたい。
まあ、彼女達にしてみれば、こちら側の都合など知ったことではないのだろう。もう何十年も繰り広げられている、ただの暇潰しだ。
早く終わらないかと視線を下げたその先には、そこにあるはずの二組の足はなかった。




