ヨミヤ'S キッチン
「では皆さん、今日はカレーを作ります」
「「「はーい!」」」
今日の家庭科は調理実習だ、初めての調理実習で少しドキドキするな。
テーマはカレー。お家でお料理のお手伝いもしたことがあるし、きっとうまくできるはず!
「美香ちゃん、頑張ろうね」
「うん!」
私の隣でガッツポーズを取っているのは、お友達のさゆりちゃんだ。今日の調理実習は三人一組でやるんだって。
私の班はさゆりちゃんと、それからもう一人。
「うむ! よろしく頼むぞ、美香にさゆり。最高のカリィーを作ってやろうではないか!」
腰に手を当ててフンフンと鼻を鳴らしているヨミヤちゃんだ。ちゃんとお料理できるのかな? すっごく不安だよ。
「それじゃあみんな、教科書の通りに作ってみてください」
「「「はーい!」」」
先生の号令で皆が一斉に調理にとりかかる、私達も遅れないようにスタートしなきゃ。
えっと、まずは下ごしらえだよね。お野菜を準備してそれから。
「美香よ、そう難しそうな顔をするでない、ここは私に任せるのだ」
おやや? ヨミヤちゃんが慣れた手つきで野菜を並べていくよ。もしかしてお料理が得意だったりするのかな? さゆりちゃんも気になってるみたい。
「ヨミヤちゃん、お料理が得意なの?」
「さゆりよ、私にかかればどんな料理も最高級のフルコース三ツ星ミシュラリンだ!」
「わぁ、凄いね!」
いやいや、騙されちゃダメだよさゆりちゃん。凄そうなことを言ってるけど、意味は全く分からないからね?
「よし、ではまず茸をさばくかの……」
あれれ? ヨミヤちゃん、それってどう見てもジャガイモだよ? どこをどう見たら茸に見えるのかな? 魚じゃないんだから、さばくっていうのも良く分からないし。
「ヨミヤちゃん、それ茸じゃなくてジャガイモだと思うよ?」
ほらほら、さゆりちゃんからも言われてるよ。本当はお料理できないんじゃないの?
「さゆりよ、固定観念にとらわれるでない、こういう茸もあるのだよ」
「へぇー、そうなんだ」
ちょっとちょっと、そんな茸あるわけないよさゆりちゃん! もうちょっと固定観念にとらわれてよ!!
あぁ、あっという間にお野菜がぐちゃぐちゃにされていくよ。このままだとカレーが失敗しちゃう。
そしたら先生に褒めてもらえないよぉ。
よし! こうなったら私がしっかりカレーを作らなきゃ。
「ヨミヤちゃん、順番がバラバラだよ? 教科書の通りに作らないとダメだよ、私がやるから任せて?」
「うむ? 美香よ、大事なことを教えてやろう。教科書の通り計画的に事を進めるのも大事だがな。しかし時には、とりあえず行動してみることも大事なのだよ」
えぇ!? どう見ても失敗ルートなのに、なんでこんなに偉そうなのヨミヤちゃん? どう考えても教科書通り作った方が良いよ。
「これからの世の中、柔軟な発想と大胆な行動力が必要なのだ。というわけでだな、ホイっと」
ボチャン!
「ああぁーー!?」
嘘でしょう!? グチャグチャのお野菜丸ごとお鍋に放り込んじゃったよ。お水の上にお野菜がプカプカ浮かんじゃってるよ。
「なんてことするのヨミヤちゃん! これじゃあもうカレーにならないよ!!」
「騒がしいのう、ここからが私の真骨頂なのだ」
「真骨頂なんてあるわけないでしょ! もう知らない、勝手にやってよ!!」
「言われなくともな、見事なカリィーを作ってやろう。黙ってみておるのだよ」
せっかく先生に美味しいカレーを食べてもらおうと思ったのに、これじゃあもう大失敗だよ。
もうヨミヤちゃんの好きに作ってもらおう。
なにやらお肉をミキサーに入れようとしてるけど、気にしない気にしなーい。
こうして、初めての調理実習はメチャクチャなまま幕を閉じました。
できあがったカレー?
もちろんすっごくマズかったよ!
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