注文の多いイイ男料理店
そこそこのイイ体なりをした二人の猟師が森へ狩りに出かけた帰り、濃霧に遭遇して道に迷ってしまった。
「うすらかすらすとる間に迷っちまったない?」
「どうすっぺがなぁ~」
などと言い合いながらさ迷い歩いていると突然、一軒の洋風の建物が出現した。
そこには“ノンケもホモにしておいしく食べてしまう料理店”という看板が出ている。
「うーん、どうしてこんな森の奥に料理屋が?」
「だが一見すると何の変哲もない普通の洋食屋といった感じだな」
「入ってみるか」
「そうしよう」
パッと見普通の料理屋だったので二人は恐る恐る店の扉を開けて中に入った。すると廊下があって、すぐ先にまたドアが。ドアの脇には看板が立てかけられている。
“当店は森で迷っているお客様をおびき寄せてあの手この手でホモにして(性的な意味で)食っちゃうお店ですがどうかご了承ください。いただきます”と書いてあった。
「なにか物騒なことが書いてあるぞ」
「なぁに、昨今はお店にケチをつける悪い客も多いと聞く。こういう看板をあえて掲げることで客をふるいにかけているのだろう」
何の疑問も抱かず二人はドアを開けた。するとまた廊下の先に別のドア。そして看板。あとバリカンが置かれている。
“ここで靴と服を脱いでバリカンで髪を沿って丸坊主にしてください。私の好みです”と書かれていた。
「ん、これはどういう事だろう?」
「なるほど、高級旅館のように部屋着のようなものが用意されていて、この先の部屋で着替えるためにまずは全裸になれということではないか?」
「ではなぜバリカンを?」
「なぁに、昨今は食事に髪の毛が入っていたなどといって騒ぐクレーマーも多いと聞く。店側がしっかり対策している証拠ではないか」
何の疑問も抱かず二人は全裸になって頭部をバリカンでツルツルにしてからドアを開けた。するとまたしても廊下とその先にドア。看板の近くにはぬるぬるした液体で満たされた甕かめが置かれている。
“お客様にも気持ちよく楽しんでいただくためにこのローションを全身に塗ってください。下腹部は念入りに”と看板に書かれている。
「はて? 食事をするのになぜローションを?」
「バカだな君、これはきっと、空気が乾燥していて肌に良くないから保湿のためであろう。焼肉屋などでは大きな換気扇がついているじゃないか」
何の疑問も抱かずヌルヌルになった二人はドアを開けてビックリ。その先には三つのドアがあった。
左のドアには【ハードゲイでホモテラスな部屋】と書かれている。中から「オスッ! オスッ!」というラグビー部の野太い声が聞こえてくる。
真ん中のドアには【ソフトなホモちゃんの部屋】と書かれている。中から「かもーん、イェスかもーん」というねちっこい柔道部の声が聞こえてくる。
【ハードゲイでホモテラスな部屋】の前の看板には“実に男らしいホモがハードにあなたを昇天せしめん”とあり、【ソフトなホモちゃんの部屋】の前の看板には“オネェ系ホモがあなたをねっとりと悦ばせ候”とある。
ちなみに右のドアには【EXIT】と書かれていた。
「これは一体どういうことだろう?」
「なるほど、ビュッフェ形式というやつだよ。無知な君は知らないだろうが、欧米ではこうやって好きな料理を好きなだけ取って食べるスタイルが一般的なのだ」
「待ちたまえ、ではあの右のドアには何と書いてあるんだい?」
「あっはっは、君はバテレン語が本当に苦手だからね。僕が教えてあげよう。【EXIT】というのは、イーエックス、イット、と読むのだよ。日本語に訳すと、特別なそれ、という意味だよ。わかったかね?」
「ほほぅ、では右のドアの向こうには特別な料理があるということだね?」
「そうに違いないね。僕はまず右の部屋へ行こう」
こうして右のドアを開けた二人はその先に待ち構えていた崖から転落。崖から生えていた枝を掴もうにもローションで滑って上手く掴むことが出来ない。このままでは谷底に激突して死ぬこと間違い無しだ。
「マズいぞ! このままでは二人とも死んでしまう!」
「そうだ! 二人体を合わせて丸まれば…………!!」
二人は滑る体をつかみ合い、互いに丸まり防御の姿勢を取った。
「ぬるぬるしてやりにくい……けど!」
「だ、だけど……なんか気持ち良い!!」
二人は死の間際ホモに目覚めた。
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