ゾルタニクスストーリー(新約ポクロムス戦記) ~暗黒の王子と破滅の王女~ 「愛と勇気が世界を救う!」
「ああ姫よ、ようやくあなたに会えた!」
体育館の舞台の上、今は演劇のお稽古中。
三日後の文化祭で、私たちのクラスは演劇を披露することになったんだ。
王子様とお姫様のお話で、先生がとっても素敵な台本を用意してくれたの。
今は王子様とお姫様が感動の再開をするシーン。お姫様役はヨミヤちゃんだ。
役決めの時、満場一致でお姫様役に選ばれたヨミヤちゃん。今日は当日の衣装を着てのお稽古だけど、本物のお姫様みたいにすっごく可愛いよ。
「うむ、王子よ! よくぞここまで参った、誉めてつかわす」
本当に、喋らなければ本物のお姫様みたいだね。どうしてセリフと違うことを言っちゃうのかなヨミヤちゃんは。
ちなみに王子様役はどういう訳か私なの。役を決める時に男子たちがものすっごいケンカになっちゃって、収まりがつかなくなった結果、私がやることになったんだ。
まったく、男子は皆ヨミヤちゃんが好きすぎるよね。可愛いのは可愛いけど、喋るとあんなに残念なのにね。
「うーむ……イマイチだの……」
おやや? ヨミヤちゃん、腕を組んで何やら考え込んでるね。
「どうしたのヨミヤちゃん?」
「美香よ、この物語なのだがの、少しインパクトが足りぬと思わぬか?」
「インパクト?」
何を言っているんだろう? 先生が作ってくれた台本はすっごく素敵だよ?
「可もなく不可もないのだが、世界レベルで通用させるには、他にはない斬新さと革新的な要素を取り入れる必要があるのだよ」
はて? 世界レベル? 小学校の文化祭なんだけどな。
「うむ! 閃いたぞ、ここで王子が闇の力に目覚めるという展開を入れよう」
あれれ? また突然突拍子もないことを言い出しちゃったよヨミヤちゃん。そんな展開が良い訳ないよ。
「いや待てよ、実は姫が隠し持っていた破滅の力が解放されるという展開も加えた方が良いの」
ちょっとちょっと! 何が良いのか全く分からないよヨミヤちゃん。破滅の力って何?
「そうだのう、この後宇宙船が襲来して、ポクロムス星人との全面戦争がはじまる、というシナリオがあれば全体のアクセントにもなるのう」
ダメだよヨミヤちゃん。そんなとんでもないアクセント、入れちゃダメに決まってるよ!
「そしてやはり、最後は最強の敵"ゾルタン"を皆で打ち倒す展開が熱いの! 王道もしっかり押さえるのだ」
そんな王道しらないよ! ゾルタン? ゾルタンって一体なに??
「それから、やはり愛と勇気に絡めたストーリは必要だろうの。まあそこは何となく愛と勇気を叫んでおけば良いかの」
いやそこテキトー!? 変な設定はホイホイ出てくるのにそこはテキトーなんだ、逆に凄いよヨミヤちゃん。
「こうなってくるとタイトルも変える必要があるな。良し、ここは私が素晴らしいタイトルを付けてやろう」
「おぉ! 頼むぜヨミヤちゃん」
頼んじゃダメだよ! 男子も乗っからないで、誰か止めないと! そうだ、先生。
「そうね、皆がそうしたいなら先生は構わないわよ」
先生ーー!! せっかくの素敵な台本がメチャクチャにされちゃってるよー!
あぁもう話が進んでいってるよ。もうこうなったら、ヨミヤちゃんに全部任せてしまおうかな。
だって誰も止めようとしないんだもん。
こうして、ヨミヤちゃん作のお話ができました。
"ゾルタニクスストーリー(新約ポクロムス戦記) ~暗黒の王子と破滅の王女~ 「愛と勇気が世界を救う!」"
って、一体何のお話なの……
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