セルフ適材適所!
ピピーッ、ピピーッ、ピピーッ、ピピーッ
先生の吹く笛の音が響いてる、今日は運動会の練習だ。
いよいよ来週に迫った運動会。今年、私達のクラスは紅組になったよ。
去年は惜しいところで負けちゃったから、今年は勝つためにしっかり練習しないとね。
毎日練習してきて、リレーの準備もバッチリ。組体操もダンスも綱引きも、どれも上手くいきそうな予感。今から当日が楽しみだなぁ。
でもでも、そんな楽しみな運動会なのに、一人だけ楽しそうじゃない人がいるよ。
「うむぅ……」
うめき声を上げて、ぐったりしているヨミヤちゃんだ。
ヨミヤちゃん、暑いのが苦手みたいで、いつもこうして日陰で休憩してるの。
肌がとっても白いから、日に焼けるようなことはあまりしたことが無いのかな?
それにヨミヤちゃん、運動もとっても苦手みたいだから、練習がはじまってからずっときつそうにしているね。
「美香よ……私はもうダメかもしれぬ……灰になってしまいそうだ……」
「ヨミヤちゃんそんなに暑いの? だったら保健室に行く?」
ぐったりとしたまま顔だけこっちに向けてくるヨミヤちゃん、何だかお化けみたいになってるよ。
あんまり無理をすると熱中症になるっていうから、無理せず休んだ方が良いんじゃないかな?
「いや、それには及ばぬよ。まだまだ練習が残っておるしのう……しかしだの……」
おやや? さっきまでぐったりしてたのに、急に起き上がって腕を組んでるよ。どうしたのかな?
「この運動会というものは、一体どういう催しなのだ? ここのところずっと私の苦手なことばかりを強要してくるのだが……」
あれれ? ヨミヤちゃん、もしかして運動会を知らないのかな?
「運動会っていうのは、頑張って練習した体操とかリレーを、お母さんやお父さんに見てもらうんだよ。だから一生懸命練習しないといけないんだよ」
「なるほどのう……しかしだ、私は苦言を呈したい!」
はて? 何か分からないことがあったのかな? 暑さでおかしくなっちゃってるのかな?
「確かに日々の修練、その成果を披露することは大事だ。しかしだの、だからといって苦手なことを無理やりさせるのはどうかと思うのう」
んんん? どういう意味だろう? 相変わらず難しい言葉が多すぎるよヨミヤちゃん。
「私はのう、ここ最近の練習の悉くが苦手なのだよ。ただの一つとして上手くできる気がせぬのだ」
わお、なんてハッキリ言うのヨミヤちゃん。全部苦手だなんて、それはもう逆に凄いよ。
「でもヨミヤちゃん、だったら余計に一生懸命練習しないとダメだよ」
「それが良くないと言うておるのだ。美香よ、できないことに目を向けるのではなく、得意なことに目を向けることが大切なのだ。そうせねば人は育たぬのだぞ?」
育てる? うーん……何を言いたいのかよく分からないよヨミヤちゃん。
「つまりだの、もっと私を育てるためにもだ、私の得意なことだけをさせてほしいのだよ」
おお、分かりやすい! そしてなんて自分勝手なのヨミヤちゃん!?
「それはどうかと思うけど、ヨミヤちゃんの得意なことって?」
「ズバリ、応援だ!!」
「「「「おおぉー!!」」」」
わあ!? ビックリした! 男子たち、突然大きな声を上げてどうしたの?
「ヨミヤちゃん、それはいい考えだぜ! ヨミヤちゃんが応援してくれるなら、俺達メチャクチャ頑張れるぜ!!」
「おお! そうであろう、名も知らぬ男子よ!」
なるほど、可愛いヨミヤちゃんに応援して欲しいっていうだけか。なんて下心が丸見えなの男子たち。
それからヨミヤちゃん、「名も知らぬ男子」は流石に可哀そうだよ。あの子泣いちゃってるよ。
「という訳でだの、私は日陰で応援に徹することとしよう! 皆の衆、頑張るのだぞ!!」
「「「「おおおぉぉー!!」」」」
もう! また勝手に決めちゃってるよ。そんな勝手なことをして、先生に怒られても知らないんだからね。
このあと、なんと他のクラスの男子まで賛同して、凄い騒ぎになっちゃいました。
結局ヨミヤちゃんは、応援専門係に決定。
って、そんなのあり!?
何だかズルいよヨミヤちゃん!
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