ドッジ・ボール・Ω
ぐぅ~
おっと、お腹が鳴っちゃった。
今はお昼前の四時間目。体育の時間で動き回ってるし、少しくらいお腹が鳴っても仕方ないよね?
今日の体育はドッジボール、皆が大好きな競技だ。私もドッジボールが大好き、だってとっても楽しいんだもん。
今はクラスを半分こにして試合をしている真っ最中。私のチームで内野に残ってるのは二人だけ、そのうちの一人が私なの。
よけるのはとっても得意だからいつも最後まで残っちゃう。最後の方になるとドキドキするけど、でもやっぱりドッジボールは楽しいな。
そして、もう一人残っている内野の子が。
「うむおぉ!? 何をする、危ないではないか!!」
大声を上げて怒っているヨミヤちゃんだ。
でもヨミヤちゃん、さっきからボールが飛んでくるたびに怒ってるけど、ドッジボールってそういう競技だよ?
ほらほら、あんまりヨミヤちゃんが怒るから、皆もヨミヤちゃんにボールを投げづらくなっちゃってるみたい。
「うむ、ドッジボールとはかくも恐ろしいスポーツであったか、少々甘く見ていたようだの……」
恐ろしいスポーツ? 違う違う、ヨミヤちゃんが勝手に怖がってるだけだよ、ホントはとっても楽しい競技だよ。
「しかし! この恐怖のスポーツを制することにこそ意味があるのだ、故に私は勝たねばならぬ!!」
だから、恐怖のスポーツなんかじゃないってば。もうちょっと気楽にプレーしようよ。
あ、ほら! 相手チームがボールをパスして回ってるよ。しっかり見てちゃんとよけないとね。
「うむむ、なんという超高速連携攻撃……あまりの速度に目が追い付かぬ」
全然超高速じゃないよ!? 皆軽くパスしあってるだけなのに、運動神経もダメダメなのかなヨミヤちゃん。
そんな端っこに立ってたらボールが飛んでくるよ。
「美香ちゃん、後ろ!」
「え?」
ボンッ
「あぁっ」
「美香!?」
ヨミヤちゃんに気を取られていたら、私が背中からボールをぶつけられちゃった。悔しい!
でもチャンスかも。ぶつかったボールが転がってヨミヤちゃんの足元に。相手チームも喜んでばっかりで全然気づいてないみたい。
今ならチャンス! 今のうちにアウトを取っちゃえヨミヤちゃん。
「うむむぅ、なんということだ美香よ……お主の死は無駄にはせぬ!!」
うん? ちょっと待って、私まだ死んでないよ?
「覚悟せよお主ら! 我が盟友の仇、このヨミヤが取ってくれよう!!」
ちょっとちょっと、そんなに大きな声を出したら相手チームが遠くに逃げちゃうよ。あと私はいつから盟友になったのかな?
「うむおぉ! 今! 盟友との誓いに打ち震えるこの手が! 友情の熱き輝きを放つ! 食らうがよい、必殺の一撃! ヨミヤ・オメガティック・トルネードスマッシャー・オメガ!」
いや、長っがいよ!!
いつまで叫んでるのヨミヤちゃん? 相手チームの皆、もう逃げちゃってるよ。それに何その必殺技、オメガって二回言ってたよ? もう全然意味が分からないよ!
ヒョロリ……
「「「弱っっ!?」」」
長いと思ったら今度は弱い!
何そのボール、全然相手まで届いてないよ。思わず皆と声が揃っちゃった。名前負けにもほどがあるよヨミヤちゃん! ほらもう地面にポテンッて落ちちゃってる。
「くうぅっ、あと一歩、届かずか……っ」
一歩どころか百歩くらい足りてないからね? それより相手がボールを拾っちゃう、地面に項垂れてる場合じゃないよ!
「すまぬ美香よ、お主の仇、取れなかったぁっ」
「だから私、死んでないってば!!」
つい大きな声が出ちゃった。ヨミヤちゃん自分の世界に入りすぎだよ。
もうちょっと周りを見て、今後は気楽にドッジボールしようね。
ちなみに試合は、このあとすぐに負けちゃいました。
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