オニオンクライシス
キーン コーン カーン コーン……
「それでは皆さん、給食の準備をしてください」
「「「「「「はーい!」」」」」」
午前の授業もこれでおしまい、今からは給食の時間だね。
今日の献立は何だったかな? 私は好き嫌いがないから何でもおいしく食べちゃうけどね。
さて、お箸の準備をしなくっちゃね。
「美香よ、給食について詳細を聞きたいのだが、よいかの?」
おやや? ヨミヤちゃん、いつになく真剣な顔でどうしたのかな?
「どうしたの?」
「給食とやらだが、新鮮な血肉は出るだろうか?」
新鮮な血肉? 相変わらず不思議なことを言うよね。ちょっとだけ怖いよヨミヤちゃん。
「あんまりよく分からないけど、お肉だったら焼いてたりすると思うよ」
「うむぅ、それは残念だのう……」
いったい何が残念なんだろう? いつも美味しい給食だから、残念がるようなことはないと思うけどなぁ?
「それではもう一つ聞きたいのだが?」
「うん、なーに?」
「給食にニンニクは出るかのう?」
ニンニク? ってあの臭い食べ物だよね。もしかしてヨミヤちゃんニンニクが苦手なのかな? でも給食にニンニクを使った料理が出てきたことってなかったと思うな。
「分からないけど、今まで出たことはないかな。だからきっと出ることはないよ」
「そうか! それは何よりだのう、うむうむ」
すっごく喜んでるね、やっぱりニンニクが苦手だったのかな? あ、お話してる間に給食係の人達が給食を持ってきてくれたよ。
「ヨミヤちゃん、取りにいこう」
「うむ、そうだの! 一体どんな珍味が出るやら楽しみだのう」
ヨミヤちゃん、出てくるものは献立表で確認できるよ。そして珍味は絶対に出ないよ。
わぁ! 近づくととっても良い匂いがするね。今日の献立はお魚とスープ、それからサラダだね。珍味じゃないけどおいしそうだよ、ヨミヤちゃん。
「う……うむぅ……」
あれれ? こんなに美味しそうなのに、なんだかヨミヤちゃんの顔色が悪いみたい。どうしたのかな? とりあえず給食を貰って席に戻ろっか。
「美香よ……このスープは……何が入っているのだ? 何やら邪悪な気配を感じるのだが……」
邪悪な気配なんて一切ありません! 相変わらずヨミヤちゃんはおかしなことを言うなぁ。
「これは玉ねぎのスープだよ、美味しそうだね」
「玉ねぎ……この妖気は玉ねぎが発しておるのか……っ」
妖気? さっきから何を言ってるのかちんぷんかんぷんだよ。もしかして、玉ねぎが苦手だったのかな?
「ヨミヤちゃん、もしかして玉ねぎが食べられないの?」
「なに? 今食べられないと言ったのか!?」
はて? なんだか急に怒り出しちゃったみたい? もしかして気を悪くするようなことを言っちゃったかな?
「この私に食べられぬものなどないわ! あまりの覇気にすこし身構えておっただけよ、玉ねぎごとき私にかかれば一蹴だとも!!」
玉ねぎのどこに覇気があるんだろう? それに一蹴しちゃダメだよヨミヤちゃん、給食はちゃんと食べないとね。
「見ておるのだ! 私の雄姿をな!!」
あぁ! まだ合掌もしてないのに食べ始めちゃダメだよ! 合図を待たないと……って、おやや?
「うぅぐ……うええぇぇ……こやつ……想像を絶する鬼畜であったわ……」
ヨミヤちゃん!? 顔が涙と鼻水でビッチャビチャになっちゃってるよ。
やっぱり玉ねぎ苦手だったんでしょ? 無理するからそうなるんだよ。
せっかくの可愛いお顔が台無しだよ。
「美香よ……特別にこのスープ……残りはお主にやろう……」
って、押し付けられちゃったよ!?
いくら私でも怒るんだからね?
嫌いなものがあったら無理せずに言おうね、ヨミヤちゃん。
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