うわさの悪名高き算数?
カリ……カリ……カリ……カリ……
今日の算数は図形のお勉強だ、優しい先生が丁寧に教えてくれる。
なるほどなるほど、角度はああやって求めるんだ。流石先生、教え方が上手だなぁ。
「うむ……うむ……なるほどのう」
私の横ではヨミヤちゃんが難しい顔で黒板をじっと見ている。真剣な表情で授業を受けているし、真面目な性格なのかな?
「ふーむ……これが悪名高き算数か、これは想像を絶する脅威やもしれんの」
おやや?? ヨミヤちゃんは何を言ってるのかな? 算数は悪名高くないよ?
「美香よ、少し聞きたいのだがよいかの?」
さっきは不思議なことを言っていたけど、今度は何だか質問があるみたい。ヨミヤちゃんのことは先生にも任されてるし、ここはしっかりサポートしてあげないと。
「どうしたの?」
「この算数というのは、一体何を目的に学んでおるのだ?」
「え?」
なんて予想外の質問なんだろう。ちょっと困っちゃうよ。
「えっと、私たちは小学生だから、勉強しないといけないんだよ?」
「なぜ小学生だからといって勉強せねばならんのだ?」
あれれ? もしかしてすごく難しい質問をされてるのかな? 何か複雑なことを考えてるのかも?
「つまりだな、勉強せねばならない理由がハッキリしないのであれば、勉強などせねば良いのだ。ということで美香よ、サボろうではないか」
あ、これは違うね。単純に勉強が嫌で変なこと言ってるだけだね。うん、まともに相手をしちゃダメダメ。
「私はちゃんと勉強して先生みたいな大人になりたいから、真面目に授業を受けるよ」
「うむ、そうか? それは残念だのう……」
しょんぼりしながら黒板を見ている。でもヨミヤちゃんの為でもあるんだよ、しっかりお勉強しようね。
ところでノートとか取らなくて良いのかな?
† † † † † † † † † †
カリ……カリ……カリ……カリ……
「美香よ、少し聞きたいのだがよいかの?」
おやや? また質問かな?
「どうしたの?」
「これは一体どういう意図の図形なのだ?」
ヨミヤちゃんの指差す先には三角形が書いてある。角度を求める問題だけど、意図って聞かれるとなんて答えようかな?
「これは三角形だけど、意図って言われると……」
「ふむ、これは三角形というのか、なるほどのう」
あれれ? まさかヨミヤちゃん、三角形っていう図形自体を知らなかったの?
「三角形か、意味は良く分からんが意味深な響きだの」
なるほど、これは完全に阿呆の子だね。
三角形も知らないなんて、どうしてヨミヤちゃん四年生の教室にいるんだろう?
ヨミヤちゃんの学力に私が驚いていると、黒板に問題を書き終えた先生が、クルリと私たちの方へ振り向く。
「それじゃあこの問題を、ヨミヤちゃんわかるかな?」
「うむっ、何事かな!?」
何事って、ただ指されただけだよヨミヤちゃん。
「何事でもないよ。ほら、問題を解かないと」
「う、ううぅぅむむぅ……」
ヨミヤちゃんが腕を組んで唸ってる。これって絶対答え分かってないよね。
そういう私も、ヨミヤちゃんと話していたせいで全然問題が見れてなかったから、答えは分かってないんだけど。だから他の誰かに答えてほしいなぁ。
「ヨミヤちゃん、分からなかったら分からないって言わないと」
「わっ、分からないということはない! ちょっと都合が悪いだけだ」
都合が悪いって何の都合だろう? 目がキョロキョロ泳いでるし、誰が見ても分かってないってバレてるよ。
「ヨミヤちゃん? 少し難しかったかな?」
ほら、先生も心配してくれてるよ。ここは正直に分からないって言わないと。
「お主! 私に質問するとは良い度胸だのう! 覚悟はできておるのだろうな? んん!?」
「「「「えええぇぇーー!?」」」」
ちょっとヨミヤちゃん、何その返し。クラスの皆も流石にビックリしてるよ。
「えぇ? えっと……それじゃあ……」
ほらほら、先生まで困らせて。これは怒られちゃうよ。
「それじゃあ城戸崎さん、かわりに答えてもらえる?」
ほーらやっぱり怒られて……って違うの!?
なんで私に振るの先生!?
そしてヨミヤちゃんはもう座っちゃってるし!
私も答えは分からないよ?
あんまりだよもう。
授業、ちゃんと聞いておけばよかったよぉ……
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