・異世界の人間は地球人とだいぶ違った
完結設定にすると投稿時がめんどくさいので連載中に戻しました。
地球という星の日本という国で生きた記憶がある。
その世界では飛行機で空を飛ぶことができ、自転車、バイク、車に乗ることで人が走るよりも速く移動することができた。俺は雑学が好きだったからそれらの仕組みをあますことなく全て知っていると言っても過言ではない。正直天才だと思っている。
異世界に生まれ変わっていると気がついたのは幼い頃3歳だった時だ。
母が魔法を使って料理をしている姿を見て、コンロみたいだと思ったのがきっかけだった。
幼い俺は、あの日本でつちかった雑学たちが、この世界で俺を大儲けさせてくれる、いや世界を変える、いや世界征服さえできてしまうのでは! とワックワックになったものだ。
ふっ幼いことだな。
今俺は、手ずから作った自転車を体力自慢の親友に見せている。
親友の反応はさすが親友という、愉快で明るく楽しく自尊心をみたしてくれるものだったが。
「すげぇ! よっくこんなの考えんなぁ! ペダル? をこいで? しゃーっていくのか。おおー! 乗ってみていいか? なぁいいか!?」
「ああ、乗って感想を聞かせてくれ。まぁ大体の予想はついてるけどさ。やっぱ試乗って大事だよな」
「よっしゃ! じゃあちょっと借りるぜぇ!」
そして自転車にまたがり、親友は初めての自転車で転ぶことなく乗りこなした。
「おお、すげぇこれバランスが……っと、よしよし安定してきた」
ふらふらしていた自転車がまっすぐに走り出す。人の少ない道をぐんぐん、ぐんぐんと。
「運動神経ヤベェ……」
ぐんぐん進んでいた親友の消えていった方から土煙が上がる。
そして少し後に、自転車を背中にかついだ親友がバツの悪そうな顔をして帰ってきた。
「すまん! 壊れた!!」
「うん。予想通りの結果で嬉しいよ……」
「なんだ予想してたのかよ。さっすがぁ! でもごめんな。直すの手伝うからさ」
「もっと壊されるからいい。それよりまた耐久テストに付き合ってくれよ」
「耐久テストだったのかよ! はは! いいぜ。面白かったし。それすごいのな。ギュンギュン車輪が回ってスッゲェ速さで進むのな! おもしれぇけど魔法使って走る方が早いなぁ。子供のおもちゃにならいいだろうけど」
「そーね」
なははと笑う親友に悪気はないし、その考えは意外と的外れでもない。
そう。この世界の人間の身体能力が高すぎるのだ。
自転車に乗るより走る方が速い。その筋力に耐えきれず自転車は車輪が吹っ飛んでいく。これでもかなり耐久を上げた自転車なのだがやはり車輪がポーンしたのか分離されて運ばれてきた。
はぁ、と俺は諦めのため息をついてそれでも懲りずに地球産のあれこれを作り続けた。
かつて雑学を集めまくったように今世はそれを実現しまくった。そう趣味で。
車を作ればテレポートでよくね? な反応が来るわ。原点に返っていっそ馬車を作ってみたが馬より人間のが速いという現実。なのでまぁ人力車は流行った。好きな女の子を人力車に乗せてデートに誘うのが最近のブーム。
飛行機を作れば、飛行魔法でよくね? あとやっぱりテレポートで(以下略)でも見た目かっこいいし面白いといって魔動力飛行機が趣味の世界で流行った。
石鹸作っても洗浄魔法でいい感じにどんな汚れも落ちてしまうから「必要性ある……?」な反応。
簡単な美容品も作ってみたが、超回復薬とかある世界である。美容品もすげぇのが既にあるよねぇー。はっはっはー。
「…………異世界が凄すぎて俺の知識が役に立たない」
俺はなんか変なものをよく作ってるヘンテコ研究者な立ち位置になってしまった。
どうしてこうなった。
俺は、俺はただ、すげぇえ! ってみんなに言われたかっただけなのに!
「くっそぉ。特殊趣味界の王とか言われてもちょっとしか嬉しくねぇ!」
「ちょっとは嬉しいんじゃないの」
研究バカしてる俺を心配して、毎日ご飯を届けてくれる(有料だが)幼なじみが言う。
水色の髪に金色の瞳という、地球ではあり得ない色合いの美少女。くすくす笑っててかわいい。
椅子を反対向きに座って、じっくりと彼女を見た。
「な、なに?」
「かわいい幼なじみが欲しいって希望だけは叶ったから、まぁいいか」
「へ!? 急にどうしたのよ」
「なんか今、しみじみと思った。俺、お前と結婚できるならチートダメ世界でも諦めつくや。てことで俺と結婚して?」
「ちょっ、ええー!? なん、なんなのよ急に! 全然そんなそぶりなかったくせに!? しかもいきなり結婚って」
「えー。ずっとかわいいなぁ好きだなぁって思ってたぞ」
「分かんないわよ! あんた私がご飯持ってくるようになる前は外でたまたま会って挨拶する以外で一回も会わなかったでしょ!」
「そうだっけ? チートショックで覚えてねーや」
「覚えてもいないのに好きなんて嘘だー!」
「俺の純愛が嘘あつかいされてる」
「純愛って。嘘だぁ」
と言いながら顔が真っ赤になってるし、いやって言葉は言わないし。これいけるよな。
「純愛だから結婚しよう。金ならあるよ」
「もー! お金も大事だけどー! 結婚の前にお付き合いしようって言いなさいよー!」
「えー。お付き合いじゃ一緒に住めねぇじゃん。結婚しようよ。毎日ご飯作って」
「ご飯目当てだったの!?」
「ちがーし。お前が好きだし」
あれ、急に顔が熱くなった。
くそ。照れが出てきちまった。逃げよう。
「顔、真っ赤。本当に好きなんだ……」
「だからそうだって言ってるだろ! くそ。恥ずかしくなってきた」
くるっと背を向けて、適当にその辺のゼンマイを拾っていじる。何も考えらんねぇ。あー。
「ふふふ。よかった。本気なのは分かったよ。それなら、お付き合いからね? デートしよデート! ね?」
デートとかどこいけばいいか分かんねぇんだけど!
「……行きたいとこ決めといて」
「うん! えへへ。もー、好かれてるなんて全然分かんなかった! ふふ! デート、明日ね! お昼前に迎えにきてね?」
「はぁ!? 明日!?」
振り返ると、幼なじみは玄関を開けて帰ろうとしていた。こっちを向いて満面の笑みで言う
「えへへ。待ってるね」
あーかわいいなおい!
「……おう」
デートか。
服、どうしよう。作業着でいい?