四捨五入すればだいたい "1" か "0"
「うーん……」
今は算数の時間。今日からは少数の計算をお勉強してるんだ。
でもでも、少数の計算ってすっごく難しいよね。だって細かい数字が多くて、どう計算したら良いか分からなくなっちゃうんだもん。
大好きな先生が丁寧に教えてくれたんだけど、まだまだちゃんと覚えきれてなみたい。しっかりお勉強して計算できるようにならなくちゃ。
さて、次の問題はと……
"0.3 × 8 = □"
なるほどなるほど、この場合はまず小数点は置いておいて、"3" と "8" を掛け合わせると良いのかな?
うーん、やっぱり少数は難しいなぁ。
「うむ? 美香よ、何やら悩んでおるようだの」
おやや? ヨミヤちゃん、なんだか随分と余裕そうだね。もしかしてもう問題を解き終わったのかな?
この問題とっても難しいのに、お勉強の苦手なヨミヤちゃんがこんなに早く解けるとは思えないけど。
「ヨミヤちゃん。この問題が分からなくて……、やっぱり少数の問題は難しいよね」
「ほう、そんなことで悩んでおったのか? この程度の問題、私はとうの昔に攻略しておるのだよ」
やっぱりヨミヤちゃん、もう解き終わってたんだね。
凄い凄い! 今まであんまり頭が良くないと思ってたけど、ごめんねヨミヤちゃん。
「美香よ、お主何やら随分と失礼なことを考えておるのう、そんな気がするのう……」
「そ、そんなことないよヨミヤちゃん。ヨミヤちゃんは凄いなあって考えてただけだよ」
危ない危ない。ヨミヤちゃん、今日は勘も冴えわたってるね。
本当に今日は別人みたいだよ、どうしちゃったのかな?
でも、すっごく頼りになりそうだし。よし、さっきの問題もヨミヤちゃんに教えてもらおうっと。
「ヨミヤちゃん。この問題が分からないんだけど、解き方を教えてくれる?」
「うむ、そんなことであればたやすいのだよ。"現代に蘇りしオイラー"と呼ばれる私で任せておくのだ」
おぉ! オイラー? っていうのは良く分からないけど、とにかく頼んだよヨミヤちゃん。
「まずはこの "0.3" こ奴が曲者だの。これは細かい数字なので、分かりやすくする必要がある」
ふむふむ、確かに細かい数字は難しいよね。
「つまり、これは四捨五入して "0" にしてしまうと良いの」
あれれ? "0" にしてしまう? 四捨五入ってそういうものだったかな?
「つぎに "8" だが、これも厄介な数字なので分かりやすくするのだ。四捨五入して "1" としておこう」
ちょっとちょっとヨミヤちゃん。全然違う数字になっちゃってるよ。四捨五入しても "1" にはならないと思うよ。
「ヨミヤちゃん。それだと元の数字から変わっちゃってるよ?」
「美香よ。物事と言うのはだな、こうやって極力シンプルにしていくことが大事なのだよ」
待って待って! シンプルにし過ぎだよヨミヤちゃん!
「それとな美香よ、もう一つ大事なことを教えてやろう」
その前にヨミヤちゃん。数字が変わっちゃってるっていう大事なところを気にしようよ。
「良いか? シンプルにしていくためには、必要でないものはどんどんと捨てていくことが大事なのだ。つまりの、少数などという細かな数字はさっさと切り捨ててしまうのが吉なのだよ」
ダメだよヨミヤちゃん! 少数ってとっても大事だよ、切り捨てちゃダメなものまで捨てちゃってるよ!?
「さて計算だが、ここまでくればあとは簡単だ、"0" と "1" を掛け合わせるだけだの」
もう、それだと答えは "0" になっちゃうじゃない。
「答えは "1" だの!」
「いや、最後の最後でシンプルに計算を間違えてるよ!!」
もう、ヨミヤちゃんの謎理論はさっぱりだよ。
少数の計算、結局分からずじまいじゃない。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。
また、ブックマークやpt評価、感想も喜んでお受けしております。
執筆の励みとさせていただきますので、応援よろしくお願いします。