第一話
大分書き込んで居たものを修正した物です。
文才が無く、駄文ですが読んで頂けたら幸いです。
自然豊かなレッツェル王国に、名を馳せた召喚士の一族が居た。
『オラクロ家』
その一族出身の銀髪の青年が、壮大な建築物の前で佇み、手に握ぎっている紙を呆然とただ眺めている。
「はぁ…今年も『F』か…」
そう呟くと、彼は肩を竦めて帰路を歩み始めた。
彼が項垂れるのも無理は無い、毎年開かれる召喚士の昇級試験に落ち続けているのだ。
「もー!どうして俺はスライムしか召喚出来ないんだよ!俺の一族は偉大な召喚士なのに…俺だけ落ちこぼれじゃ無いか…」
彼は空を見上げると、何処にも発散する事の出来ない感情を顕にした。
余程感情が篭っているのだろう、手に握られた紙は、クシャクシャに皺寄っている。
独り言の様に呟くと、彼は重い足取りで再び歩みを進めた。
閑散とした住宅街の外れに、次第に豪華絢爛な家が見えて来た。
外壁はムラなく真っ白に塗られ、正門から玄関までに引かれた石畳が外観と相まって、ただ大きな家、と言うだけでは無く、美しさも感じられる造りだ。
「おかえりなさいませ。今回の昇級試験は如何でしたか?」
「…駄目だった…」
「左様で御座いますか…また、来年が御座います…」
「うん…ありがとう」
「いえいえ」
重厚な鎧に身を包んだ、門番であろう男性に話し掛けられた彼は、相も変わらずの落ち込み様で、返事を返した。
青年は家に入ると、自室に向かった。
彼の部屋は綺麗に整頓されており、本棚には召喚関連の本が所狭しと並んでいる。
彼は、部屋の扉の近くに配置された洋服掛けに、自分の着ていたローブを掛けた。
彼のローブには、召喚士で一番下を意味する『三本線』が縫われており、片側には彼のオラクロ家の紋章が刻まれている。
「はぁ…練習しないとな…」
浮かない表情で、ローブの三本線を軽く指先でなぞり、溜息混じりに言葉を零した。
自室を出て廊下の端に、彼が幼少期から練習に勤しんだ部屋がある。
ドアノブは元々金色だったのだろう。
長年の使用からか、金色だった色合いは色褪せ、銀の地肌が垣間見える。
木造ならではの、軋んだ音を響かせながら彼は扉を開けた。
最初に目を引くのは、部屋の中心部分に正方形で囲まれた鉄製の柵が建てられている事だ。
かなり頑強な造りである事が感じられる。
それと共に、部屋の壁際に沿う様にして配置してある本棚にも目を引かせた。
彼の自室にある物より、大きく、数も多い。
彼は柵の前で佇むと、視線を本棚へと移した。
本棚に近付くと、その中から一冊の本を取り出した。
手馴れた手付きでパラパラと捲ると、突然彼の指の動きが止まった。
「ん?こんなページ…あったか?」
怪訝な表情を浮かべるのも無理は無い、他のページには召喚方法や召喚した魔物の特性などが事細かく示されている。
だが、そのページは全て空白。
ただ書き示されているのは、召喚方法だけだ。
「長い間読んできたが初めて見たな…」
本を手に、早速柵の中心部分に移動した。
彼は深く、呼吸をすると、瞳を閉じ、手を翳した。
ゆっくりと広がる彼の召喚図は、オラクロ家の紋章を中心に、その周りを囲む様にして円状の幾何学模様が現れた。
そして、召喚図からは徐々に人影の様な者が姿を現した。
それは、次第にハッキリとした姿に変わった。
――私を呼んだのはお前か?
「お、お前は…一体誰だ…!?」
突然現れた人物に話し掛けられ、驚きのあまり、彼は腰が抜けた様に尻もちを付き、ただ呆然と現れた人物を眺めている。
「ふふっ、私か?そうだな…『魔王』…とでも言おうか…」
「ま、魔王…?」
現れた人物の言葉に、戸惑いを隠せない様子で思わず聞き直した。
驚きと恐怖が入り混じっているのだろうか、彼は瞳を大きくさせ、額や頬からは幾適の汗が伝っている。
そんな彼の目の前には、今までに見た事の無い程に容姿端麗で、漆黒に染まった長髪を靡かせた一人の女性が立っていた。
ここまでご拝読ありがとう御座います。
更新頻度はかなり遅くなるとは思いますが、何卒ご理解頂けたら幸いです。