転校生のヨミヤちゃん(挿絵あり)
美香ちゃん視点の、ヨミヤちゃん観察日記のような、感想文のような、そんなお話です。
今回はヨミヤちゃんが転校してくるだけの回です。
不定期連載ですが、どうぞよろしくお願いします。
キーン コーン カーン コーン……
「あ、もうこんな時間、美香ちゃんあとでね」
「うん、お昼にねー」
チャイムの音が響く中、お友達のさゆりちゃんはパタパタと席に戻っていく。
今日も一日がはじまるんだなぁ、一時間目は算数だったかな? そんなことを思いながらごそごそと机の中をまさぐっていると、教室のドアがガラガラと開く。
教室に入ってきたのは先生だ、今日も綺麗でカッコ良い。
そんな先生に向かって私は元気いっぱいに挨拶をする。席が一番前の私は誰よりも先に挨拶ができる。今は隣が空いているので、私の特等席だ。
「先生おはよう!」
「はーい、おはよう」
ニッコリと微笑みながら挨拶を返してくれる先生。いつか私もこういうステキな大人になりたいな。
クラスメートが見つめる前で、先生は持っていた出席簿を教卓に置いてしまう。
おやや? いつもなら朝の出席を取るのに、どうしたのかな?
私が首をかしげていると、先生が皆を見回しながらニッコリと笑顔を浮かべて口を開く。
「皆さんにとっても良いお知らせがあります。実は今日、このクラスに新しい仲間がやってきています!」
先生の言葉に驚くクラスメート達。かく言う私も凄くビックリだ。
ドキドキしながら先生を見つめていると、嬉しそうな顔の先生が教室の外に向かって呼び掛ける。
「それじゃあヨミヤちゃん、入ってきてください」
ガラガラガラ……
ドアを開けて入ってきた転校生。その姿に、私は思わず目を奪われてしまった。
真っ先に目に飛び込んできたのは、プラチナブロンドのロングヘアー。さらさらと綺麗なその髪につい見とれちゃった。
それから、雪みたいに白い肌。そして、柔らかな垂れ目に長いまつげ。外国人さんだって思う前に、天使さんなのかな? って思っちゃったよ。
低めの身長も、転校生の可愛らしさを増し増しにしている気がするな。
とにかくどこを見ても可愛いすぎて、口がポカンと空いちゃってたみたい。クラスの皆も私と同じようなリアクションだね。
パッチリクリクリな瞳は、ルビーみたいに真っ赤でとても綺麗……あれれ? それにしては赤すぎるような?
小さな唇からは、ニョッキリと犬歯が顔を覗かせていてまるで牙みたいで……あれれ? 犬歯ってあんなに長く伸びるのかな?
なんだかちょっと気になるなと思っていると、転校生が教卓の横までやってくる。
「それじゃあヨミヤちゃん、自己紹介してね」
先生に促され、コクリと頷くと黒板に名前を書く転校生。ヨミヤっていうのがお名前なのかな? あ、もう書き終わったみたい、黒板に書かれた名前は――
"ヨミヤ"
って、あれれれ? もしかしてそれだけ? 苗字なのか名前なのかも分からないよ?
黒板に書かれたその三文字をポカンと眺めていると、私の目の前で転校生ことヨミヤちゃんが自己紹介してくれる。
「うむ、皆の衆 本日からこのクラスに転校してきた ヨミヤと申す者だ よろしくたのむぞ!」
って、何その自己紹介!? おかしいところしかないよ! みんなもそう思うよね?
「「「「「「はーい、よろしくお願いします!!」」」」」
なんでぇー!? なんで誰も今の自己紹介に引っかからないの??
「先生!」
思わず手を上げた私を、先生が首をかしげながら見ている。
「あら? どうしたの城戸崎さん」
「ヨミヤちゃん? の自己紹介は、その……あれで良いんですか?」
困り顔の私。そんな私をもっと困り顔で見つめる先生。
「ええ、ちゃんと自己紹介できてたと思うわよ、どこかおかしかったかしら?」
「おかしいですよ! そもそもヨミヤって苗字なんですか? 名前なんですか?」
私が声を荒げていると、横からヨミヤちゃんが間に入ってくる。
「お主、先ほどからカリカリとして、どうしたのだというのだ?」
「あなたのせいだよ! 全然普通の自己紹介じゃなかったし、しゃべり方もおかしいし、見た目も普通じゃないし!」
ふぅ、大声を出したらすこし落ち着いてきたかも。冷静に冷静に……
「うむ、お主はもう少し受容の精神が必要だのう。今は多様性の時代なのだ、普通にとらわれるでないぞ?」
「いや、多様にもほどがあるでしょう!!」
無理でした、全然冷静になんてなれませんでした! 何その返し? 全然質問に答えてないし!
私ってこんなに沸点が低かったのかな? いやいや皆がおかしいだけ、皆が受容しすぎなだけだよねきっと。
「うむ、お主の隣は丁度空いておるようだの、では今日から私がそこに座ろう。もっと私の事を知ればお主の考えも変わるであろう」
「それは良い考えねヨミヤちゃん! それじゃあ城戸崎さん、仲良くしてあげてね」
いやいやちょっと待ってよ! 一番前は私の特等席なのに!? 先生も納得してないで!!
何でそうなるのーー!!
こうして
私、城戸崎美香 は ヨミヤちゃん と出会いました。
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