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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
43/45

22 発見

         1

 午前中のうちに掃除・洗濯・食材の買い出しなどの用事を済ませた僕は、昼食後、リビングのソファーで少し長めの休憩をとっていた。

 こういうときは決まって、すももちゃんの日記を読んで過ごす。

 手帳は野崎さんの意向で僕が譲り受けた。

 最初は辞退しようとしたのだけど、野崎さんが引き下がるわけもなく、僕が折れるしかなかった。

 僕なんかが持っているなんて恐れ多い気もするけど、一方で、譲り受けてよかったとも思っている。

「従兄妹」の形見の品はこれしか残されていないのだから。

 繰り返し読むことで少しでもすももちゃんの気持ちを理解することができれば、「あのときから謎のままになっていること」の答えが見つかるかもしれないという思いもあった。


         2

 ―――しまった。

 いつの間にか寝入ってしまっていた。

 暖かな陽気と窓から吹き込む爽やかな風のコンビネーション攻撃に、つい、ウトウトしてしまったようだ。

 もう少しまったりしていたい気もするけど、起きないわけにはいかない…。

 お風呂の掃除がまだ残っているし、晩ご飯の用意もしなければ。

 仕事を頑張って帰ってくる結衣に少しでもゆっくりしてもらいたい。

 そう思うのは当然のことだろう。

 テーブルの上で開きっぱなしになっていた手帳は白紙のページで沈黙している。僕が寝ている間に風で捲れてしまったようだ。

 閉じようと思い、手を伸ばしたそのとき、僕を眠りへと誘った悪戯好いたずらずきな春の風が、一陣、部屋を吹き抜けた。

 手帳がパラパラと小気味よい音を立てて捲れていく。

 あ…れ…?

 今、何か―――

 何か、書いてあったような……?

「―――ッ!」

 瞬間、僕はやや乱雑に手帳を手に取った。

 真っ白なページを捲って、前のページへとさかのぼっていく。

 三十ページくらいは捲っただろうか。

「あった…」

 それは彼女の日記が終わったところから百枚も先のページに記されていた。

 どんなに使ってもなくなることのない死神の手帳。

 その、物理的には有り得ない性質を利用して、彼女は僕へのメッセージを遺していた。

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